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ここがわたしの魔界です!  作者: 文字虎
2章:徒然とゆっくりと
23/33

18.これはいわゆる誘拐では?



『――……うしよ……』


「ん……?」


 意識が戻ったわたしは、誰かのおろおろとした声によって目を覚ます。


『おあぁぁ、やっべえやべえってこれ。いや待って、精霊たちも何してくれちゃってんの。我輩もまさか、こんなことになるだなんて聞いてないんだが!』

『んーまあしょうがないよねぇ。神様の命令には、僕ら逆らえないし』


『ああああ……! これ完全にやらかしたやつ! 絶対碌な結果にならないやつではないか! こんなことならドッキリとばかりに、おもむろに気配を掴むんじゃなかった!』

『うわーバカじゃん。イアスドライグ超バカじゃーん。神様に何しようとしてんの』


「いきなりどういう状況?」


 気付けば花が咲き誇る草原の上で寝ており、起き抜けに見た光景は、先程、わたしを掴んできた青いドラゴンがオロオロとしながら、近くにいたシルフ君と話している姿だった。

 ――そうだった。確かわたしは、このドラゴンに攫われたんだ。


『ぬっ! ゴホンゲホン……ふははは! ようやく目覚めたか! 神に愛されしいとし――ごっ!?』

「……ひぇえ。ドラゴンだ」


 わたしが起き上がったのを確認するとドラゴンは後ろ足で立ち上がり、腕を組んでわたしを見下ろす。

 2回目だから流石に気絶はしないけど、やっぱりすごい迫力だ。


『愛し子ちゃんおはよー』

「あ、シルフ君」

『ごめんねぇ、いきなりこんなところで。このおバカさんなドラゴン君が勝手にやったことだから、猫にかまれたと思って流してくれるとうれs、あーれーおやめになってー』

「シルフ君!?」


 弁解とばかりにドラゴンの近くにいたシルフ君がすまなそうに謝罪をしている最中、いきなりドラゴンが動き出し、シルフ君を掴んでわたしに背を向ける。

 え、いきなりなに、まさかシルフ君を食べちゃうの。


『もー。いきなりなにすんだよー。ちょっとどうかと思うよーこのぞんざいな扱い。毎度いい様に僕を使うんだからー』

『ど、どういうことだ! い、愛し子ってのはあんな、あんな……!』

『うぅわ、拗らせた顔してるよ、このドラゴン。皆大好き愛し子ちゃんを見ただけでこれだー。鼻息荒いし、臭いんですけどー』


「えーっと?」


 後ろを向いて何やらシルフ君と相談をし始めるドラゴン。話が抽象的すぎていまいち理解できないけれども、シルフ君はそんな扱い受けていて大丈夫なのだろうか?


『っ。お、落ち着け。大丈夫だ、我輩はイアスドライグ。イアスブリードのドラゴンを統べる竜王だ。平常心、平常心……ふーっ、ふーっ!』

『鼻の穴広げて鼻息荒くなってて、目もかっ開いてるんじゃ平常心も何もないと思うけどー?』


 なにやら興奮しているらしいドラゴンはゆっくりとわたしの方を向くが、その顔は地面を向いたまま、わたしの方を見ようとしない。

 えぇ……これどういう状況?

 そのまま時が流れるかのように思えたけれど、ドラゴンはバッと顔を上げると、声高らかにわたしを指差し笑い始めた。


『ふ、ふはは! ま、ままままさか愛し子を掴むことになるとは思わなかったがな! 我輩が神を釣るためのエサにしてくれるわ! あ、あわ、あわよくばお前を我が、こ、コレク……よ、嫁……はっ!? こ、これくしょんにできればわがはいこそが神となるにふさわしいはずだ!』

「えーっと、大丈夫です? 気分が悪いとか?」

『番になってください』


『即堕ちかよ』

「Oh……」


 慌ててまくし立てたかと思えば、わたしが声を掛けた途端、全身を投げ打ち結婚してほしいと土下座をかますドラゴン。

 待って、状況把握が追いつかない。おかしいな、今日はなんかこういうの多くない?落ち着けわたし。

 きっとこのドラゴンは番ではなくうがいって言ったんだ。つまりはそう、わたしは液体に間違えられているから、今からきっとドラゴンの口の中に放り込まれて、喉辺りでごろごろされた上でペッて吐き出されるんだ。

 なんと非道だ、非道で極悪なドラゴンさんに違いない。そうと分かったならば即座にわたしは液体じゃないよと弁解を入れなくてはいけない。なんかもうだめな気がする。


「あー……えっと、わたしは液体ではないのでうがいは」

『つがいになってください一生大切にします』


 無慈悲にも聞き間違いは否定され、さらに熱烈結婚アピールをかましてくるドラゴン。


「あぁ……聞き間違いではなかったのね……」

『だいぶ無理な聞き間違いだと思うなぁ、愛し子ちゃん』


 シルフ君からもやんわりとツッコミが入り、わたしの命の心配は薄らいだが、同時にドラゴンルートなるものが開拓されてしまった。

 いやいや、なんだそれ。開幕親密度MAXみたいになってるけど、どういうこと。これ以上親密度上がるの、ここが出発地点なの、結婚だけにってやかましいわ。

 いけない、落ち着けわたし。ほら、リップサービスだよリップサービス。なーんだそういうお世辞かー。そしたらこっちもエレガントに返さなきゃね、ほらドラマみたいにサラっとして回避する感じ?


「えっと、ごめんなさい、わたし軽い人ってのはちょっとどうかと」

『我輩の至宝を全て捧げよう』

「あーえっとその、こういうのってのは金銭とかじゃなくー……」

『ならば我輩の海のように深き愛を貴女に捧げよう。空の色のような美しい貴女に相応しい至高の愛を捧げよう』

「うっ……あ、あーらごめん遊ばせ? わたくしがその程度の愛くらいでは靡き……」

『常に愛を囁き、この世の全ての寵愛をも霞むような心で以て貴女を愛すると誓おう。この身を、そしてこの世界の全てを貴女に捧げると誓おう』


「……シルフ君」

『思ったより本気で僕も引くわー』


 どうしよう、全く引く気がないぞこのドラゴンさん。おかしいなぁ、出会ってすぐでこんなに親密度爆上がりしたの? 大体1分1スチルぐらいの勢いじゃないかなこれ。そんなカット入るような場面あった? わたしが気絶してただけのところがスチルとかどうよ?

 これをどうやって対処しようかわたしは悩んでいると、ドラゴンさんはわたしを見据えて、どこか納得のいった表情を見せる。


『……そうか。やはりあの神さんを倒さなければ、貴女は我が手には入らないということか』

「え? なんでそんなことに?」

『良かろう。ならば我輩の全霊でもって神を倒さんとここに誓おうぞ』

「ちょ、ちょっと? ドラゴンさん落ち着いて?」

『ふふ、案ずるな。このイアスドライグ、神の名に恥じぬ存在だと、この身でもって証明しようではないか』


「どうしよう会話が通じない」

『僕、昔こんな感じのおバカな奴見たことあるよ』


 勝手にイアスドライグさんは、シマさんに対して闘争心を燃え上がらせており、こちらの話を全く聞かない。んーどうしたもんか。


『まずはそうさな、貴女を隠していたあの小屋を叩き潰してくれようではないか! そうすれば貴女を縛る枷を取ることも出来よう!』

「ちょ、ちょっといい加減に……!」


「戯言を」


『ぬぅ!』

「うわ!?」


 わたしが待ったをかけようとした瞬間、イアスドライグさんはわたしを庇うように片手でわたしを懐に寄せる。それと同時に、まるで金属がぶつかる様な音が頭上で響く。

 よく見るとそこにいたのは。


「――御無事ですか? マキ様」


 にっこりと笑顔で、ダガーをイアスドライグさんに向けた、シマさんがいたのであった。

 いや、ドラゴンの爪と良い勝負してるダガーってどういうことなのシマさんや……。


 

更新止まってしまって申し訳ないです……。

ちょこちょこ折を見て再開して行きます!

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