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57 師は何人いてもいい

書きたいのに書く時間がない、、、!!

更新遅くて申し訳ないです!!

 エイタが目覚めたその夜。村人は湧きあがりささやかながら宴が開催されていた。


 あのあと普通に起き上がったくーねが元気に歌を歌い子供たち(と一部の熱狂的な大人とミカ)が楽しそうに一緒に歌っている。


(あいつ気絶してたわけじゃなくて普通に寝てたんだな。)


 長い事気絶していたのが自分だけだったと知ったときは若干落ち込んだがまあいいだろう。


 幸い村の一部は無事だったらしく地下にあった食糧庫も被害は軽微だったらしい。


 それでも村の大半部分が崩壊したのだ。立て直すのには相応の時間がかかるだろう。実際村人たちはついさっきまで忙しそうに復旧作業に取り掛かっていたし。


 ただ今だけはみんなが思い思いに宴を楽しんでいた。たまにはこんな日があったっていいだろう。


 外に仮設されている椅子に座り料理に手を付けるわけでもなく頬をつきながら遠巻きにくーねのステージを眺めていると、


「ああいたいた。主役がこんなところで油を売ってていいのかい?」


 やって来たのはミカの父親だった。


「コウヘイさん。俺は別に主役なんかじゃないですよ。くーねがいなければとっくに消滅してた。」


 自傷気味に笑うエイタにコウヘイは首を振りながら前の席に座る。


「そんなことないさ、エイタ君はあの大男と戦いみんなを守ってくれたじゃないか。そのことは村のみんなが知ってる。もっと誇ってもいいんだよ?君もね?」


 優しく語りかけてくれたコウヘイは俺の隣で我関せずとご飯を食べていた少女にも話を振った。


「ニイム、どんだけ食べるんだそれ。」


 少女の名前はニイム・ユニカ。やはりくーねと同じ異世界から来ていた少女だった。


 どうやら前の世界でもくーねとはよく知った仲ではあったらしいが話を聞いているとくーねとニイムの中で認識のズレがあるようにも感じる。


 なんでもとある聖教会の聖騎士として?その任務で遥々こっちの世界にやってきてくーねを探し回っていたらしい。


 つい最近になってくーねのものと思われる極大な力を観測してここら辺を探している中で、魔王軍幹部が使う結界を発見して合流したのがこの間の事だ。


 そんな異世界の騎士さんは今俺の隣で味噌を塗られ焼かれた魚をバクバクと食べている。


 くーねのライブは見ないのか?と聞いたところ「もう飽きた。」とのこと。言っているときの顔がうんざりしていたので前世界でなにかあったのかもしれない。


「私は特に何もしてないしゃめ。結局はあいつが全部持って行ったしゃめ。」


「自信を持ちなさい。君はとても強かった。あの時現れた君は正しくみんなの希望だったよ。」


 しばらく白目の焼かれた魚を見つめあっていたニイムはまた食事を再開する。


 それに微笑み笑っていたコウヘイだが、すぐに表情を引き締める。


 どうやらここからが本題みたいだ。


「この先どうするのかミカに聞いたんだ。そしたらあの子はエイタ君が起きたらおのずと決まるって言っていた。」


「・・・そうですか。」


 くーねには魔王を倒すという目的がある。俺たちはそれについていくと決めたんだ。


 だからこの村もそう遠くないうちに出ることになるだろう。


 今回の戦いで敵がどれだけ強大なのかを知った。しかしミカの意思は変わってはいない。当然俺も。そのことをコウヘイは察したのだ。


「やはりいくんだね。君たちは。止めても無駄なんだね。」


「止められたくらいじゃ止まらないことは知っているでしょう?」


「はっはっはは、そういえばそうだったね。。。君たちのこれまでの事は少し聞いたよ。正直に言うとね、ミカには行ってほしくないんだ。せめてミカだけでも残ってほしいって、今でも思っている。」


「当然だと思います。」


 崩壊した世界でやっと再会できた娘なのだ。親として心配し、離れたくないと思うのは当たり前だろう。


「君たちは少しづつ強くなっていると思う。戦いとしても、精神的にも。きっとこれからもっと強くなっていくだろう。でも私はこうも思うんだ。強さは連鎖する、と。」


「強さは連鎖する?」


「ああ、強い力をつけるとそれに見合った力を持つものが現れる。それを倒し強くなるとさらに強い奴が現れる。そうやって戦いは連鎖していくんじゃないかと。」


 確かに、と思った。


 思い返すとあんまりその実感はない、いきなりあのでかい獣だったし。あれは力が見合ってはいない。


 しかしこの先力をつけていけば、それに見合った敵と戦うことになるだろう。というよりその敵と戦うために力をつけていくだろう。


「私はね、怖いんだよ。君たちがこの先あれ以上の敵と戦うことが。娘ともう会えなくなることが。あの子を連れて行こうとしている君たちを呪いたくなるくらい。」


「・・・・・・」


 コウヘイの気持ちはよくわかる。ミカを巻き込んで危険な目に合わせている俺たちを憎く思っているであろうことも。


 だが俺にはどうすることもできない。たとえミカを説得しようとしたとしても言うことは聞かないだろうし、そもそも俺はミカにそんなことを言いたくはない。


 これはミカの意思なのだ。俺も、くーねも、そこに介入することはできないのだ。


 ならせめて、


「約束、させてください。すべてが終わった後、必ずミカさんをもう一度生きて連れて帰ると。」


「信じられると?」


「一度果たしたものなので。ちょっと長い寄り道をするだけです。」


 あの日、学校でミカに約束したこと。必ず家まで送ると。それをもう一度やるだけのことだ。


 コウヘイはジッとエイタを見つめるが「はぁ」と詰まった息を吐きだすと立ち上がった。


 そのまま手を差し出してくる。


「どうか、娘を、ミカをお願いします。」


 エイタはその手を両手で受け取ると、


「任されました。必ず成し遂げて見せます。」


 そうしてコウヘイは離れていった。


 ほっと緊張を解し椅子に座り直す。


「お前、なかなか漢しゃめ。」


「おわっ?!」


 隣で魚を食べていたニイムがそんなこと言ってきた。話しかけられてからそこにいたことを思い出す。


「私がいたことを忘れていたしゃめ?どうでもいいけどなんかムカつくしゃめ。」


「い、いやいや忘れてたわけじゃ、、、ない!ただちょっとびっくりしただけだ。」


 ジト目でこっちを見ていたニイムだがすぐに興味を失ったように話題を変えてきた。


「・・・。まあいいしゃめ。それよりお前本気でくーねについていく気しゃめ?」


「っえ、」


「今回お前らが戦った魔王軍幹部、禍災ジュプドロンは全盛期よりだいぶ力を失った状態だったしゃめ。でなければくーねはともかくここら一帯は何もなくなっていた可能性すらあるしゃめ。」


「あれで、力を失っていた状態。。。」


 ジュプドロンの強さは絶大だった。直接戦ったわけでもないのにその圧倒的な強さに心が折れかけたのだ。それが、まだ弱いほうだったと。


「そう、そしていま魔王軍は再生されつつあるしゃめ。幹部連中も復活して徐々に力を取り戻しているからジュプドロンよりも強くなるしゃめ。くーねが打ち漏らしているのに関してはなんなら今のほうが強いしゃめ。そんなのをこれから相手していかなきゃならないしゃめ。それでも本当にくーねについていくしゃめ?今ならまだギリギリ引き返せるしゃめ。」


 ニイムの言っていることはもっともだ。正直俺にはまだ魔王軍幹部と戦えるだけの力はない。付いていっても足手まといになるだけの可能性だってある。でも、それでも。


「俺はついていくよ。そう決めたんだ。」


「そ。ならいいしゃめ。」


「あれっ?!なんかあっさり流された?!もっとこういろいろ言ってくるかと思って覚悟してたんだけど。」


「すでに覚悟は決まってるんだろしゃめ。なら私が何か言うつもりはないしゃめ。それともなにか言ってほしかったしゃめ?」


 不敵な笑みを浮かべながらこっちを見てくるニイム。どこか挑戦的にも感じる。


「いやいい。」


「あ、そうしゃめ?せっかく今お前の心を折るワードを十五個は思いついたのにしゃめ。」


 こっわ。。。なにこの子。。。今の一瞬でそんなに思いついたの?


 これ以上話してると本当に言ってきそうだったので話は終わりだと料理に手を付けていると、


「ああそうだ、エイタ、お前に稽古つけてやるしゃめ。」


「うぇ?!ニイムが?本当か!・・・っあ、でも俺今くーねに稽古つけてもらってるんだ。」


「は~やっぱりそうしゃめ。どうりでお前の核力が野生の動物みたいにお粗末なんだしゃめ。まあ心配すんなしゃめ、これまで通りくーねからも稽古つけてもらえばいいしゃめ。」


「や、野生動物、、、ま、まあ大丈夫ならいいんだけどさ。こういうのって同時にやるとよくないとかはないのか?」


「同じ分野ならそうしゃめ。でも私とくーねじゃ内容がまるっきり違うだろうから平気しゃめ。」


「内容が違う?」


「どうせあのくーねのことしゃめ。稽古とか言っても基本打ち合いしかしてないんじゃないかしゃめ?」


「え、そうだけど。違うのか?」


 くーねとの稽古を思い返してみる。ほとんど目に見えない速度で打ち出される攻撃を気合いで避けたり、なにも教えられていないままゾンビの群れに放り出されたり。。。


「ひゃー。呆れて言葉も出ないしゃめ。お前は今までどおりくーねとの稽古で打ち合いしてればいいしゃめ。私が教えるのは”核力”しゃめ。」


「!!!」


「一目見てわかるしゃめ。お前もミカも核力の使い方が全くもって終わってるしゃめ。逆によく今まで生きてこれたなってレベルしゃめ。見習いでもできていることが出来ていないしゃめ。ゼロから百でいうと一しゃめ!!そのくらいなんもできていないしゃめ!」


 やれやれと肩を竦めながらニイムが次から次へとダメだしをしてくる。


 あれ?やっぱり心折ろうとしてる?


「ぐぅ、ちゃんとくーねに教えられた通りにやってるんだけどな。」


「そう!それしゃめ!それが一番よくないしゃめ!」


「っえ?!」


「お前あれを見てよく考えてみろしゃめ。あんな奴が人に物を教えられると思うしゃめ?」


 そういってニイムは指をさした。


 その方向はくーねが今もなお続いているライブに向けられており、ステージの中央には観客に謎のキラキラを振りまきながら切れのあるダンスを踊っている少女。


 ああかわいいな。じゃなくて!


「な、あれは人類中で一番教えるのが下手な存在しゃめ。どうせお前らに教えていた時も「気合!」とか「頑張れ!」とかしか言ってないだろしゃめ。あんな唯一無二に教えられたところで意味ないしゃめ。」


「うん、確かに。」


 改めて思い返すとくーねに技術的な部分で何かを言われたことがない気がする。


 俺は深呼吸一つ。椅子を座り直し姿勢を正すとニイムに向いて、


「師匠!ご指導のほどよろしくお願いします!」


 迷うことなく師を乗り換えることにした。


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