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ようこそ、ナイドへ

 ナイディール帝国――皇帝アレクサンドル・ナイディールⅢ世が実行支配する、中堅国がある。

帝都から馬で5日ほどにホクオーというデユーイーンの姓を持つ貴族が所有する地域は広大な平野で農耕が栄えそれに比例するように商業も栄えていた。

 そこにある神殿が管轄する広大な墓所がある。ナイディール帝国で死者は貴族、平民問わず神殿がその敷地内の墓所に埋葬される。

 話は変わるが、この世界――太陽と月という意味を持つ"ナイド"という世界では生き物は生まれた瞬間に誕生石というものを授かる。人の誕生石は才能を現すという。例えば宝石の誕生石を持つものは魔法に長けている。鉄を持つものは鍛冶師や騎士に長けている。といった天分を表しているそうだ。

 また、己の進むべき道を決めたものはそれを生涯身につける為に武器にしたり装飾品に加工したりし、死んだときには遺体と共に葬る。

 そこで話は元に戻る。つまり、墓所とは、ならず者が狙うには絶好の場所なのである。

 もちろん神殿は、墓所にガーディアンと呼ばれる鉄人形を番人として配置しているのであるが。それを恐れない命知らずはいくらでもいる。


「ようやく、ここまで辿り着いたぜ」


 盗賊が墓所にある森を眺める。

 墓所にある異質な森。元々は平野だったここは13年ほど前にとある貴族の姫が埋葬されてから森になったのだという。その姫は、見たことも無いほどの大きさの宝石を所持していたとそんな情報を得て盗賊はいくつもの死地を乗り越えてようやくここまでやってきた。

 ナイドには亡霊やアンデットといった類の死者が魔物となる概念はない。だから、こういった悪質な類は後を絶たない。

 盗賊が森にある開けた広場に辿り着く。中央には墓石のようなものが佇んでいる。元からこうなのか整備されているのか……まぁ、盗賊にとってはどうでも良いことだ。

 

「まぁ、悪く思うなよ。ただ、埋めておくよりは有効活用してやるからな」


 盗賊は、遊び半分に手を合わせ死者に祈りを捧げる。

 背に背負っている麻袋を下ろす。

 それには彼の仕事道具がしまいこまれていた。墓荒しを生業とする彼の仕事道具はもっぱらスコップとツルハシである。


「貴族の墓にしては質素だな」


 盗賊は墓を見てそう思う。貴族となると墓荒しを予見して強固に固めたりするものだ。だが目の前の墓はただ墓石が置いてあるだけの質素な物だ。


「まぁ、仕事が楽で良いがな」


 疑問を捨てスコップを手に持った瞬間であった。

 周りを樹木に覆われ耕された柔らかそうな土から、


「うん?」

 

 足に違和感を得た。

 ちらりと足元を見ると、

 土から一本の

 ぬらりと手が生えて

 盗賊の右足を握り締めていた……。


「ぎゃああああ!!」


 それに仰天した盗賊は一目散に逃げ出した。

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