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59 そんなくーねたんちゃんを虫みたいに

お久しぶりです!まだ失踪していません!

「ついに、行っちまうんだな。」


「うん。お父さん、お母さん。絶対にまた帰ってくるから!それまで元気でね!死んでちゃいやだよ!」


「ミカこそ、しっかりね。元気でいるんだよ。」


 ミカが両親と抱き合い別れを告げている。


 現在は俺が目覚めてから五日が経過したころ。


 ミカの両親、また村の人たちが俺たちをこの村にとどめようとあの手この手で引き留めていたのだ。


 そして俺たちもまたそれに甘えていた。


 一番はミカだ。常に両親と一緒にいた。これまで離れ離れだった時間を取り戻そうとするかのように。


 それを止めれるような人はいなかった。それに俺の怪我も完治していなかったし右腕を体になじませるためのリハビリもやっていた。


 だからみんな、なんとなく滞在を引き延ばしていた。


 でもいつかは出発しなくてはならない。それは誰もが分かっていたことだった。


 そうしてミカが切り出したのだ。「そろそろいこう。」と。


 いつでも出発できるように準備は済ませていた。だからすぐ村を経つことが出来てしまった。


 「いいのか?」とは聞かなかった。ミカの目を見れば本気だってことが分かったから。


 くーねやニイムも手伝ったおかげもあり急ピッチで建造されていった村の外壁、その正門にて村人全員が見送りのために集まってくれている。


「おにいちゃんたち、どこかいっちゃうの?」


 村の子供たちがエイタのところへ集まってくる。


「ああ、お兄ちゃんたちはな、これから悪い奴らをやっつけにいってくるよ。」


「悪い奴って、あのかいぶつみたいなの?」


「ああ、そうだよ。」


「すげーー!!おにいちゃんたちちょーかっこいい!!」


 質問に答えてあげると目を輝かせた子供たちがわいわいと騒ぎ出す。


「きっとおにいちゃんたちなら倒せるぜ!だっておにいちゃんたちは”ヒーロー”なんだから!」


「ひ、ヒーロー?」


「そう!おにいちゃんたちはかいぶつをやっつけてくれたヒーローだよ!」


 「ブフゥ」と後ろから噴き出したやつに睨むような視線を送りながら子供たちに笑顔を返す。


「そうか、じゃあヒーローとして頑張ってくるよ!」


「うん!頑張って!!!」


 目をキラキラと輝かせた子供たちが手を振りながら親元へと戻っていく。


「なんだよ。」


「別になんもないしゃめ。ただ、お前がヒーローしゃめ、、、ブフッ」


「おい!」


 なにかのツボに入ったのか口を押え方を震わせながら笑いをこらえているニイムにジト目を送っていると、少し落ち着いてきたのかニイムが真剣な声色で言葉を発する。


「今はまだ笑い話だけど、いつか本物の”英雄(ヒーロー)”になれしゃめ。」


「それは、、、いや、そうだよな。」


 魔王を倒す。物語ではそれを成し遂げる人たちのことを”勇者”や”英雄”と呼ぶだろう。ならば得なければならない。その称号を。


「そういえばニイムはいいのか?俺たちについてくるんだろ?」


「今更過ぎる質問しゃめ。なんも聞かれないから今まで流れで仲間面していたしゃめ。」


「あ、なんかごめん」


「まあいいしゃめ。どのみちお前らにはついていくつもりしゃめ。そもそも私がここに来た理由だってくーねと合流するためだったしゃめ。」


「そっか、くーねの力を感じてこの辺まで来たんだもんな。」


「そうしゃめ、あいつの魔王討伐に協力すること、それが私の使命しゃめ。」


「使命?」


「あー気にすんなしゃめ、こっちの話しゃめ。」


 話は終わりだと腕を組んだニイムは目と口を閉じてしまった。そこにスタタタと音を立てながらミカがやってくる。


「みんな!お待たせ!ってあれ?どうしたの?」


 魔女のコスプレ衣装に身を包んでいるミカ。ずっとこの格好をしているからもうすっかり見慣れてきてしまった。


「いやさ、ひどいんだよニイムのやつ、俺が子供たちにヒーローって呼ばれたのを笑ってくるんだぜ。」


「エイタ君がヒーロー?めっちゃかっこいいじゃん!すごくいいと思うよ!」


 ミカがかっこいいだとかすごいだとか連呼してきて段々とむずがゆくなってくる。


「あー!やっぱなし!墓穴を掘ってしまった。それより挨拶はもう済んだのか?」


「ん?うん。ちゃんと言いたいことは全部言ってきたし。もう悔いはないよ。」


 それはまるで一生の別れを告げてきたかのよう。それほどまでの覚悟を感じるミカにエイタはそれ以上何も言うことはなかった。


「じゃあそろそろいくしゃめ。」


 眼を瞑っていたニイムが号令をかけ歩き出す。


「うん!ってあれ、くーねたんちゃんは?どこいったの?」


 くーねは今ここにはいない。なんでも先ほどから姿が見えないのだ。まあフラフラしてるのはいつもの事だしあまり気にしてはいなかったが。


「あ?くーね?あんなん放っておくしゃめ。そのうち沸いて出てくるしゃめ。」


「そんなくーねたんちゃんを虫みたいに、、、」


 と言いつつも歩き始めたニイムについていくミカ。


 当然俺も歩き始めようとすると背後から、正確には村の正門の上から特大の気配を感じた。


 そこに攻撃性はなく、なんなら優しく包み込まれるようなほんわかした気配。


 そちらに視線を向けると一人の少女が立っている。


 長いツインテールを風になびかせ、この角度なら絶対に見えるだろ!と言いたくなる”絶対に見せない”スカートをはためかせている少女。くーねだ。


 誰もがその気配を感じ取りくーねに視線を向けた。


 そして腰に手を当て仁王立ちをしたまま全員の視線が集まったことを確認したくーねはニッと笑うと万歳する。


 同時にくーねの手のひらから宙に放たれたビー玉のようなもの。それが意味するものは、


 ポンッとケミカル色のスポットライトがくーねを輝かせる!


「キラキラ粒子でお目目ゴロゴロ!アイドル戦士!くーねたん!!!


 みんなの心に私は住み着く!」


 シーンとした静けさが吹き抜けていく。


 ここ数日ですっかり村人たちのアイドルとなったくーねの突然の奇行に、皆呆気に取られていた。


 くーねの背中には小柄な体に似合わない大きなリュックが背負われている。


 それを見た村人たちは今まで分かったいたにも関わらず再認識される。


 少女が、村の英雄たちが、この村を出発してしまうことに。


 誰かが呟く。「いかないで。」


 不安だ。村に明るさあを取り戻してくれた存在がいなくなってしまうのは。


 不安は少しずつ伝染し村人の中に広がっていく。


「いかないでくれ!」「どうかここに!」「これからどうすればいいんだ!」


 そんな村人たちの悲痛な叫びを一心に受け止めたくーねは、それでもフッと笑った。


「わーーっはっはっはっは!怖いか、恐ろしいか、そうだろうそうだろう。」


 いつにもまして強く吹く風がくーねの髪の毛を盛大に揺らす。


「でも、問題なしっ!!!」


 はっと村人たちが顔を上げる。


「この世界には私がいるっ!!私は必ず魔王を倒す!!!


 だからみんな、その時まで待っててね!寂しくなったら私の歌を聴いて!」


 そういうとくーねはカバンの中からラジオを取り出すと下に放った。


 ふわ~んと重力に抵抗しながらゆっくりと下に落ちたラジオを村人が危なげなくキャッチすると、掴んだ反動でラジオのスイッチが押される。


 カチっと。録音再生ボタンをを押されたラジオから流れるのはガビガビになりながらも優しく流れてくるくーねの歌声、しかも伴奏つき。


 収録された一曲が鳴り終わるまで誰も動けずにいた。


 すべての再生が終わりまた沈黙が流れるが、村人たちの心には既に不安なんて吹き飛ばされていた。


 一拍置いた後、


 ――ドッ  と沸いた。



\\\\\うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお/////



 地鳴りが起きそうなほどの歓声にエイタの胸も湧きあがり、一緒に叫びそうになる。


 隣を見るとミカはもう叫んでいた。


\\\くーねたん!!くーねたん!!くーねたん!!くーねたん!!///


 そんな熱狂的なコールが巻き起こる中、


「はぁ~、やっぱり最後はあいつがもっていくしゃめ。」


 口を尖らせたニイムがやれやれと手を振りながら歩みを再開している。


「あっ、ちょ、ええっと、」


 それを見て若干冷静さを取り戻したエイタもニイムについていくように歩き出す。


 コールを煽るくーねと一緒になって盛り上がるミカを置いて。


 新しい旅立ちの門出は、これまたにぎやかなものだったがこれでいいんだとなんだか思えたのは内緒だ。


しばらく更新が出来ていませんでした。

失踪した訳ではないので、そういえばこんな奴もいたなくらいに待ってて頂けると嬉しいです。

次の章のプロットがもうすぐ出来るのでまた再開出来ると思います。詳しくは活動報告にでも書こうと思います。

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