ある神官の成長日誌 〜ジュール編・そのさん〜 26
「おっちゃん! もうちょい容赦してよっ! けっこうヤバかったよ?!」
“時間の余裕が、全然無かったっ!!!”
リリスが吠えた。珍しく、本気で切れている。
「容赦はしたぞ? 肘を砕いておらんからの」
ガロンの返答は、あまりにも物騒だった。
「!!!」
リリスは、思いっきり逃げた。座っているドラナの後ろに逃げ込み、背中に隠れた。
「肘砕く?! そんなこと出来るの?!」
「造作もないが?」
ガロンの返答を受け、リリスが反射的に吠えた。
「造作もない?! おっちゃん、ひどいっ!! 鬼だっ!!」
“あたし、ちびっこで女の子なのにっ!! 肘砕くって、なにごと?! 馬鹿なのっ?!”
「ワシは、オーガではなく、ドワーフじゃ!!」
ガロンの返しは、間抜けだった。
「リリス……」
ドラナは深刻な様子で続けた。
「ガロン師は、肘を砕く直前で、止めてくれてるんだぞ」
「!!!」
リリスの顔が一瞬で青ざめた。
“止めてくれなかったら、あたしの肘は……。あれ?! あたし、めちゃくちゃ失礼?!”
「おっちゃん! 失礼なこと言って、ごめんなさいっ!」
思いっきり、頭を下げた。
「よいよい。気にしておらんでの」
ガロンはニヤリと笑ってみせた。
“直前まで切れていたくせに……。自分の非を認めた瞬間、失礼な態度を自覚して、頭を下げるか……。レイブンの嫁だけあって、引き際を弁えておるの”
「リリス、おっさん。さんきゅ」
レイブンが2人を労った。最初の位置に戻り、説明を再開した。




