表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
杜の都のろくでなし〜人生いかにタコにスルメ〜  作者: 雪森蓮


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/129

すき焼き前夜、ハイエナが来る。

底辺作家が書く底辺生活者の話

大体実話。

Xに載せてる散文をまとめています。


木曜日、朝。


奏は外を見て愕然とした。


雨だった。


「うわぁ……」


地下鉄。


絶対混む。


JR

駅が遠い

さしたくない


何もかも嫌だった。


奏は前給(猫)へカリカリを入れながら、

ぼんやり思う。


「…………」


「帰りたい」


まだ

家すら出ていない


結局。


奏はトボトボと傘を差して歩いていた。


雨。

湿気。

重い空。


最悪だった。


地下鉄へ向かう道。


ジャージ。

クロックス。

ボロいカバン。


そして。


『バカでもわかるように説明を工夫したところで、

そもそもバカは説明を聞いてない。』


長すぎる文字Tシャツ。


「…………」


通学中の高校生が、

すれ違いざまに二度見した。


奏は空を見上げる。


雨。


止む気配なし。


「……帰りたい」


まだ。


始業時間前だった。



木曜日 昼


奏は静かにロッカーを開けた。


そこには

カップラーメン。


まだ残っていた。


アオキのポイントを

三枚集めて、”2000円”。


土曜日、

フラフラになりながら手に入れた戦利品。


「…………」


今日は使う日だ。


奏は静かに頷いた。


もう

ローソンのからあげくんは居ない。

半田屋の焼肉も居ない。


今日の奏に必要なのは。


生存。


それだけだった。


「……よし」


カップラーメン。

紙コップ。

給湯器。


完璧だった。


その時


後ろから女子社員の声。


「あっ」


「今日カップ麺だ」


「昨日半田屋だったのにwww」


「給料日前かなwww」


「違う違う、

 あの人ずっと給料日前っぽいwww」


「やめなよwwww」


奏は静かに湯を注いだ。


三分。

長かった。

非常に長かった。


「いいんだ……(´;ω;`)」


奏はカップラーメンをすすりながら、

静かに呟いた。


「明日は……

 すき焼きなんだ……(´;ω;`)」


周囲の女子社員達は、

何故かちょっと黙った。


「牛肉様……

 1キロだ!!(´;ω;`)」


重かった。


言葉が。

色々と。


「……長谷川君」


隣のおばちゃんが、

そっと飴を置いた。


「生きてね……」


「ありがとうございます(´;ω;`)」


奏は、

金曜日だけを見て生きていた。


雨…

やまない。


休憩室の窓から外を見て、

奏は静かに憂鬱になっていた。


「……帰りたくねぇなぁ……」


ピコン。


LINE。


海斗だった。


『奏!ちゃんと飯食ってるか!


明日はすき焼きだから、

今日の飯は控えめにしろよ!


明日の昼もな!


実家で取れた野菜も持ってくからな!

楽しみにしてろよー。


あ、

それから卵は多めに買っといてくれよ!


俺、

すき焼きに卵は欠かせないからな!!!』


「…………」


新鮮な野菜。


ありがてぇ。

ありがてぇよ(´;ω;`)


奏は静かにスマホを握りしめながら、

カップラーメンの麺を啜った。


今の彼にとって、

花金のすき焼きは、

もはや希望そのものだった。


明日の夜。すき焼きがある。


牛肉様、1キロ。


海斗の実家で採れた、

新鮮な野菜も来るらしい。


卵も必要だ。


いいよ。

1パックくらい、買っておくさ。


今日の夜は、

業スーの冷凍野菜でスープでも作ろう。


多めに作って、

明日の昼に回してもいい。


「……ウインナー、

 冷凍してたっけな……」


「ベーコンでもいいな……」


奏の頭の中は、

もう晩飯と、

明日のすき焼きだけだった。


研修は、

明日もあるのに。


相変わらず、

Xのフォロワーは少ない。


PVも一桁。


でも。


「明日のすき焼きがあれば、

 僕は幸せなんだ!!!」


その時。


ピコン。


颯太からLINE。


『午後居眠りすんなよ』


「うるせぇ!!!」


休憩室に、

長谷川奏の声が響いた。



木曜日 夕方。


まだ雨が降る中、

奏はトボトボと駅からの帰り道を歩いていた。


「……つかれたなぁ……」


でも。


明日行けば休みだ。


しかも。


明日の夜はすき焼き。


牛肉様1キロ。

新鮮な野菜。


希望だった。


帰宅した奏は、

冷凍庫を漁る。


業スーの玉ねぎみじん切り。

業スーのブロッコリー。

ひと月前にイオンで買って冷凍していたウインナー。


全部いれてトマト缶を投入。


さらに。


颯太が持ってきた肉の下敷きになっていた冷凍ご飯を発見。


「勝ったな」


温めたご飯へスープをかける。


即席リゾット完成。


奏はズルズルと食べながら、

パソコンを開いた。


「……今日は一話くらい更新したいな……」


明日のすき焼きを支えに、

長谷川奏はキーボードへ手を伸ばした。



木曜日 夜。


奏はなんとか2話更新した。


スープは冷めていたけど美味しかった。


まだたくさん残っている。


「……23時か」


そろそろ寝よう。


そう思って前給を抱き上げた瞬間。


「あー!!腹減った!」


急にドアが開き入ってきたのは…海斗だった。


若干……いや、

かなり酔っていた。


「接待よー!

 仕事よー!

 ほとんど食えなかったよー!」


「僕、明日も早いから寝るんだけど……」


「寝てていいよー!

 俺、その辺で寝るから!」


僕は平気ではないのだが。


海斗は部屋を見回し、

突然鍋を発見した。


「何これ美味そう」


「あっ」


嫌な予感。


「食うわ!」


「あああ!!!

 それ明日の昼の……!」


海斗は手慣れた手つきでスープを温め、

秘蔵のクラッカーと一緒に完食した。


「ごちそーさん!」


「…………」


奏は布団へ潜り込む。


「海斗……明日お前、卵なしな……」


食い物の恨みは深いんだ(´;ω;`)



気が向いたら読んでみてください。

カクヨムにも同じ話をのせてます。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ