56 腕が...!
ごめんなさい!最近忙しく更新ペースが遅くなっています。
光が晴れた先にはもう魔王軍幹部の姿はなかった。
煌めきの残留がちりちりと空間を漂いあたりに散らばる。
歪んだ色をしたここら一帯を囲んでいた結界も崩壊を初め、ぽつぽつと世界に陽の光を差し込み始め、朝がやってくる。
「おわったんだな、やっと。」
そんな温かい日差しを浴びながらしみじみと呟く、俺を抱きしめるようにくっついていたミカがふにゃ~と力を抜いて崩れ落ちた。
「こ、こわかったよ~。死ぬかと思ったよ~。」
それを見てるとこちらもどんどん気が抜けていきッ?!?!!
「っっっってえええええええぇぇぇ!!!」
「わわっ!?エイタ君!?大丈夫??!!」
今までの緊張が噓のように無くなり気が抜けてしまったことで、アドレナリンか何かによって感じていなかった傷の痛みが急に襲い掛かって来たのだ。
左腕で右肩を抑える。鼓動が早まりそのたびにチロチロと血が溢れ出した。
「そうだ!エイタ君の腕ないんだった!!どどどどうしようくーねたんちゃん!ってあれぇ?!」
エイタを何とかしようとくーねに助けを求めたミカだったが、視線を向けるとこれまた大の字となり地面に倒れているくーねの姿が。
すぴすぴと胸を上下させ呼吸していることからおそらく気絶したように眠ってしまったらしい。
「あわわわわどうしよう!!どうしよう!!エイタ君やっぱり死んじゃうの?!っあ!、、、えーっと、そこのあなた!そう君!君だよ!!エイタ君なんとかならないかな?!かな?!」
エイタが出血多量で死にかけており、頼みのくーねも気絶してしまった今ミカが頼れる存在は一人だった。
急に現れ、自分たちを助けてくれた女の子。
じーっと状況を見ていたので呼びかけたのだ。
「私しゃめ?ごめんけど私に治癒能力系の力はないしゃめ。それに欠損ともなれば、正直手に負えないしゃめ。」
「そ、そんなぁ。そこをなんとか!こう異世界の力で何とかできない?!」
「んー。そんなこと言われても、、、まあ応急処置くらいならできるしゃめ。」
「ほんと?!お願い!それでエイタ君が助かるなら!」
なぜかエイタではなくミカの全身をぐるっと観察していた少女はなんとも絶妙な表情をしながらも処置をしてくれると言ってくれた。
「言ったしゃめ?ならどうなっても文句言うなよしゃめ?」
「へ?」
そう言った少女はツカツカと近づいてくるとミカが腰に下げていたバールを手に取る。
「え、、、っと、それでなにを?」
ミカの問いかけをさらっと無視した少女はコンコンとバールで手を打ちながら構えるとエイタの右肩から先を持ち上げて、まるでプラモのバーツをはめ込むかのかのように、
「えっ、ちょっとそれって!ま、まさか!?」
嫌な予感がしたミカだったが少女はもう止まらない。
――ズブリ。
「ッッッッッあああああがががああああがあああああッッッッッッ?!?!?!!?」
腕から先が無くなってしまった断面にバールを突き刺されたことで体が暴れ、絶叫を上げビクビクと痙攣したエイタは少しすると静かになり完全に気絶してしまう。
「あーー。・・・。えーっと、ごめんね?エイタ君。」
そんなショッキングな光景を見てしまったミカは、少女が言っていた意味を理解する。それでもと自分が頼んでしまった手前文句などいえるわけもなく、、、
気絶したエイタの顔を上から覗き込み一応生きて要るっぽいのを確認したミカは、
「あ、ありがとう!これでエイタ君は大丈夫だね!さ!みんな!村に帰ろう!」
起きた後のエイタに同情しつつも見て見ぬふりをしたのだった。
~~~~
トンチンカン、トンチンカン。
ドンドンガタガタ。ガシャガシャガラララ。
威勢のいい声が響き大勢の人が忙しなく動き回っている。
そんな喧騒が聞こえうっすらと意識が覚醒した。
カンカンの日差しが空から降り注ぎ掛けられた毛布をポカポカと体を温めてくれる。
左眼の視界が白く染まっているのを感じながら”右手”を支えに起き上がる。
意識がしっかりしてきて少しずつ状況を覚えだしてきた。
(そうだ。戦いは終わったんだよな。)
そこら中から聞こえてくる活気のある声や建築音。
ここは恐らく村のどこかだろう。ふと隣を見ると、くーねが同じように毛布を掛けられて眠っていた。
壮絶な戦いだったのだ。一番の功労者であるくーねはまだ気絶するように眠っているのを見るとなおさら実感する。
俺もこんな感じで一緒に寝ていたのだろう。
周りをきょろきょろと見てみると近くには一人こちらを見ている人がいるだけで、ミカもいないようだった。
壁に寄りかかりながら顔だけでこっちを見ていた人を一瞬視界に捉えるも一旦見なかったことにして目を閉じる。
(あれ、なんか今すごい見られてた気がするんだけど。)
気のせいかな?と思い込みそーっと目を開けて確認する。すると今度は寄りかかっていた体を起こし体もこちらに向けてこっちを見ていた。
(あ、やっぱ見てる。というかこっち来てる。)
こちらに向かってくる人物。あの戦いでエイタ達を、この村を救ってくれた少女に思わず胸の鼓動が高鳴っていくのを感じた。
くーねと同じようにこの世界の存在ではないであろう彼女を。
あの時とは違い身軽な恰好(といっても長い棒や巨大な盾を持っていないだけだが)をした少女はエイタの目の前まで来ると腰を下ろし顔を近づけてくる。
「?!あの、えっと、、、なんでしょうか?」
深いアメジスト色の瞳がエイタを見つめる。視線を逸らせないくらい近いその瞳に緊張するけど、見つめあっているという感覚はない。もっと奥深くを覗かれているような感覚に陥る。
しばらくジッと見られ緊張でどうにかなりそうだったが、少女が自分から身を持ち上げたことで難を逃れた。
「ふーん。なるほどしゃめ。くーねが気にかけるわけしゃめ。」
涼しげな鈴の音のような声を鳴らしながら何かを見透かした少女が俺とくーねを交互に見ていた。
(いろいろいっぱいで全然気にしてなかったけどこの女の子は一体なんなんだ?異世界の人なんだよな?っていうかまず、、、”しゃめ”ってなんだ??)
様々な疑問が浮かんでは消えていくなか、最後に残った、それでいてシンプルな疑問がそれだった。
どうしよう。聞いていいのかな。それとも触れないほうが?と葛藤していると、
「おーーーーい!ニイムちゃーーーん!!!」
一人の少女が手を振りながらこちらに向かって走って来ていた。その傍らには犬のポニーも一緒にいる。
ミカの家につながれていたまんまだったが、よかった無事だったみたいだな。
ニイムと呼ばれてた少女がミカのほうに向くとすぐそこまで来ていたミカが「お待たせ~」と笑う。「待ってないしゃめ。寄るなしゃめ。」と抱き着こうとする勢いのミカを片手で押し流していると全く気にしないミカは、
「ん?あれ!エイタ君!!!目が覚めたんだね!!よかったぁ、死んだんじゃないかと思って心配したんだよ!」
ほっぺを押されていたミカがエイタに気づき、寄ってくる。
「霧島さん。ごめんまた心配かけちゃったみたいだな。この通りピンピンしてるからもう大丈夫だ。」
目の前まできたミカがペタペタと俺の体を確認していくと最後に”右手”を持って「うーん?」と唸ったがすぐに手を置いて立ち上がった。
「うん!これと言って悪いところはなさそうだね!あーよかった!エイタ君も大事なさそうで安心したよ。」
なんだか引っかかる反応だが、まあ今はいいや。
「霧島さんこそ、ケガとか大丈夫なのか?結構酷かった気がするけど。」
記憶が正しければ俺を担いだままジュプドロンから逃げてたり、山から転げ落ちてたりしていたはずだ。相当体にも負荷がかかっていたはず。
だが今のミカには目立った傷もなくかなり元気そうだった。さっき走っていたところを見ると健康そのもの。
「うん!ほんとは崖から落ちた時に足の骨が折れちゃったんだけどもう治っちゃったよ!凄いよねぇ異世界の力。骨折を一週間で治しちゃうなんて!」
「そうか、、、霧島さん骨折してたのか。治ってよかったな。。。。一週間?」
「まあ腕無くなったエイタ君に比べればマシだよ!骨折なんて異世界パワーなくたって普通に治っちゃうケガだしさ!」
ん?腕が無くなった?ミカがなんか言ったからそういえば違和感がと思い手を見る。しかし右手も左手もしっかりと俺の視界に収まった。欠損なんてしていない。
あれ?
どうして俺は右手があることに違和感を持っているんだ?
自分の右手をさわり確認する。
ない。
なんだろう。この異物感。
ない。何も感じない。
触っているはずなのに。それを視界に収めているはずなのに。脳もそれを認識しているはずなのに。
「感覚が、、、ない。」
ミカが悲しそうな心配した顔をする。
ああ、そうだ。俺がどうして気絶したのかを思い出した。
ジュプドロンをぶっ飛ばすために俺は自分の体の犠牲を顧みずぶっ放したんだった。
それで反動に耐えられず右腕弾け飛んだんだった。
なーんだ自業自得じゃん。ということは、
「なんで俺右腕あるんだ?」
こっちが正解だね。
「あのねエイタ君。君は戦いが終わった後に腕から大量の、それはもう海が出来ちゃうんじゃないかってくらい大量の血が出てきたんだよ。それでこのままだと死んじゃうってなってね。それでね、その、えーーっと。」
なんだか歯切れの悪いミカ。その後ろで腕を組んで様子を見ていた少女がため息をついたら前に出てきた。
「腕が無くなって死にかけたお前に丁度よくあった心核の棒をぶっ刺したしゃめ。そしたらなんと驚きその棒が手に置き換わったんだしゃめ。」
「はえ?!心核?!」
少女が衝撃の事を言ってくる。ミカが頬を書きながら「あはは~」と乾いた笑いを零したがそれよりも俺は自分の右手をグーパーグーパーと動かして確認する。確かに言われてみればなんか既視感のある感覚が、これは、、、もしかしてバールか?
ちゃんと動くことを確認し、核力を流し込むと白い炎も問題なく出現した。
感覚がないこと以外はなんもおかしいところはない。
「す、すげえ!ちゃんと核力も流せるぞ!これでまた戦える!」
「あ、あれ?!エイタ君意外とノリノリ?!もっと落ち込むとか動揺とかは?!」
「まあびっくりはしたけどさ。あの時は頭に血が上ってたといえもともと覚悟の上で無くした腕だったし。それが仮初でもこうして動く腕がまたあるなら別にいいかなって。」
勢いで立ち上がったエイタは近くにあった木を右腕で殴りつけた。
ガキンッと甲高い音が鳴り腕が突き刺さる。木から「どうして?!」という声が聞こえてきそうだ。
「うおおおおすげええ!!!金属で殴りつけたみたいだ!なんかジーーンって来たぞ!」
「エイタ君、よかったね!!っていうかよく考えたらそれ義手みたいなものだよね!いいなぁ!隻腕キャラもいいけど義手キャラも同じくらいかっこいいよね!!」
わーわーとエイタとミカが騒ぎ始める。
腕を失い起きたら心核の義手に変わっていたのになんか喜んでいる少年。
なんかウザイくらい絡んでくるし仲間の無くなった腕にテンション上がって理解できないことをなんか言っている変な少女。
こんなうるさいのにまだ起きる気のないただ寝ているだけのくーね。
「はぁ、今理解したしゃめ。お前ら全員ただのバカしゃめ。」
見ているだけで疲れそうな連中を見ながらわざわざ異世界からやって来た少女は自分はこんな連中を探し回っていたのかと、またため息を零すのだった。




