62 きっと前世はダチョウしゃめ
定期更新ってなんだっけな
勢いよく来たのはいいものの森の中は木が生い茂っておりとても道があるようには見えなかった。
「ほんとにここ進んで大丈夫なのか?」
流石に心配になり思わず声が漏れる。スイスイと木々を掻き分けながら進んでいたくーねは何も考えてなさそうな顔して振り向いてくる。
「ふえー?なんてー?」
「いや、なんでもない。」
本当に何も考えてなさそうなくーねに先導を任せて更に進む。
しかし道なき道を進むというのは慣れていないと意外と体力を使うものだった、森に入って一時間たったころだっただろうか。
「エイタく~ん。ちょっと待ってよ~」
この中で一番体力の少なかったミカが疲れ果てたように音を上げた。疲れたのかフラフラとした足取りで殿を務めていたニイムに支えられる。
「ミカ、大丈夫しゃめ?」
「まあ森入ってからも歩きっぱなしだったしな。ここらで少し休憩するか。」
異常に気付いて戻って来たくーねも加わり少し休憩することに。時刻は既に夕方に差し掛かっており森の中は一層と暗く闇が沈んでいた。
地面から飛び出した木の根っこを椅子にして座ったミカがそこらへんで拾った木の棒で土にお絵描きを始める。
「暗くなってきたね~森の中じゃ焚火も出来ないし、くーねたんちゃん明かりつけて~」
「いきなり森に入るのは迂闊だったか。せめて一晩寝て朝から出発するべきだったか。」
くーねがピカピカとかっこんを光らせてるのを横目に見ながら反省する。まあ言ってもしかたないのだが。それにくーねとニイムがいればどうにかなるだろうというちょっとした楽観がなかったといえば嘘になる。
「ま、そこまで深く考える必要もないしゃめ。のんびりいくしゃめよ~」
ニイムがのんびりと呟いた。なんだか気持ち口を綻ばせているようにも見える。なにかいい事でもあったのだろうか?
「ニイム?どうし、」
ポツンと何かが俺の鼻先へと落ちる。言いかけた言葉を中断した俺はなんとなしに上を見上げた。一つだけじゃない。次から次へと振って来たそれは次第に勢いを強めていく。
木々の葉っぱに落ちる音が大きくなっていき、ざーーと騒がしくなっていった。
「うそー!雨降って来たよ!」
「これは、タイミング悪いな。」
雨を防ごうにも手や荷物では大した守りにはならずこの雨ならすぐに濡れてしまうだろう。
「ほわ~振ってきちゃったねぇ」
「この雨、さらに強くなるしゃめ、どこか雨宿り出来る場所にいったほうがいいしゃめね。」
特に雨を気にしていないのか上を向き木々の葉の隙間から空を眺めていたニイムが天気予報をしてくれる。くーねも平気そうだ。というかなんか一人だけ濡れて無くない?
「森の中で雨宿り出来る場所かー。都合よく洞窟とかあるかな?」
山ならともかく森だからな。洞窟はないだろう。だけども探せば何かしら雨をしのげる場所はあるはず。
「とりあえず移動するか、ここにいても濡れるだけだ。」
立ち上がりながら服をはたき土を掃うとくーねに方向を教えてもらいながら俺たちは進行を再開した。
先ほどよりもスピードを上げて小走りになりながらキョロキョロとあたりを見る。
「思ったよりも雨宿り出来そうなところないな。」
進んでも進んでも木、木、木。正に森というに相応しいここは全くと言っていいほど雨宿りが出来そうなスポットを見つけられなかった。
雨粒が大きくなってきたことで更に焦りを募らせながら速度を上げていく。
それから少しして、日が暮れたことの暗がりと雨による視界不良で少し先すら怪しくなった中、後ろから何かが聞こえてきた。
気のせいかとも思たったが一応振り返ってみるとすぐ後ろにいたミカが口を大きく開けてパクパクとしながらどこかに指を指している。
ああそうか、雨の音がうるさくて全然聞こえないんだ。
「どうした!ミカ!!」
声を張り、叫ぶように尋ねるとミカも自分の声が聞こえていなかったことに気づいたのか同じく声を張って返してくれる。
「あっち!あっちになんか建物があるよ!!」
「なんだと!?」
「どうしたんだしゃめ?」
「ニイム!すぐにくーねを呼び戻してきてくれるか?なんでもミカが建物らしきものを見つけたらしい。」
「!!わかったしゃめ」
一瞬でギアを上げて駆け抜けていったニイムがくーねを呼び戻しに行く。あれならすぐに追いつくだろう。
少し濡れてしまうがくーね達が戻ってくるまでは我慢するとしようか。と思っているとミカに違和感を覚えた。
あれ?こいつ全然濡れてない?まだ土砂降りほどではないが今でもかなりの雨が降っている。そんな中走っていたらずぶ濡れになっていてもおかしくないのにどうしてだろう?というか雨粒が顔に当たるせいで視界も悪いのによく見つけれたな。
いや待てよ。そもそもミカの周りに雨降って無くないか?!
それに気づいてミカを注意深く観察してみるとなんだか膜、というかなんというか。とにかく透明な何かで覆われていることが分かった。
「ミカ、それって?」
どこに指を指せばいいかわからなかったからとりあえず全体くるっと示すように指を振ると何かを察したミカが「あ~」と言って扇子を振るった。
すると突然突風が吹き荒れる。がそれも一瞬の事で今まで降っていたはずの雨が急に止んだ。
「なんだ?!」
いや、これは止んだわけではなかった。実際俺の周り以外は今もなお雨が降っている。上を見てみると本来落ちてくるはずの雨が何かにはじかれるように体を避けていることが分かる。
「これは、、、風か?」
目の前の渦巻いている何かに手を触れるとまるで運転中の車から手を出したみたいに強い風を感じる。これが雨を弾いているのか。
「そうだよー。風の玉をアレンジしてみたんだ!その場に留まる風の玉を作ってその中に入ったら雨を弾けるかなーって。結構うまくいったでしょ!」
確かにこれなら雨を防げるから濡れる心配もない。ってか使えるなら最初から入れてよ。もう手遅れくらいには濡れてるんだけど。
まあくーね達も濡れてるだろうしそこはいいか。と考えを飲み込んでいるとニイムがくーねを連れて戻ってくる。
「ミカ!なんか見つけたの!」
どんなときにも元気いっぱい!ふんふんと鼻歌を歌いながら戻って来たくーねがミカに問いかけている。
ん?そういえばさっきも思ったんだけどやっぱりくーねも濡れてなくない??
「はぁ、なぜ何も考えずに走るのか。きっと前世はダチョウしゃめ。」
なにがあったのかニイムもよくわからない悪態を吐きながらくーねの後ろから出てくる。もちろん濡れてない。
あれ?これ濡れているの俺だけでは???よくよく見るとニイムもくーねも何らかの方法で雨を防いでいる。馬鹿正直に雨に打たれていたのは俺だけか。
「さ、早くいくしゃめ。」
「うん!じゃあ案内するね!エイタ君もあんまり私から離れないでね!」
「あ、ああ。」
なんだか途端に恥ずかしくなってきた。核力の炎でみんなにばれないように服を乾かしておこうっと。
こそこそと体を摩って服を乾かしていると直ぐにそれは見えてくる。
「ほらみて!ここだよ!」
「おお~いいところだねぇ」
「なかなか立派な建物しゃめね」
くーねやニイムの言う通りそれは立派な建物だった。
一言で言えば洋館だろう。丁寧に組まれた下見板が規則正しく並び、ダークオークが雨に打たれ艶をだす。蔦が絡まることもなく、ただそこに静かに置かれているような佇まいは、どこか凛としていて、思わず足を止めて見入ってしまうような清潔な美しさがあった。
あまりにも綺麗すぎる建物に違和感を覚えるくらいには。
「早速入ろうよ!いこういこーう!」
くーねがテンションを上げぴょんぴょんと跳ねると館へと進んでいく。ニイムも特に警戒もせずにそれに続いた。
「エイタ君?どうしたの?」
「いやさ、なんかおかしくないか?」
俺が進もうとせず洋館を見つめて悩んでいるとミカが疑問に思い聞いてきた。なにかに引っ掛かっていると洋館を見つめ首を傾げる。
「うーん。確かにおかしいよねぇ。結構大きい建物なのに駐車場とかないのかな?」
そっち?!まあそうだけど!そうじゃない!
「それより私たちも早くいこ!この魔法結構疲れるんだよ」
そんなことを言われたら拒否することなんてできるわけもなく腕を掴まれて連れていかれるように俺たちも館へと近づいていった。
ちょっとした階段を上るとウッドデッキのようになっており玄関の扉はすぐ目の前だった。豪華な装飾すら施されてはいないが一目見て立派な建築だとわかる。
そんな綺麗な扉をコンコンコンとノックした。
「中に人いるのかな?」
「わかんないけどこれだけ立派な状態で建物が残っているってことは誰かが手入れしているんじゃないか?」
ああそうだ。違和感はそれか。この世界でここまで綺麗な状態で残っている建物が逆に珍しくて、それで違和感を覚えていたのか。
うーん、となるとこの建物に入るのは危険なのではないか?ただでさえ問題を起こしやすいからな俺たちは。
ただそれを伝えようとするよりも早くガチャッとくーねが玄関の扉を開いた。
キーーと金具を軋ませながらゆっくりと扉を開けていく。
「おじゃましまーーす!!」
「あー!くーねたんちゃんそんな勝手に入っちゃ駄目だって!」
と言いつつくーねを追いかけて館の中へと入っていくミカ。どうやら鍵は掛かっていなかったらしい。
「警戒心なさすぎじゃないか?」
「エイタが怯えすぎなだけしゃめ。」
ぐぬぬ。
やれやれと肩を竦めたニイムに背中をぐいぐいと押されながら俺たちも館へと入っていった。




