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崖っぷちの僕ら  作者: 茜想作
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林の中の少女

8日目。

いつもの通り、家を出た僕とみづきは、けれどいつもと違って、静かだった。

……あの後、マナちゃんに抱きかかえられたまま家に帰った僕は、みづきにこっぴどく叱られた。

泣きそうな顔で、ポカポカ叩かれたのだ。

結局昨日は、マナちゃんと2人で、ずっとなだめる事になり、鑑賞会はお流れになった。


「……」

通学路を無言で歩く。

雑木林の前をのろのろ歩きながら、僕は彼女の様子をうかがう。

みづきはまだ、納得していないんだろうか?

「ごめん、みづき。

本当に、心配かける気はなかったんだ……」

僕の言葉に反応はない。

隣を歩く、みづきの顔を見る……しかし、そこに彼女の姿はなかった。

「みづき……?」

振り返ると、彼女は通学路の途中で立ち止まっていた。

僕の呼びかけに応えず、ただじっと、雑木林を見つめていた。

「……どうかしたの?

もしかして、ビビっときた?」

彼女に近づきながら、そう尋ねる。

けれど、彼女はしずかに、首を横に振った。

「……そうじゃないけど。

気になって……

ここに、誰か、いるかもしれないんだよね?」

「……みづき」

彼女は少し強張った顔で、僕をじっと見つめていた。

「ここ、怖いね。

夜だったら、もっと怖いよ。

でも……ユウくんなら、きっと、怖くても行くんだよね、誰かの為に」

「そう、だね……ごめん」

「……いいよ、それがユウくんだもん」

彼女はそう言って、寂しそうに微笑んだ。


雑木林を見る。

昨日とは違って、影は見えなかった。

「ごめん、みづき、行ってくる」

「……わたしも」

「みづきは、ここで待ってて……

もし、何かあったら、誰か呼んでほしい」

僕の言葉に、みづきは何も言わずにコクリと頷く。

そうして、僕は再び、雑木林に足を踏み入れた。


そこまで道路からは離れてないし、朝だというのに、林の中は少し薄暗かった。

そこまですごい森ってわけじゃない。

それでも、植物達は人が入るのを嫌がる様な暗さと静かさを作り上げている。

……とりあえず、道の近くに人影はない。

ただ、少し離れたところに、薄ら日が差し込んでるのが見えた。

何かあるらしい。

……例の、用水池、なんだろうか?

そちらの方にヒョイヒョイと進む。

そこは思ったより近かったみたいで、僕の目の前はすぐに開けた。


太陽がスポットライトの様に差すそこには、ボロボロの小さな祠があった。

何かを祀っているんだろうか。

弥生塚さんが寝泊まりしてる神社と違って、鳥居も何も無い。

本当に小さな、最低限のサイズのお社だけが佇んでいた。

この街にこんな場所があったとは。

みんなから忘れ去られてた様なオンボロの社はけれども、日の光のせいかただただ神聖にみえた。

そして、そこには、更に奇妙な物があった。

外に向かって開いた、小さなお社の扉。

そこから、女の子の上半身が生えていたのだ。

いや、正確には祠の中から上半身が出てるだけなんだけど。

見た事のない、子だった。

祠の中に下半身が入り込んでいて、腰から上だけが、外に飛び出している。

光を受けてきらめくブロンドの髪、色素の薄い肌の色に、整った顔立ち。

太陽に照らされたその子は、目を閉じてる事もあって、まるで元々そういう形の像、あるいはそれこそ神様みたいに整って見える。

「きれいだ……」

僕は自然に、そう呟いていた。

「……ほう、貴様は初対面の人間に対して、まず容姿を評価するのか。

礼を失した愚昧め」

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