生徒指導室2
佐藤流人、高校3年生男子。
俺は生徒指導室で、教頭と女性学年主任を相手にピンチに陥っていた。
原因は残念系美少女で高校3年生でありながら、俺の嫁である環珠稀の言動に由来する。
元々バカだバカだとは思っていたけど、こいつは本物のバカだった。
教師たちの前で俺たちの結婚だけでなく、自分の俺に対する犯罪行為の数々まで暴露しやがった。
「珠稀、一応言っとくが、さっき暴露したお前の行動は俺が相手だから許されてるが、他でやったら本気で警察に捕まるからな」
「大丈夫、私が匂いを嗅いでムラムラして襲いたくなるのは、りゅうとだけだから」
「それのどこが大丈夫なんだ。俺の身がお前という危険に晒されていることが、よくわかったよ」
やはり、日本と珠稀国では大丈夫という言葉の発音は同じでも意味が大きく違うらしい。
何故なら、在日珠稀国大使の環珠稀の言っている大丈夫の意味が俺には全然伝わらないから。
まさか珠稀の行動には治外法権が発動されて、俺に対してだけ法治国家である日本の法が適用されないってことはないだろう。
「もし俺を襲ってきたら、ガチで通報するからな」
「夫婦なのに?」
「夫婦でも、俺たちはまだ高校生だからな」
たしか同意のないそういった行為は夫婦であっても犯罪なはずだ。
ここは毅然とした態度をとらせてもらおう。
それにしても俺の匂いでムラムラって、珠稀の奴ヤバさと残念さが増してきてないか?
まったく、珠稀には羞恥心とか標準装備されていないんだろうか?
そこで、コホンと咳払いをする音が聞こえる。
しまった、また教師たちのことを放ってしまっていたな。
「我々の前でイチャイチャするとはいい度胸だな」
「教頭、あれがイチャイチャしているように見えたのなら、いい眼科か脳外科を紹介するんで早めに受診してください。そろそろいい歳になってきてるみたいだし、絶対に何か深刻な病が潜んでますよ」
「失敬な。私はまだそんな心配される歳ではないし、すこぶる健康体だ」
おや、おかしいな。
心配してあげたはずなのに、教頭の機嫌がさらに悪くなってしまった。
顔を不機嫌に染め上げながら、教頭が言葉を続ける。
「いいかね。我々、教師側としても君たちの結婚をそう簡単に認めるわけにはいかんのだよ」
「何でです? 私たちは書類上はもう既にちゃんとした夫婦だし、何も悪いことはしてませんよ」
「……」
「りゅうと、なんでそこで私の顔をジーっと見るの?」
「珠稀、気にするな」
そう言いつつ、俺は顔を背ける。
確かに俺のほうは悪いことをしていないけど、珠稀のほうはどうなんだろう。
さっき珠稀が自白した数々の行為を思い出してみる。
・不法侵入
・痴漢(痴女)行為
そういえば、最近じゃ弁当の白飯にヒジキで、びっしりと書かれた怪文書ってのもあったな。
他にも聞き出したら俺に対してのグレーゾーンの案件がいろいろ出てきそうでかなり怖い。
まあ、夫の俺が相手だし、珠稀自身未成年だから、とりあえず捕まることはないと思うけど、普通の女子高生の行動として考えると完全にアウトだ。
「だから、私たちの結婚の何がいけないんですか」
珠稀は納得がいかないという感じだし、このままだと話は平行線だ。
最悪売り言葉に買い言葉で退学だとかになったらまずい、あんな残念な親たちを抱えて高校中退とか将来が怖すぎるだろ。
俺がそんなことを思っていると、俺たちの様子を傍観していた学年主任が久し振りに口を開く。
「教頭、いいんじゃないですか、結婚を認めても」
「有栖川君、何を言っているんだね」
「先ほどからのやり取りを見ていての客観的な意見です。見たところ、佐藤君は学年の問題児である環さんを今のところ完全に制御してくれているではありませんか」
「たしかに」
「ここまで見事に環さんの愛を一身に受けてくれている佐藤君なら、環さんの問題児脱却が可能じゃないでしょうか」
「なるほど」
いや、教頭、なるほどじゃねえよ。
それって、俺に丸投げってことだろ。
というか、それで納得されるって珠稀の奴、どれだけ学校側に迷惑をかけていたんだ?
「これで教育というものに自信をなくして我が校を去っていった何人もの教師たちが浮かばれますね」
「一時期は教師の退職で学校が存亡の危機に陥るところだったからな」
「ある先生は動物の調教師に転職されて、チンパンジーに算数を習得させたとか話題に上っていましたね」
「彼は環さんに教えるより、よっぽど楽だと言っていたよ」
まじか、珠稀の奴、どれだけバカなんだ?
というか、うちの高校偏差値が高くないとはいえ、よく3年まで進級できたな。
珠稀のほうを見ると俺への愛を褒められてると思って機嫌をよくして照れている。
おい、珠稀、お前学年の問題児でチンパンジー以下って言われてるんだぞ。
間違っても照れるとこじゃないからな。
俺が珠稀に呆れていると、教頭たちの俺たちの結婚への結論が固まったようだ。
「しょうがない。法的な問題がない以上、周囲にバレないかぎりという条件で君たち夫婦の学校在籍を認めようじゃないか」
ひどい手のひら返しがあったもんだと思うが、中堅偏差値の私立高校に問題生徒を追い出す経済的な余裕はなく、出願者を減らすような話題の公表も避けたいのだろう。
まあ、即時退学しなくて済むなら俺としては問題ない。
「佐藤君、環さんのことしっかり頼んだわよ」
「まあ、これでも夫なんで、一応嫁の面倒はそれなりにみるつもりではいますよ」
こんな短く拙い文章ですが、読んでくれてる人に感謝です。
登録してくれた人もありがとうございます。




