第四十話
次の日。習慣でいつも通り7時半にはおきた。手を握っていた母さんは自分が寝ていた後に、帰ったらしい。個室なのでイヤホンなしでテレビを見ることができる。この時間はどこも全く同じ内容のニュースばかり。一つぐらい子供向けのアニメでも流せばいいのにと思う。しばらくすると朝食が運ばれてきた。病院のご飯は美味しくないとよく聞くが普通に美味しかった。1人で食べる朝食は実に7年ぶり。母さんたちの葬式の日以来だった。少し寂しかった。朝食後、スマホに2件通知が来た。今やほとんどの病院で普通にスマホが使うことが可能になった。医療機器の進化で電波による障害が出にくくなったのが理由である。だからこうして普通にスマホを使うことができている。今の時代これがないと不便でたまらない。スマホ依存とよく問題になるが制限しろという方が無理だ。1つ目の通知は母さんからだった。溜め込んでいた仕事があるから今日は夕方にしか行けないということだった。2日も自分につきっきりだったから仕方ない。意識も戻ったし安心して仕事に集中できるかな。2つ目は結さんからだった。お店はしばらく休み。今日の午前中に真由さんと話すようだ。メッセージと一緒に一輪の花写真が送られてきた。その写真を見て、自分なりの答えが出せたのだなと安心した。
中村先生と日向さんがお見舞いに来てくれた。ちょうど日向さんに話しておきたいことがあった。
「日向さんお願いがあるのですが。」
「中村くんから聞いているよ。大丈夫。止めはしないよ。」
「ありがとうございます。真由さんの病室聞いていいですか?」
真由さんは大きな怪我はなかったが大事をとって入院している。怪我よりもおそらく精神的なダメージが大きいだろう。自分が会いに言っていいものか迷ったがこれからのためには必要だと思った。
「君が会いに行くのかい?真由をよこすけどいいの?」
「自分が真由さんに話があるので自分から行くのが筋だと思います。拒否されてこないってことも考えられますから。自分も動けないわけではないですしね。でもあらかじめ真由さんに伝えておいてください。」
「わかったよ。任せる。」
「ありがとうございます。いざとなれば中村先生に入ってもらいます。安心してください。」
「期待してるよ。」
自分が出るまでもなく、結さんとの話し合いでなんとかなればいいのだが、自分と真由さんの関係改善には至らない。真由さんの自殺は結さんで十分防ぐことは可能だ。だがまた、自分の影響で2人の関係が崩れないとも限らない。これからもここにいるには必要なことなのだ。




