お前、あの祠壊したんかっ!
結局、ジェーンは見つからず、
通学路に戻った僕らは登校を再開した。
「うーん……不思議な子だね。
私も、会ってみたかったかも」
と、僕の説明を聞いて、みづきはそんなふうに呟いた。
「きっと、みづきも仲良くなれると思うよ?」
「……そうかな?
ジェーンちゃん、クッキーとか好きだといいけど」
そんな事を話しながら校門をくぐる。
すると、校舎の前でシャベルを素振りする真亜智先輩と、少し離れてそれを撮影する弥生塚さんを見つけた。
「おはようございます」
「鏡花さん、マーチ先輩、おはようございます!」
僕らの挨拶に2人は手を止めて応じてくれた。
……みんなにもジェーンの事は共有しておくべきだろう。
そう考えて、僕は2人にジェーンとの出会いを、彼女がどこかに行ってしまった件も含めて伝えた。
「……有坂、思うんだが。
それはもしかして、宇宙人だったんじゃ……」
と、深刻そうにムムムと唸る真亜智先輩。
「いえ、本人は魔女って名乗ってましたよ?」
「そうか……なら、宇宙人じゃなさそうだね」
納得したらしい。
「……宇宙人かはともかく。
1人でうろついてるなら、心配ね」
弥生塚さんはそう言いながら、メモ帳を取り出して何かを書き込み始める。
「それにしても、ジェーン・ドゥ、身元不明女性、ね。
ふざけてるのかしら、それとも……」
「ですよね〜、なんだか、しん祟の白狐とかみたいな偽名っぽいかも」
「無貌系宇宙人に通ずるものを感じるね」
……なんの話だろう?
「……ジェーン・ドゥっていうのは、身元不明の女性につけられる仮の名前なのですよ」
その言葉に目をやると、恋路ちゃんがいた。
いつの間にやら、校舎から出てきていたらしい。
昨日の事を思い出して、僕は気まずさを感じながらも、挨拶した。
「あ、おはよう……恋路ちゃん……」
「おはようございます、先輩……禁足地に入ってしまったのですね……
あまつさえ、あの祠を壊したんか!ってやつをやっちゃったわけですね……」
恋路ちゃんの言葉に気まずさが増す。
「あ、ご、ごめ……」
「なーんて、冗談ですよ。
まあ、朝とは言え、うかつに入ったのは褒められたものじゃないですけど」
「あ、それは私も同意見ね。
できれば、先に私達にも共有してほしかったかな。
……こういう状況なんだし、どこに危険があるかも、わからないもの」
恋路ちゃんのお説教に、弥生塚さんの追撃も入る。
確かに、短絡的だったかもしれない。
「……でも、ユウくんは、誰かいる可能性が捨てられなかったんだよ」
「けどな、山根。
もしかしたら宇宙人の声真似だったかもしれないし、空耳だったかもしれないよ。
……まあ、有坂らしいとは思うけど」
「……すいませんでした」
僕が謝罪すると、
「大丈夫よ、次からは、お願いね」
と、弥生塚さんはそう笑みを浮かべた。
「それにしても、そんなところに祠なんてあったんだね」
真亜智先輩の言葉に、恋路ちゃんが
「私も知りませんでしたよ〜」
と応える……あれ?
「恋路ちゃん、祠の事、知らなかったの?」
「はい、だから、結構びっくりなんですよ。
いったい、誰が望んで、ソコにできたんですかね?
……まあ、案外、幸兎先輩が観測したから現れたのかもしれませんけど。
……祠も、その子も」
そんなわけないと思うけど……
「……とりあえず、その祠、調べてみましょうか?
何か、由来に繋がる資料があるかもしれないし」
「ん? じゃあ、今日はその林に行くのか?
でも、祠は壊れたんだろ?」
「まあ、それでも、残骸から何かわかるかもですけど。
現状、そこまでの重要性を感じませんよぉ」
真亜智先輩と恋路ちゃんの言葉に、弥生塚さんは笑みを浮かべる。
「もちろん。
あくまでも、個人的興味。
調査も空いた時間でするわよ。
オカルト系YouTuberの血が騒ぐってやつね」
「わー、ミラのオカルトチャンネル、新作ですね!
私も手伝っていいですか!?」
みづきの興奮を横目に、僕はジェーンの事を考えていた。
身元不明の女の子……なんだか寂しいな。




