↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここがわたしの魔界です!  作者: 文字虎
2章:徒然とゆっくりと
30/33

24.これがわたしの魔神晶です



 水色に煌めき、その中で揺れ動く光を携えたビー玉にわたしはしばらく目を奪われていたが、ハッと正気に戻って慌てふためく。

 えっちょ、待って待って待って。わたしの溜めてた魔力は? 魔力が霧散しないように手に持とうとしていた魔力はどこ?


 というかこのビー玉なに!?


「え、ちょ、嘘、頑張って練り上げたわたしの魔力どこ!?」


『あらら……落ち着いてください、マキ』


 ウンディーネさんが何ともないかのように振舞っているが、これのどこが落ち着いていられようか……。

 せっかく、なんとなく魔力の扱い方分かってきたと思ったのに、これはあんまりなのではないだろうか?

 少しばかり涙目になりつつ、わたしは手を握り締める。


 落ち込んでいたわたしの所にウンディーネさんはクスクスと笑いながら、揺蕩うようにわたしの前へとやってくる。

 何笑ってるんじゃこの精霊様は。


『ふふ、やはり我々の愛し子はこうでなくては。マキの作り上げた魔力は、マキの手の中にありますよ』


「ふぇ?」


 ウンディーネさんが、わたしの手にそっと触れてゆっくりと手を開いていく。

 そこにあったビー玉をウンディーネさんがゆっくりと取り上げると、彼女はウットリとした表情でビー玉を掲げて、木陰から差す日にそれを照らす。


『嗚呼、我らが精霊の至高の美酒。伝説に伝わる魔神晶(まじんしょう)をこの目で拝めるとは……ふふ、ふふふふ……』


「う、ウンディーネさん?」


『いけませんね……えぇ、ルサールカが出てきてしまいます。あぁ、でも――いえ、ここは呑まれるわけにはいけませんもの。そうでしょう? ヴォジャノーイ……』


 語り掛けるように、ウンディーネさんは妖艶な気を纏っていくと、静かにその気を自分の中に取り込んでいく。

 しばらくするとその妖艶な気は霧散し、閉じられていた目を開け、三度瞬きをしてわたしに微笑みかける。

 まるでその姿は人を誘うセイレーンの歌のように誘惑的で、しかしながら確かな意思でもってわたしに微笑むウンディーネさん。


『ふふ、ごめんなさいねマキ。私も少しだけ貴女の魔力に中てられちゃってたみたい……』


「う、うん……? もう平気なの?」


『えぇ、心配を掛けましたね。さて、話を戻しましょうか。マキの魔力は今この珠の中……我々が魔神晶と呼んでいるものの中に封入されております』


「まじんしょう…?」


 ウンディーネさんが輝くそのビー玉をわたしに渡す。先程と何ら変わることなく揺蕩う光を放つそのビー玉をわたしはただジッと見つめる。

 ……ただの光るビー玉にしか見えないんだけど、何か違っているのかな?


『それはマキが作り出した魔力の結晶。貴女の尽きることのない魔力を宿し、そして魔力を常に生み出し続ける、まさに魔法の神髄。――簡単に言ってしまえば尽きることのない魔力の源泉であり、魔力の永久機関ですね』


「……ぅおふ」


 突拍子もなくやべえもん作ってしまい、あまりの驚きで変な声が出た。やりやがったなわたし。

 夢のエネルギー永久機関。しかもわたしの魔力を体感で少し使うだけで作れると来た。

 いやね、確かに魔力を保存しておくものってないのかなって、さっき魔力を抑えていた状態でウンディーネさんに頼もうとしていましたよ?

 でもその後すぐにそれが解決するばかりか、予想すらもつかない代物になるって誰が思うだろうか。


 お、落ち着け、落ち着くんだわたし! ウンディーネさんはさっき盛大にヨイショしながら言っていたけどもしかしたら精霊の与り知らぬところで、この魔神晶なるものが生成できるようになっているのかもしれなくて、更にはそれが大量生産できるようになっているのかもしれない!


 そう、そうなってくるとあまりにもお粗末な魔力を練り上げてしまって、わたしが落ち込んでしまわないようにウンディーネさんはフォローを入れているだけなのかもしれないよね!

 きっとそうだよね、お願いします、さっきからウンディーネさん凄いソワソワとして『あぁ……私もその揺蕩う魔力の中へと溺れていってしまいたい』とか言ってるけど気のせいだよね、そうだと言ってお願いしますホント。割とマジで、とんでもないことしでかしちゃったってこと自覚しちゃうからホントどうにかして!?


 外面は多分、真剣な表情でこれがわたしの知らない未知の物なんだなとという顔になっていることを祈っていると。

 ウンディーネさんはそんなわたしの期待を脆くも崩してくれやがりました。


『……大丈夫ですか、マキ? やはりこの膨大で精巧な魔力を練り上げてしまって顔色が悪くなっていますが……』


「ぉぁ、そ、そんなことにゃ、ないかなぁ!? う、うん大丈夫大丈夫いけるいける! まだまだマキさんは現役バリバリでピチピチの女子高校生だから! うん大丈夫だと思うよ!?」


『だ、大丈夫ならいいのですけど……現役バリバリでピチピチ……?』


 ダメですねこれ完全に顔に出てたな!? やっべえもん作り出しちゃったって顔に出てたねこれ!!


『これほどの魔力を宿し、そして生成し続ける魔神晶は魔族領(まぞくりょう)でも見たことがないですね……神に愛されし愛し子、やはりその魔力は我々程度では推し量ることなど出来ませんか』


 ほらもー外堀埋められてってるよぉ! ヤッバイもの作り上げちゃったってのが分かりやすく解説してくれちゃってるじゃん!

 やらかしアイテムを作成してしまったわたしがどうしたもんかと考え込んでいたが、ふとわたしは今何やっているのかを思い出す。


「あーえっと、で。これって水を湧き上がらせることに使えるのウンディーネさん!?」


『え? あ、えぇ、そうですね。それぐらい造作もなく出来るでしょうし、これでエリクシールやソーマと言った霊薬を作ることも容易いはずです。魔神晶はそれを行うだけの魔力を含んでおりますから……』


「お、OK決まり! そしたらこれで水汲み場みたいなの作っちゃおう!」


『魔神晶を水汲み目的で使うんですか!?』


 ちょうどいい使い道が出来たことでわたしがそれを伝えたらウンディーネさんに滅茶苦茶驚かれた。

 え、なんでだ……。



・・・



「おかえりなさいませ、マキ様……ほう、また便利なものを用意しましたね?」


「ただいま、シマさん。これ水汲み場に使えないですか?」


「ふむ、それであればウォフルとマキ様の家の間に水汲み場として置いておきましょうか。これでわざわざ遠方の川まで水を汲みに行く心配はなくなりましたね」


『あぁぁ……せっかくの魔神晶がそんな……』


 笑顔でシマさんは承諾をして、また異空間に手を突っ込んだかと思えば、オシャレな水受けのオブジェを取り出す。

 レンガで作られてるけどそんな片手でヒョイヒョイ持てるもんなのシマさんや?


 少し顔色の悪そうなウンディーネさんは放っておかれ、わたしはシマさんに先導されて食卓へと到着する。

 そこには今朝方シマさんが伝えてくれたミートパイが置いてあった。

 おぉぉ……ちょうどお腹が空いてたから助かったよ……。


「即席ではありますが、先ほどの湧き水の石から手に入った水を使った、紅茶となっております。是非ご賞味ください」


「わぁ……凄い良い香りがする……」


「えぇ、マキ様が作ってくれた魔神晶ですから、水も最高級。作り甲斐がありましたね。そしたら私はこの水汲み場を設置してきます」


 ニコニコと笑顔になっていたシマさんの顔でわたしもつられて笑顔になる。

 もう魔神晶を作ってしまったってことがバレてはいるが、気にせずわたしはミートパイを食べることにするのであった。


 おぉ……ウサギの肉って結構いけるね……でもあの可愛いのが屠殺されるのは見たくない。

 笑顔の裏ではそんな想像したくもないウサギの末路を頭の隅に追いやりつつ、わたしは家の中を見てまわる。


 家の中で給仕や洗い物を担当していたノーム人形を見て和みつつ、わたしはひと時の平和を楽しむ。

 4体ぐらいで階段梯子を支え、2体がせっせと洗濯物を干していたり。

 洗い物をする木造りのノーム人形がせっせと皿を洗っては隣にいたノーム人形に渡し、渡された皿を拭いたり。

 私が飲んでいた紅茶がなくなると、執事服っぽい服を着た狼頭のノーム人形君がせっせと紅茶を注いでくれたりと、至れる尽くせりである。

 時折ノーム人形がこけたりと見ていて飽きず、とても楽しいひと時を味わう。


 そんな優雅な一時を味わっていたわけではあるが、ふとわたしはここに来た当初、自分が何を言ったのかを思い出す。

 あれ、わたし自分で料理とかしたいとか言ったよね?


 ――これじゃわたし、ニート生活(ダメ人間)まっしぐらなんじゃ?


「え、こ(・)れ(・)マ(・)ズ(・)イ(・)のでは?」


『!?』


 ガシャン、バサバサ、ゴト、ドタンバタン、ボト、バシャァ。


「ギャインッ!?」


 ミートパイを一切れ食べ終わったわたしは、一呼吸置いた後、ハッとなりながら言うと。

 皿洗いの人形がガチャンと皿を落とし。

 梯子を支えていた人形が驚きのあまり梯子を揺らし、上に載っていた人形は洗濯物ごと下へと落ち。

 執事服っぽい狼頭のノーム人形君は驚愕の顔で抱えていたポットをゴトリと落として辺りに紅茶をまき散らし。


 ちょうど机の下で転寝をしていたチビちゃんに温まっていた紅茶が降り注がれてチビちゃんの悲痛な鳴き声が聞こえる。


「え? ぎゃー!? 大惨事ぃ!?」


 慌てふためくノーム人形達や、コック姿のノーム人形君達が膝から崩れ落ちる光景、そして何より連鎖的に起きた惨事を見て私は悲鳴を上げる。


 待って待って何事、わたしなんかまたした!?


 冷たい濡れ布巾ですぐにチビちゃんの背中に落ちた紅茶を拭って冷ましつつ、わたしは何を言ったのかを思い出す。

 ……あ、わたしマ(・)ズ(・)イ(・)って言ったような気がする。


「あああ、違うんだよ!? このミートパイのこと言ったんじゃないの! これはおいしいから安心してね!? 大丈夫みんなが作ってくれたんだよね!? いやーすごい美味しいなぁ!?」


「……不味かったですか。マキ様の口に合わないとは思わず……申し訳ありません」


 イイヤアアアアアアア! 一番聞かれたくない人来たああああああ!?


「ち、ちが、違うのシマさん!? これは別に不味いんじゃなくて、ただこう、自分の思考に対してマズイって言おうとしただけで――」


「かくなる上は私の命でもって償うしか……!」


「ってちょっとぉ!? やめてやめて!? 心臓の辺りに杭突き立てるのやめてちょっとぉ!?」


 胸に杭を突き立てるシマさんに続き、ノーム人形君達もどこから取り出したのか、彼らのサイズに合った小刀を腹に突き立てる。

 切腹する気満々だし自害するつもりも満々ですね君たち!?


 などと、わたしが必死で自害をやめさせようとしていると。


「う……うぅ……」


「あ……」


 ウサギの子が頭に手を抑えながら静かに起き上がるのであった。




大変お待たせしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。