第88話 灰燼の勝利、二つの太陽
第88話 灰燼の勝利、二つの太陽
帝政歴345年6月19日、午前4時36分。
帝国帝都、北方最終防衛線。
夜が明けても、帝都の北には黒い雲が残っていた。
前日の夕刻、帝国空軍が投下した核融合爆弾によって生じた巨大な煙の柱は、すでに形を失っていた。しかし、空気中に漂う粉塵と焦げた臭気は消えず、風が吹くたびに灰色の砂が道路を転がっていった。
帝都北方の防衛線は、ほとんど原形を留めていなかった。
砲兵陣地の一部は崩壊し、土嚢と鉄筋コンクリートで補強された防御施設も、爆風によって損傷している。戦車や歩兵戦闘車の中には、横転したまま動かせなくなったものもあった。
帝国軍が長い時間をかけて構築した最終防衛線は、異界軍の攻撃だけでなく、自国の戦略兵器によっても破壊されていた。
「第三防御区画、応答しろ!」
無線機を握った通信兵が、何度も呼びかけていた。
『……こちら第三……聞こえるか……』
「聞こえる! 状況を報告しろ!」
『陣地が……ほとんど残っていません。負傷者多数。砲兵との通信も途絶しています』
通信兵は唇を噛んだ。
「了解した。救護部隊を回す。現在位置を維持できるか?」
短い沈黙の後、返答があった。
『……敵が来なければ、何とか』
しかし、その願いは叶わなかった。
午前5時12分。
帝都北方、旧防衛線。
遠くの煙の向こうから、異界軍の先鋒が姿を現した。
大型生物の数は前日より少なかったが、それでも歩兵を中心とする集団が帝都へ向かって進んでいた。
《ヘリオス》による攻撃は、異界軍の後方補給部隊へ甚大な損害を与えたと推定されていた。
しかし、すべての敵が壊滅したわけではない。
すでに帝都近郊まで進出していた部隊は、なお戦闘能力を保持していた。
「敵影確認!」
帝国軍の観測兵が叫んだ。
「北方道路、複数!」
指揮官が双眼鏡を覗いた。
煙の中を、異界軍の兵士たちが進んでいる。
彼らは、破壊された道路を迂回しながら、帝都へ向かっていた。
「……まだ来るのか」
指揮官は呟いた。
隣にいた若い兵士が、震える声で尋ねた。
「大尉……あの爆弾でも止まらなかったんですか?」
指揮官は答えなかった。
ただ、ゆっくりと双眼鏡を下ろした。
「……全員、戦闘配置」
兵士たちが動き始める。
「残っている弾薬を確認しろ。負傷者は後方へ。まだ使える車両は遮蔽物に回せ」
そして、指揮官は無線機を握った。
「こちら帝都北方第三防御区画。異界軍の攻勢を確認。防衛戦闘を再開する」
数秒後、帝都の北で再び銃声が響き始めた。
午前7時48分。
帝国軍最高司令部、地下作戦指揮所。
地下深くに設けられた作戦室では、帝国軍の将官と参謀たちが大型地図を囲んでいた。
壁面には、帝都北方の戦況が表示されている。
《ヘリオス》による攻撃後、異界軍の進撃速度は一時的に低下していた。
しかし、敵の先鋒部隊は依然として帝都近郊に残り、複数の地点で帝国軍との戦闘を続けていた。
「北方防衛線の損害は?」
参謀総長が尋ねた。
作戦参謀が資料を確認した。
「第三、第四防御区画が大破。第二防御区画も一部機能を喪失しています。砲兵部隊の損害は現在集計中です」
「《ヘリオス》の効果は?」
「異界軍の後方補給集積地に大規模な損害を与えたと推定されます。ただし、敵の主力がどの程度の被害を受けたかは不明です」
参謀総長は眉を寄せた。
「……それで、敵はまだ攻めてきているのか」
「はい」
作戦参謀は頷いた。
「ただし、進撃速度は明らかに低下しています」
別の参謀が地図を指した。
「敵の前線部隊は、昨日までと比べて行動が鈍っています。補給線の損傷が影響している可能性があります」
参謀総長は地図を見つめた。
「……可能性、か」
その言葉には、慎重さが滲んでいた。
異界軍の補給体系も、指揮系統も、まだ十分には分かっていない。
ただ、敵が以前ほどの速度で進軍していないことだけは確かだった。
午前10時23分。
帝都北方、旧防衛線。
戦闘は続いていた。
帝国軍の歩兵たちは、崩れた防御施設の間から応戦していた。
異界軍の兵士たちは、道路沿いに前進しながら、帝都への侵入を試みていた。
しかし、やがて異変が起きた。
「……敵の動きが止まった?」
観測兵が呟いた。
双眼鏡の向こうで、異界軍の先鋒部隊が足を止めていた。
彼らは何かを確認するように後方を振り返り、しばらくその場に留まっていた。
やがて、部隊の一部が後退を始めた。
「……後退している?」
観測兵は無線機を握った。
「こちら第三防御区画。敵の一部が後退を開始!」
指揮官が顔を上げた。
「後退?」
「はい! 北方道路の敵部隊が、進路を反転しています!」
指揮官は双眼鏡を覗いた。
確かに、異界軍の兵士たちが帝都から離れていく。
大型生物も、ゆっくりと方向を変えていた。
「……どういうことだ?」
指揮官は呟いた。
異界軍は、帝都を目前にして進撃を停止した。
そして、徐々に後退を始めていた。
午前11時56分。
帝国軍最高司令部。
「敵が撤退を開始した?」
参謀総長が聞き返した。
通信担当者が頷いた。
「はい。複数の防御区画から同様の報告が入っています」
作戦参謀が地図を確認した。
「北方道路、東側丘陵、旧工業地区。いずれも異界軍の後退を確認しています」
参謀総長は、しばらく黙っていた。
「……《ヘリオス》の効果か?」
「可能性はあります」
作戦参謀が答えた。
「補給部隊への攻撃によって、前線の維持が困難になったのかもしれません」
別の参謀が口を開いた。
「あるいは、指揮系統に問題が生じた可能性もあります」
参謀総長は頷いた。
「……いずれにせよ、敵が後退していることは事実だ」
その時、作戦室の奥から一人の将官が歩み出た。
帝国軍作戦局のカール・フォン・シュタインベルク少将だった。
彼は地図を見つめながら、静かに言った。
「……今こそ、反撃の機会ではありませんか」
参謀総長が顔を向けた。
「反撃?」
「はい」
シュタインベルク少将は、帝都北方の地図を指した。
「異界軍が後退している今、帝国軍は失われた領土を奪還するべきです」
作戦参謀が眉を寄せた。
「しかし、我が軍の損害も甚大です」
「承知しています」
シュタインベルクは頷いた。
「ですが、ここで敵を追撃しなければ、再び帝都へ進撃してくる可能性があります」
参謀総長は、しばらく考えた。
「……具体的な作戦案は?」
シュタインベルク少将は、用意していた資料を机に置いた。
「帝国領土奪還作戦」
そして、資料の表紙を示した。
作戦名。
失われた北部領土を段階的に奪還し、異界軍の補給線と前線部隊を分断する作戦だった。
作戦参謀が資料をめくった。
「第一段階は、帝都北方の主要道路と集落の確保」
「第二段階は、異界軍の残存部隊の排除」
「第三段階は、グラーフェン方面への進出」
シュタインベルク少将は頷いた。
「その通りです」
参謀総長は地図を見つめた。
「……実施可能な部隊は?」
「再編中の北部方面軍を中心に、機動部隊と偵察部隊を投入します」
そして、少将は一枚の報告書を取り出した。
「それと、興味深い部隊があります」
参謀総長が顔を上げた。
「何だ?」
「第三臨時歩兵集成隊所属、独立行動分隊」
シュタインベルク少将は報告書を読み上げた。
「通称、〈不死身の分隊〉」
午後1時17分。
帝都北方、第三臨時歩兵集成隊本部。
レイブンたちは、ようやく帝都へ帰還していた。
ハルテンフェルト森林地帯からの移動は容易ではなかった。
《ヘリオス》による爆風で道路の一部が損傷し、倒木や放棄車両が進路を塞いでいた。
それでも、〈不死身の分隊〉は共和国軍の偵察小隊を伴い、全員で帰還することができた。
共和国軍の兵士たちは、帝国軍の管理下に置かれ、負傷者は医療施設へ搬送された。
マルコフ少尉は、レイブンへ深く頭を下げた。
「……助かった」
レイブンは首を横に振った。
「俺たちも、あなたたちの情報に助けられました」
マルコフは少し笑った。
「……また会えるといいな」
レイブンも微笑んだ。
「……そうですね」
マルコフは、共和国軍の兵士たちとともに連れていかれた。
レイブンは、その背中を見送った。
その時、ガイルが声を掛けた。
「……レイブン」
「何?」
「俺たち、次はどうなるんだろうな」
レイブンは、少し考えた。
「……分からない」
ガイルは苦笑した。
「最近、そればっかだな」
レイブンも小さく笑った。
「……そうだね」
その時、通信兵が二人へ近づいてきた。
「クロウ、ベッカー!」
二人は振り返った。
「はい!」
「司令部から呼び出しだ。直ちに作戦室へ来い!」
レイブンはガイルを見た。
「……何だろう」
ガイルは肩をすくめた。
「さあな。とりあえず行こうぜ」
午後1時42分。
第三臨時歩兵集成隊、作戦室。
レイブンとガイルが入室すると、エルンスト・フォーゲル少尉が待っていた。
その隣には、帝国軍作戦局から派遣された参謀将校が立っている。
「クロウ、ベッカー。よく戻った」
フォーゲル少尉が言った。
「ありがとうございます」
レイブンが答えた。
参謀将校は、机の上に地図を広げた。
「早速だが、任務を与える」
レイブンは姿勢を正した。
「……任務ですか?」
「そうだ」
参謀将校は地図の北方を指した。
「異界軍は帝都北方から撤退を開始した。我が軍は、これを好機と判断している」
ガイルが顔を上げた。
「……反撃するんですか?」
「その通りだ」
参謀将校は頷いた。
「帝国領土奪還作戦を実施する」
レイブンは地図を見つめた。
北部の都市。
農村。
道路。
そして、かつて自分たちが戦ったグラーフェン。
その多くが、異界軍の占領地域となっていた。
「……俺たちの任務は?」
レイブンが尋ねた。
参謀将校は地図の一点を指した。
「ハルテンフェルト森林地帯を再調査し、異界軍の撤退経路を確認する」
レイブンは少し驚いた。
「……あの森ですか?」
「そうだ」
参謀将校は報告書を示した。
「お前たちが発見した通信装置は、異界軍の指揮系統に関係している可能性がある」
ガイルが眉を寄せた。
「……また、あそこに行くんですか?」
「必要であれば、そうなる」
参謀将校は続けた。
「ただし、今回は偵察だけではない。後続の奪還部隊が進出するため、敵の残存戦力と通行可能な経路を確認する」
レイブンは頷いた。
「……了解しました」
参謀将校は、さらに資料を差し出した。
「詳細は、この命令書に記載してある。出発は明朝」
レイブンは命令書を受け取った。
その表紙には、帝国軍の印章とともに作戦名が記されていた。
《リコンキスタ》。
帝国領土奪還作戦。
レイブンは、その文字を見つめた。
帝都を守る戦いから、失われた領土を取り戻す戦いへ。
戦争は、また新しい段階へ進もうとしていた。
同日午後3時28分。
連邦共和国西部、共和国軍西部方面軍司令部。
エリシア・L・ヴォルハラム中尉は、作戦室の中央に立っていた。
机の上には、共和国西部海岸の地図が広げられている。
そこには、異界軍の上陸地点と、共和国軍の防衛線が記されていた。
そして、地図の一角には、赤い文字で新たな作戦名が書き込まれていた。
《メデューサー》。
共和国軍が保有する大容量核融合爆薬。
公称規模、500トン級。
その使用が、共和国軍最高司令部によって検討されていた。
「……私は反対です」
エリシアは、はっきりと言った。
作戦室にいた将校たちが、彼女へ視線を向けた。
上席の将官が眉を寄せた。
「ヴォルハラム中尉。理由を述べろ」
エリシアは地図を指した。
「投下予定地点の周辺には、まだ避難が完了していない集落があります」
「避難命令は出している」
「命令を出したことと、避難が完了したことは違います」
将官の表情が険しくなった。
エリシアは続けた。
「現地部隊からの報告では、海岸沿いの道路が一部遮断されています。避難車両の移動も遅れています」
「それは承知している」
「でしたら、投下を延期するべきです」
作戦室に沈黙が広がった。
別の将校が口を開いた。
「中尉。異界軍の進撃を止めなければ、さらに多くの民間人が危険に晒される」
「分かっています」
エリシアは答えた。
「ですが、避難が完了していない地域へ大容量核融合爆薬を投下すれば、守るべき国民まで巻き込む可能性があります」
将官は机を指で叩いた。
「では、代案は?」
「海岸沿いの防衛部隊を後退させ、民間人の避難を優先した上で、敵の進撃経路を再評価するべきです」
「その間に敵が内陸へ進んだらどうする?」
エリシアは、少しだけ言葉に詰まった。
だが、すぐに答えた。
「……それでも、民間人を犠牲にする前提で作戦を進めることには反対です」
将官は、しばらく彼女を見つめていた。
やがて、低い声で言った。
「……中尉。君の意見は記録する」
エリシアは頷いた。
「ありがとうございます」
しかし、将官は続けた。
「だが、作戦は実施する」
エリシアは息を呑んだ。
「……閣下」
「決定事項だ」
将官は、はっきりと言った。
「これ以上の異議は認めない」
エリシアは、拳を握りしめた。
それでも、彼女は黙らなかった。
「……私は、最後まで反対します」
作戦室の空気が凍りついた。
午後4時52分。
連邦共和国西部海岸、戦略攻撃目標地域。
曇天の下、共和国軍の航空機が海岸線へ接近していた。
機内では、搭乗員たちが緊張した表情で計器を確認している。
彼らに与えられた命令は、異界軍の集結地点へ《メデューサー》を投下することだった。
地上では、異界軍の部隊が海岸沿いに集結していた。
大型生物。
輸送部隊。
そして、未知の兵器を携えた兵士たち。
共和国軍は、これらの部隊を一度に排除することを目的としていた。
航空機の指揮官が通信機を握った。
「……投下命令を確認」
搭乗員が答えた。
「了解」
短い沈黙。
そして、命令が下された。
「投下」
機体から、大型の爆弾が切り離された。
《メデューサー》。
共和国軍が保有する大容量核融合爆薬。
その兵器は、海岸線へ向かって落下していった。
やがて――。
西部海岸に、巨大な閃光が走った。
海面が白く照らされ、巨大な火球が立ち上がる。
爆発によって巻き上げられた水と土砂が空へ噴き上がり、衝撃波が海岸沿いを駆け抜けた。
周辺の建物が揺れ、窓ガラスが砕け散る。
共和国軍の観測部隊は、その光景を遠方から確認していた。
「……命中」
観測兵が呟いた。
しかし、誰も歓声を上げなかった。
彼らの目の前で、海岸線の一部が巨大な爆発に呑み込まれていた。
午後5時31分。
共和国軍西部方面軍司令部。
エリシアは、作戦室の窓から遠くの空を見つめていた。
西の方角に、巨大な煙の柱が立ち上っている。
《メデューサー》が投下されたのだ。
彼女は、しばらく動かなかった。
その背後から、軍靴の音が近づいてきた。
「エリシア・L・ヴォルハラム中尉」
振り返ると、憲兵が二名立っていた。
「……何でしょうか」
憲兵の一人が書類を差し出した。
「軍司令部より命令です」
エリシアは書類を受け取った。
そこには、彼女に対する処分が記されていた。
軍命令への反抗および指揮系統の秩序を乱した行為。
そして、階級の変更。
中尉から少尉への降格。
エリシアは、静かに書類を見つめた。
「……そうですか」
憲兵は続けた。
「本日付で、貴官を少尉へ降格する。さらに、西部方面軍前線部隊への転属を命ずる」
エリシアは顔を上げた。
「……前線へ?」
「そうです」
憲兵は頷いた。
「異界軍との交戦地域へ配置されます」
エリシアは、しばらく黙っていた。
彼女は軍人だった。
命令に従うことの重要性も、指揮系統を維持する必要性も理解している。
しかし、今回の作戦に関しては、どうしても納得できなかった。
避難が完了していない地域へ、核融合爆薬を投下する。
その判断を、何の疑問もなく受け入れることはできなかった。
「……了解しました」
エリシアは静かに答えた。
憲兵が確認した。
「異議はありませんか?」
エリシアは、少しだけ目を伏せた。
そして、はっきりと言った。
「……処分には従います」
憲兵は頷いた。
しかし、エリシアは続けた。
「ですが、作戦への反対意見は撤回しません」
憲兵は、一瞬だけ彼女を見つめた。
やがて、何も言わずに敬礼した。
エリシアも敬礼を返した。
憲兵たちが去った後、彼女は再び窓の外を見た。
西の空には、まだ煙が立ち上っている。
エリシアは、静かに呟いた。
「……これが、国を守るということなの?」
答える者はいなかった。
午後8時14分。
帝都北方、第三臨時歩兵集成隊宿営地。
レイブンは、支給された命令書を見つめていた。
明朝から始まる《リコンキスタ》作戦。
異界軍が撤退を開始した今、帝国軍は失われた領土を奪還しようとしている。
しかし、レイブンには一つの疑問が残っていた。
なぜ、異界軍は撤退したのか。
《ヘリオス》による補給部隊への攻撃が原因なのか。
それとも、ハルテンフェルト森林地帯で破壊した通信装置が関係しているのか。
あるいは、まったく別の理由があるのか。
今は分からなかった。
「……レイブン」
ガイルが声を掛けた。
「何?」
「明日、また北へ行くんだろ?」
「うん」
「……今度は、取り戻すために」
レイブンは頷いた。
「そうだね」
ガイルは少し笑った。
「……不死身の分隊、忙しいな」
レイブンも微笑んだ。
「……本当にね」
しかし、すぐに表情を引き締めた。
「……ガイル」
「何だ?」
「俺たち、今度こそ、誰も置いていかずに帰ろう」
ガイルは、少しだけ黙っていた。
そして、力強く頷いた。
「ああ。約束だ」
レイブンは命令書を閉じた。
帝都の夜空には、まだ《ヘリオス》の残した煙が漂っていた。
遠く離れた共和国西部では、《メデューサー》による爆発の煙が海岸線を覆っている。
二つの国家。
二つの戦略兵器。
そして、二人の若い軍人。
レイブン・S・クロウは、帝国領土奪還作戦へ向かうことになった。
エリシア・L・ヴォルハラムは、作戦への反対を貫いた結果、少尉へ降格され、異界軍との前線へ送られることになった。
互いの存在を知りながら、互いの状況を知らない二人。
その運命は、異界軍の侵攻によって、再び大きく動き始めていた。
帝国は、失われた領土を取り戻そうとしていた。
共和国は、異界軍の進撃を止めようとしていた。
しかし、誰もまだ知らなかった。
異界軍が撤退した理由は、単なる敗北ではなかったことを。
そして、この戦争が、まだ始まったばかりであることを。




