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レベル99冒険者による、はじめての領地経営  作者: 藤崎
Episode 11 遙かな探索行 第三章 天上の冒険

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4.アルシアの訪問

 当然と言うべきか、ユウトたちはフェルミナ神から提示された探索行(クエスト)を引き受けた。

 ユウトたちの決断に感謝の意を伝えた太陽神フェルミナは、アルシアをこの宮殿に残してセネカ二世を同行させるよう提案し、それに対しては回答を保留したまま謁見は終了した。


 その後、それぞれ個室があてがわれ、旅の疲れを癒す。

 しかし、ユウトはその布団の上にはいるものの、行なっているのは正反対の行為。呪文書と巻物(スクロール)を広げて、作戦を練っていた。


「難しいな……」


 布団に四肢を投げ出し、純白の天井を眺めて大きく深呼吸。熱暴走しそうになる思考をクールダウンさせる。

 だが、そうしても現実は変わらない。


 アルシア抜きでは、神相手にまともな戦いができそうにないという現実は。


 今さら言っても仕方がないが、神を相手にするという前提がおかしいというのはある。それに、セネカ二世がアルシアに劣っているというわけでもない。

 それでも、今まで培ってきた連携と経験は一朝一夕には磨けない。ある程度までは持っていくことができても、ひとつのミスが命取りになりかねないのだ。


 フェルミナ神はムルグーシュ神の力を削ぐ。つまり、ある程度の損傷を与えるか、力を使わせれば次元の穴を閉じられると言った。

 ハードルを上げているのは、自分自身の欲のためかも知れないという自覚もある。


 同時に、アルシアをムルグーシュ神の下へ連れていくことができないことも分かっていた。


 分かっていてもなお、無い物ねだりをしているのだ。


「いや、ヴァルがいてくれるんだ。弱気になるな」


 鍛冶神の叡智を用いて、人が持ちうる技術の粋を集めた熾天騎剣(ホワイト・ナイト)。それをヘレノニアの聖女が振るえば、力を殺ぐどころではない。

 神殺しも、不可能ではないはずだ。


 実際、ユウトはそのレベルを狙っていた。

 ムルグーシュ神だろうとなんだろうと、これ以上の面倒はごめんだ。禍根は、根本から断つしかない。


 神秘の力を停止させるという瞳がどの程度まで復活しているのかは分からないが、ムルグーシュ聖堂の最奥で披露した通り、対抗策はある。


「まあ、本当にそれだけなのかというのもあるんだけど……」


 今まで得てきた情報で、ムルグーシュ神の隠された目的、真の力が朧気ながらが分かりつつある。

 とはいえ、推測は推測でしかない。


 その意味では、やはり不確定要素が大きく、アルシアがいないことは大きな不安要素となる。


 また、ただ強力な武器があれば良いというわけではない。いかにして、その最後の一手を届かせるか。それが、重要なのだ。


「……最後、なんかサッカーみたいになったな」


 異世界どころか神の世界に来ても、忘れられないらしいと苦笑する。

 身を起こし、気分転換に遊ぼうか……と無限貯蔵のバッグに入っているゲーム機を取り出そうとしたところで、ふすまが遠慮がちにノックされた。


「まあ、本気で叩くわけにはいかないだろうけど……って、アルシア姐さん?」

「ごめんなさい、ユウトくん」

「謝られるようなことはされてないけど、どうぞ」


 なぜか俯き加減のアルシアを部屋へと誘い、散らかり放題になっていることに気づいて天を仰ぐ。遊んでいたわけではないが、冷静に見ると乱雑すぎるのは間違いない。


 一言注意されるかと思いきや、彼女はなにも言わない。


「その辺に、座布団みたいのがあったような……」


 これ幸いと発掘し、アルシアへと勧める。


 フェルミナ宮殿の個室は、ほとんど調度のない殺風景な部屋だった。

 そこで二人きりだと、温泉旅館にでもいるようで少し落ち着かない。


「…………」

「…………」


 それは、部屋を訪ねてきたアルシアが俯いたまま無言を貫いているのと無関係ではないだろう。


 間が持てない。


「あー。そうだ。どうも、悪の神々も一枚岩じゃないみたいだ」


 気づけば、作戦を考える前に考察していた背景事情を口にしようとしていた。焦っているためか、口調も砕けた感じになっている。


「……というと?」

「例の次元の穴、どうせならムルグーシュ神の支配領域でやれば良かった……と思わない?」


 アルシアは、言われてみればと賛意を示す。

 なにか用事があったはずだが、とりあえずユウトの話に乗ることにしたようだ。 


「自分の領域でやらなかったのは、ほかの悪の相を持つ神々から干渉を受けると考えたからなんだと思うんだ。悪の神同士の抗争であれば、善の神々も文句は言わない」


 つまり、善と悪の全面抗争にまでは発展しない。

 次元の穴を横取りした他の悪の神がなにに使うかで、また、状況も変わってくるだろうが。


 その意味では、ユウトの言うとおり、悪の神々の間で協力体制が構築されていないのは幸運だった。


「だけど、それが中立地になると、どうだろう?」

「善と悪の神々、双方から攻撃を受ける……わけではなさそうね」

「疑心暗鬼が生じ、どちらからも攻撃を受けなくなる」


 仮に、善と悪の神の間に話し合いのチャンネルでもあれば、その疑心暗鬼はあっさりと解消される。だが、現実はそうはいかない。


 狡っ辛いと言ってしまえばそれまでだが、単純に力押ししてくるより性質が悪いと言える。


「責任重大というわけね……」


 座視すれば、最悪、青き盟約(ブルーワーズ)が破られ善と悪の最終戦争が起きかねない。

 現実感は薄いが、起こり得る未来。


 いや、起こしてはならない。


「ユウトくん」


 意を決したように、アルシアが居住まいを正し顔を正面に向ける。

 目は見えない。

 だが、ユウトを。婚約者の少年を真っ向から見据えるように。


 意識を向けられた大魔術師(アーク・メイジ)は、婚約者の言葉をじっと待つ。


「私も、ムルグーシュ神との戦いに連れていって」

「アルシア姐さん、なにを言っているのか分かってる?」


 勇気を振り絞って紡いだ言葉。けれど、いや、当然と言うべきか。対応するユウトの声は固い。


「分かっていると思うわ」


 このフェルミナ宮殿にいれば、安全だ。

 ムルグーシュ神の行動も、ある程度抑制できる。

 真っ先に狙われるだろうアルシアがいては、皆の行動も完全に自由とはいえない。


 一緒にいれば力にはなれる。それは間違いない。

 だが、理性で考えれば、どうするべきかは子供でも分かる。


「それでも私は……」


 ムルグーシュ信徒の狐人(ワーフォックス)に狙われたときのような、得体の知れない恐怖はない。

 その直後のような、自暴自棄な感情ではない。


 ただ、そう。

 待っているだけでは、嫌だった。


 ヴァルトルーデに言えば、難しい顔をしつつも賛成してくれるだろう。

 エグザイルやラーシアであれば、難しいことは考えずに連れていってくれるだろう。

 ヨナは、むしろ、引きずっていきそうだ。


 だから、ユウトを訪ねた。

 彼なら、冷静に判断して諦めさせてくれるだろうから。


「じゃあ、行こうか」

「一緒にいたい……って、え?」


 勇気を振り絞ってわがままを言おうとした。いや、言った。言ってしまった。世界が滅びるかも知れない瀬戸際だというのに。


 それなのに、要望は既に叶っていた。


 訳が分からない。


 だが、ユウトを相手にしていると、ままあることでもあった。


「正直、アルシア姐さんがいたほうが助かるってのはあるし、まあ、恥ずかしいけど、俺たちは全員でひとつみたいなもんだしさ」

「ユウト……くん……」


 ずるい。反則ではないか。

 どんなルールに反しているのか分からないが、胸から熱いものがこみ上げてくる。


「言い方は悪いけど、ムルグーシュ神がアルシア姐さんを真っ先に狙ってくるのなら、囮になる。相手の手が単純になれば、こちらにとっても有利だ。相手が普通に戦ってくるんなら……アルシア姐さんが殺されるような状態になる前に、俺たちみんな死んでるよ」


 アルシアのことを慮っているのかいないのか。

 あえて事態を単純化して、言葉を紡ぐ。


「アルシア姐さんが来てくれること、残ってくれること。どちらにも一長一短あって、どちらとも言えない状態だった。そこにアルシア姐さんの意志が加わったら、そりゃ、天秤は傾くよ」

「ユウトくん……」

「あとね。前にも言ったような気がするけど……。アルシア姐さんは、もっとわがまま言っていいよ。そこだけは、ヨナを見習ってもいいくらいじゃないかな」


 そう言って、ユウトはためらいがちにアルシアを抱き寄せた。

 ほっそりとしているが抱き心地の良い肢体。一緒にいると安心する。


 そして、それは抱き寄せられたアルシアも同じだったようだ。


「本当に、一緒にいてもいいのね?」

「アルシア姐さん一人ぐらい、俺が守るよ」

「本当に、わがままを言ってもいいのね?」

「もちろん」


 断言するユウトは、しかし、抱き寄せているためアルシアの口元を見ることはできない。


「なら、今だけでいいわ。名前で呼んでくれる?」

「えっ?」


 それは予想外だったのだろう。

 アルシアを抱きしめたまま固まり、思考もフリーズしている。


「だめなの?」


 アルシアらしからぬ、甘い声音。

 それに操られるかのように、ユウトの舌がその名を紡いだ。


「アルシ……ア」

「もっとはっきりお願い」

「……アルシア」

「もう一度」

「アルシア!」


 それで満足したのか、アルシアがユウトの胸から離れる。

 だが、それは失敗だった。


 真紅の眼帯でも隠せないほど頬だけでなく、顔全体。いや、首筋まで真っ赤になっている。


 それが正しいと思っていても、置いていかれると思ったら、自分でも不思議なほど不安になった。それがあっさりと解消されてしまった安心感で、今にして思えばとんでもないお願いまでしてしまった。

 少しユウトを困らせたいと思ったのは確かだったが、その結果がこれだ。


「そ、それじゃ私は部屋に戻るわね。明日もあるものね」

「あ、う、うん」


 あまりにあたふたとして、止めることもできない。

 ふすまががたがたと開閉したあと、廊下から聞こえてきた何かが倒れるような音がなんなのか。ユウトは、深く追及することはしなかった。


「アルシア姐さん、怪我してないかな……」


 深く考えなくとも、状況は一目瞭然だったから。

ユウト「こんな時間に、誰が来たんだろう」


 ふすまを開くと、ヴァルがいた

→ふすまを開くと、アルシア姐さんがいた

 ふすまを開くと、ヨナがいた

 ふすまを開くと、エグザイルとラーシアがいた


 一番下を選ぶとノーマルエンドでした。セネカ二世は二周目から選択肢に登場します。嘘です。

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― 新着の感想 ―
天界にKGBのおっさんが出張ってきているシナリオはないのですか(゜∀゜)
[良い点] アルシア、もっと早くから、名前で呼んであげんと、イカンわな。 こんだけ、全身で、オッケーて言うてるんやから。 ゴロゴロするわ。
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