63 森の洋館
薄暗い洋館の中は静寂を保っており人気は感じられなかった。くーねが光の玉を作り出し浮かせると玄関の全貌が浮かんでくる。
玄関というより一つのホールのようになっているここはまるでホテルのエントランスのように広い空間だった。中央に上階へと上れる階段が円を描くように二つに分かれている。左右にもそれぞれ何処かへと続く広い廊下が伸びていた。シンプルながらもしっかりとした内装に呆気にとられる。
「すごいねぇここ。そうとういいところのお屋敷だったのかな?」
「荒れてる感じもなさそうだしもう長い事人がいなかったのかもな。」
「雨が止むまでは丁度いいしゃめ。ここで雨宿りさせてもらうしゃめよ。」
うんうん。とニイムに賛同する。
「くーね?どうしたんだ?」
さっきまで騒がしかったはずのくーねを見るとぽかーんと口を開けながら上、というより空間を眺めるように固まっていた。俺に声をかけられるとハッとして意識を戻す。
「わわっ、いや~、なんかはいっちゃったなって。」
「?何言ってんだ?最初に入っていったのはお前だろうに。」
「あ~そうだった~」
でへへ~と頭を撫で一歩下がったくーねはぎゅむっと何か音を鳴らす。「おにょ?」と不思議がったくーねが自らの光の玉を足元へと移動させるとそこにはぬいぐるみが落ちていた。
「なんだこれ~?柔らかいぞ!」
「くーねたんちゃんどうしたのそれ?あっ!犬!じゃないな。ネコ?オオカミ?まあいいや動物のぬいぐるみ!かわいいね!」
くーねが拾ったのは何かの動物を模したであろうぬいぐるみだった。なんの動物かはわからないが、、、恐らく犬とか猫とかそこらへんだろう。
なぜ床にそんなものが、不思議に思いもう一度周りを確認する。光の玉だけでは不十分だったので核力の抑えを緩めると左眼から白い炎が溢れ出出し、その状態でもう一度当たりを見渡した。
先ほどと変わらないエントランス。なんとなしに階段の方に視線を向けるとそこに一体の人形が置いており、、
「ひっ。」
思わず怯えて隣にいたニイムの腕を掴んでしまう。
「ん?どうしたしゃめ?」
急に飛びつかれたニイムが疑問を投げかけてくる。俺の目を見て何かを察したのか目を細めると回りを観察しだした。
「はぁ、エイタ、あれはただの人形しゃめ。そんなに怯える必要はないしゃめ。」
確かに俺が見たのは人形だった。着物を着た日本人形のようなもの。それだけだったら流石の俺も驚いたりなんかしないさ。違うんだ。
「ちちちちがうんだ!あれいま絶対動いたって!」
そっぽを向いていたはずなんだ。俺が見た瞬間に首をグリンッと回してこっちを見たのだ!本当だ!
「ふーん。動いたねぇ。どうだかしゃめ。」
証言を信じてくれないニイムが俺の腕を掴んでその人形の元まで引っ張っていく。近づきたくなかったので抵抗するもニイムに力で勝つことが出来ずに引きずられてしまう。
「ほら、全然普通の人形しゃめ。こんなんにいちいち反応していたらキリがないしゃめよ。」
人形を持ち上げて突き付けてくる。微動だにしない人形の瞳が俺に向けられて普通に怖い。
「わかった、わかったって俺が過剰だったよ。ってかあんまむやみに触るなよ呪われても知らないぞ。」
「人形を持っただけで呪われるなら呪術はもっと流行っただろうしゃめ。」
ちっ、こいつにその手の脅しは効かなそうだな。
ニイムにぐいぐいと人形を押し付けられしけった人形の感触に不快感を覚えていると「おーーい」とミカが声をかけてきた。
「ゾンビとか魔獣がいるかもしれないし一応館の探検、じゃなくて調査しようと思うんだけど!」
「欲望か隠しきれてないけど調査自体は賛成だな。魔獣とかが住み着いていてもおかしくないし。」
「そうだよね!じゃあ私たちはこっちの通路から調べていくね!エイタ君たちはあっちをお願いね!」
「えいた!にいむ!また後でね~!」
ぶんぶんと大きく手を振りながらくーねとミカが通路の奥へと消えていった。
「え?」
こういうのってみんなで一緒に調査するんじゃないの?確かに手分けしたほうが早く終わるかもしれないけどさ。危ないじゃん。っあ、こいつらのほうが危ないか。
どうしようかとニイムを見るとジトッとした目でこちらを見つめ返してくる。どうやら俺に決めさせるつもりらしい。
「えーっと、じゃあ俺たちもいくか?」
「そうしゃめね」
なんでだろう。気まずい。
持っていた人形を元あった階段に戻したニイムとくーね達とは反対側にある通路へと進む。
暗いところでも問題なく見える夜目のお陰で不便はないにしても森の中にあった無人の館というのはそれだけで雰囲気があるもので潜在的な恐怖が湧いてくる。しかも廃墟のはずなのに綺麗に整っているのがまた不気味さを加速させていた。
これからここを探索しなければならないとなると気が落ち込むものだ。どうしてミカはあんなに楽しそうなのだ?
「なにしてるしゃめ~?さっさといくしゃめ。」
通路を見つめていた俺に先に進んだニイムが声をかけてくる。
仕方なく俺も探索を開始するのだった。




