その名は「前給(猫)」
底辺作家が書く底辺生活者の話
大体実話。
Xに載せてる散文をまとめています。
今日も徒歩帰宅だった。
節約。
という名の、
貧乏。
広瀬川沿いの夜道を、
疲れた身体でとぼとぼ歩いていた時だった。
「……にゃあ」
小さな声。
僕は立ち止まった。
「……ん?」
暗がり。
ガードレールの下。
そこにいたのは、
ぼろぼろの三毛猫だった。
「…………」
嫌な予感しかしない。
子猫はふらふらしながら、
僕を見上げた。
「いやいやいや」
即座に後退した。
「無理だろ」
今の自分の生活を思い出す。
給料日前。
前給。
徒歩帰宅。
ファミチキサンド。
昨日の夕飯、
もやし。
そんな人間が、
猫?
「無理無理無理」
だが。
子猫は、
よろよろと奏を追いかけてきた。
「来るなって!!」
僕は慌てて近くの民家の庭先へ猫を置く。
「ほら! 絶対こっちの方が裕福だから!」
最低な理由だった。
そして歩き出す。
数十秒後。
「……にゃ」
「…………」
後ろ。
いた。
「なんでだよぉ……」
子猫は、
必死に奏を追いかけていた。
ぼろぼろだった。
汚れていた。
軽かった。
僕は頭を抱えた。
「……僕、自分の生活すらままならないんだけど……」
子猫は小さく鳴いた。
僕は天を仰いだ。
だめだ。
これは。
もう。
連れて帰る流れじゃないか。
案の定、颯太と海斗に煽られた、、。
「……いいよ」
僕は静かに立ち上がった。
膝の上では、
小さな三毛猫が丸くなっている。
「確かに金ないし」
海斗と颯太が黙る。
「僕、自分の生活すら怪しいし」
僕は猫を抱き上げた。
「……広瀬川に置いてくるわ」
その瞬間。
「はぁ!?!?」
海斗が叫んだ。
「お前そんなひでぇ奴だったの!?!?」
「見損なったわ!!」
「いや、だって現実問題――」
「餌代くらい俺出すわ!!」
「え?」
「てかお前さぁ!! そこまで責任感じるなら最初から拾うなよ!!」
「だって追いかけてきたんだよ!!」
「知らねぇよ!!」
颯太が猫を持ち上げる。
「……軽いな」
いつものニヤニヤした顔じゃなかった。
「ちゃんと病院行け」
「いや金――」
「避妊もしろ」
「だから金――」
「それくらい俺が出す」
「…………」
僕は黙った。
颯太は猫の頭を撫でながら、
ぼそっと言った。
「こいつは俺たちの猫だからな」
海斗も頷く。
「そうそう」
そして。
海斗はニヤッと笑った。
「そうだろ?」
颯太も続く。
「な!前給」
「誰が前給だ!!!!」
奏の絶叫が、
古いアパートに響いた。
だが。
膝の上の三毛猫は、
安心したように小さく喉を鳴らしていた。
気が向いたら読んでみてください。
カクヨムにも同じ話をのせてます。
よろしくお願いします。




