ある神官の成長日誌 〜ジュール編・そのさん〜 13
「ジュールっ!!」
バルナスが走ってきた。手元の杖を投げ捨て、起き上がろうとしたジュールの肩を押さえた。
「バルナス様……」
「動かないで! 頭、打ってない?!」
「打っていません。受け身を取れました……から」
「背中は?! けっこうな勢いで、飛んだよね?!」
「平気です」
そのまま、ジュールの顔を覗き込んだ
「ば、バルナス様?!」
ジュールの声を無視して、バルナスが動いた。
「顔色は……悪く無い。呼吸は?」
めちゃくちゃ慌てているのに、めちゃくちゃ冷静という、アンバランスな様子だった。
「呼吸は……正常。熱は?」
ジュールのオデコに右手の手のひらをあてた。
「平熱。指先は?」
右手でジュールの左手首をつかみ、左手でジュールの指を伸ばした。
手のひらと、手の甲、指先に傷が無いかを確認する。
「左手は、問題無し。右手は?」
同様に、右手を確認。
「右手も、問題無し。右肘は?」
鎧下をめくり、右肘に傷が無いかを確認する。
「左肘は?」
同様に、左肘を確認。
「脈拍は?」
ジュールの右手首に、右手の人差し指と中指をあてた。そのまま、脈拍を測定する。
「脈拍は、少し速いかな? まあ、正常範囲?」
自らの行為が、ジュールの脈拍を速くしているのを自覚しているが、気にした様子は無かった。
「心配したんだよっ!!」
ジュールを固く抱きしめた。
ジュールは、しばらく呆然としていた。やがて……おずおずといった様子で、バルナスの背中に腕をまわした。
「ご心配……おかけいたしました……」
「この……おバカっ……」
バルナスの声が、震えていた。




