↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒鴉年代記 ~戦火を超えて、受け継がれる意志~  作者: @12
第一部:幼年期編 第二章 帝国に迫る戦雲
PR
23/250

第23話 帰還者の傷跡

第23話 帰還者の傷跡


 帝政歴三三五年、六月十三日。

 午前六時二十一分。

 帝国中央部、クロウ家別邸。

 朝方まで降り続いていた雨が止み、屋敷を取り囲む森には薄い霧が漂っていた。庭園の芝生は濡れ、石畳の目地には水が残っている。

 ヴァルター・A・クロウ少佐は、寝室の窓辺に立っていた。

 左手でカーテンを開き、曇った空を眺める。

 右袖は肩の下で丁寧に留められていた。

 彼は右腕を失ってから、以前よりも身体の均衡を意識するようになった。歩く時、椅子から立ち上がる時、階段を下りる時。何気ない動作の一つひとつに、以前とは異なる注意が必要だった。

 今朝も、失われた右腕に鈍い痛みを感じていた。

 実際には存在しないはずの指先が、強く握り締められているような感覚。

 その不快な痛みは、時折、眠りを妨げることもあった。

「……また痛みますか?」

 背後からセレナの声が聞こえた。

 ヴァルターは振り返った。

 妻は寝衣の上に薄い上着を羽織り、心配そうに彼を見つめていた。

「少しな。昨夜よりは落ち着いている」

「医師から処方された薬は?」

「必要な時に使っている。今朝は、もう少し様子を見るつもりだ」

 セレナは夫のそばへ歩み寄った。

「痛みを我慢することが、強さではありませんよ」

 ヴァルターは苦笑した。

「分かっている」

「本当に?」

「……努力はしている」

 その返答に、セレナは小さく笑った。

 ヴァルターも微笑んだ。

 窓の外では、雨上がりの風が木々の葉を揺らしている。

「来週の検査で、何か分かるといいですね」

「ああ」

 ヴァルターは頷いた。

「ただ、結果がどうであっても、今できることを続けるしかない」

 セレナは夫の左手を握った。

「それなら、私も一緒に考えます」

 ヴァルターは妻を見つめた。

 そして、静かに微笑んだ。

「……ありがとう」

 午前七時十二分。

 クロウ家別邸、食堂。

 朝食の席では、レイブンがパンを小さくちぎりながら、父の顔を見つめていた。

 ルナは隣で、温かいスープを飲んでいる。

「……父さん」

「何だ?」

「……今日は、何するの?」

 ヴァルターは少し考えた。

「午前中は書類の整理だな。午後は、少し庭を歩こうと思っている」

「僕も行っていい?」

「ああ。もちろんだ」

 レイブンは嬉しそうに笑った。

 ルナも顔を上げた。

「……ルナも!」

 ヴァルターは笑った。

「ルナも一緒だ」

 セレナは微笑んだ。

「ただし、雨上がりですから、滑らないように気をつけてくださいね」

「うん!」

 レイブンは頷いた。

 ヴァルターは息子の表情を見つめた。

 避難生活が始まってから、レイブンは以前よりも父のそばにいる時間が増えていた。

 慣れない屋敷での生活。

 故郷から離れた不安。

 そして、国境情勢への漠然とした恐怖。

 少年なりに、さまざまなことを感じているのだろう。

 ヴァルターは、できる限り家族と過ごす時間を大切にしようと思っていた。

 午前八時三十八分。

 帝国北部、ヴァイスベルク山岳地帯第三監視所。

 カール・ヴェーゲナー軍曹は、夜間勤務の報告書を確認していた。

 前日の雨によって山岳道路の一部が通行困難になっていたが、工兵隊による復旧作業は進んでいた。

 監視所への補給も、代替経路を利用して維持されている。

 オットー・ライナー上等兵が、双眼鏡を下ろした。

「軍曹、共和国側道路で車両二両を確認しました」

「移動方向は?」

「北東です。こちらへ接近する様子はありません」

「分かった。記録に残しておけ」

 ライナーは頷いた。

 しばらくして、彼は小さく呟いた。

「……静かですね」

 ヴェーゲナーは双眼鏡を構えた。

「静かな方がいい」

「……そうですね」

 ライナーは頷いた。

 国境の向こうでは、共和国軍の兵士たちが監視任務を続けている。

 互いに警戒していることは確かだった。

 しかし、今日も銃声は聞こえなかった。

 ヴェーゲナーは静かに息を吐いた。

 戦争が始まっていないという事実が、どれほど貴重なものなのか。

 彼は、数日前の発砲事件を思い出しながら、そのことを改めて感じていた。

 午前九時五十四分。

 連邦共和国北西軍管区、国境警備第三中隊。

 アレクセイ・ミハイロヴィチ・オルロフ大尉は、部下からの報告を受けていた。

 六月八日の発砲事件について、調査は依然として続いていた。

 負傷したパーヴェル・ベロフ伍長は軍病院で治療を受けており、回復へ向かっている。

 しかし、武装集団の所属や目的は明らかになっていなかった。

 イリヤ・ソコロフ中尉が報告した。

「大尉、現場周辺の住民から追加の証言が得られました」

「内容は?」

「事件前日の夜、山道で複数の人影を見たそうです。ただし、軍服を着ていたかどうかは分からなかったとのことです」

 オルロフは頷いた。

「……そうか」

 ソコロフは続けた。

「住民は、武装していた可能性があるとも話しています」

「可能性、か」

 オルロフは少し考えた。

「証言は記録しておけ。ただし、断定はするな」

「了解しました」

 オルロフは地図へ視線を向けた。

 国境線の周辺には、古い林道や山道が複雑に入り組んでいる。

 その一部は、地元住民が長年利用してきた道だった。

 軍の地図だけでは、すべての通行経路を把握することは難しい。

「……地元警察との連携を続けろ」

「はい」

 ソコロフは頷いた。

 オルロフは机の上の家族写真を見つめた。

 妻と娘が笑っている。

 彼は静かに息を吐いた。

 この国境の緊張が、いつまで続くのかは分からない。

 だが、少なくとも自分の部下たちを、無用な危険へ晒すわけにはいかなかった。

 午前十一時二十六分。

 クロウ家別邸、書斎。

 ヴァルターは、軍から届いた医療評価に関する書類を確認していた。

 次回の検査では、残存神経の反応と魔力活動の関連を詳しく調べる予定だった。

 しかし、再構築試験そのものは、まだ実施されない。

 現時点では、安全性と実現可能性を評価する段階である。

 ヴァルターは書類を閉じた。

 そして、失われた右肩へ視線を落とした。

 右腕を失った日のことを、彼は今でも鮮明に覚えていた。

 帝政歴三三四年。

 異界門の向こう。

 見知らぬ大地。

 そして、帰還を目指していた帝国軍の部隊。

 あの日、彼らは山岳地帯の狭い谷を移動していた。

 空には灰色の雲が広がり、周囲には見慣れない植物が生えていた。

 地面は湿っており、岩肌には苔が付着していた。

 部隊は慎重に前進していた。

 ヴァルターは先頭に近い位置で、周囲の状況を確認していた。

 その時だった。

 前方の斜面から、突然、鋭い音が響いた。

 続いて、岩の表面が砕け、細かな破片が飛び散った。

「伏せろ!」

 誰かが叫んだ。

 兵士たちは一斉に身を低くした。

 次の瞬間、複数の発砲音が谷間に響いた。

 乾いた銃声と、岩に当たる硬い音。

 銃弾が地面へ着弾するたびに、土砂が小さく跳ね上がった。

 ヴァルターは近くの岩陰へ身を寄せた。

「敵の位置は!?」

「右前方の斜面です! 複数!」

 部下が叫んだ。

 ヴァルターは岩の縁から短く周囲を確認した。

 敵の姿は、木々と岩の間に隠れていた。

 しかし、発砲時に生じる閃光と、土煙の上がる位置から、おおよその方向を把握することはできた。

「負傷者は!?」

「一名! 左脚を撃たれています!」

 ヴァルターは振り返った。

 少し後方で、若い兵士が地面へ倒れていた。

 軍服の左脚には血が滲んでいる。

 衛生兵が近づこうとしていたが、周囲にはまだ銃弾が飛んでいた。

「無理に出るな! 遮蔽物を使え!」

 ヴァルターは叫んだ。

 兵士たちは岩陰から周囲を確認し、負傷者へ近づく機会を探った。

 銃声が一時的に弱まった瞬間、二人の兵士が負傷者のもとへ移動した。

 彼らは負傷者の身体を支え、近くの岩陰へ引き寄せた。

 衛生兵がすぐに状態を確認した。

「意識あり! 出血が多い!」

「止血を優先しろ!」

 ヴァルターは指示した。

 その直後、前方で大きな衝撃音が響いた。

 岩肌の一部が砕け、土砂と破片が飛び散った。

 爆風が谷間を駆け抜け、兵士たちは反射的に頭を低くした。

 ヴァルターの耳には、一瞬、甲高い音が残った。

 周囲の声が遠く感じられる。

 彼は歯を食いしばり、身体を起こそうとした。

 その時、右側から強い衝撃を受けた。

 何が起きたのか、すぐには理解できなかった。

 身体が横へ押され、地面へ倒れる。

 右肩から先に、激しい痛みが走った。

 視界の端で、軍服の袖が不自然な形になっているのが見えた。

 ヴァルターは右腕を動かそうとした。

 しかし、動かなかった。

「……っ!」

 息が詰まった。

 右腕が、なかった。

 彼はその事実を理解するまで、数秒を要した。

「少佐!」

 部下の声が聞こえた。

「少佐、しっかりしてください!」

 ヴァルターは左手で地面を押さえ、身体を起こそうとした。

 しかし、激しい痛みと出血によって、視界が揺れた。

 衛生兵が駆け寄ってきた。

「少佐、動かないでください!」

 ヴァルターは荒い呼吸を繰り返した。

「……部隊は?」

「今は少佐の処置が先です!」

「……負傷者を……」

「搬送準備を進めています!」

 衛生兵は損傷部位を確認し、出血を抑えるための処置を始めた。

 周囲では、まだ銃声が続いていた。

 ヴァルターは意識を保とうとした。

 しかし、視界が次第に暗くなっていく。

 最後に聞こえたのは、部下の声だった。

「少佐を後方へ! 急げ!」

 そして、記憶は途切れた。

「……あなた?」

 セレナの声が聞こえた。

 ヴァルターは目を開けた。

 書斎の扉の前に、妻が立っていた。

「……大丈夫ですか?」

 ヴァルターはしばらく黙っていた。

 そして、ゆっくりと息を吐いた。

「……ああ」

 セレナは夫の表情を見つめた。

「また、あの日のことを思い出していたのですね」

 ヴァルターは頷いた。

「……少しな」

 セレナは夫のそばへ歩み寄った。

「無理に話さなくてもいいですよ」

 ヴァルターは妻を見つめた。

 そして、静かに答えた。

「……ありがとう」

 セレナは夫の左手を握った。

 書斎には、しばらく静かな時間が流れていた。

 午後一時四十八分。

 帝国中央部、中央軍医療研究施設。

 フリードリヒ・ハルトマン軍医中佐は、ヴァルターの過去の診療記録を確認していた。

 右上肢の欠損。

 残存神経の反応。

 幻肢痛。

 そして、異界帰還後に確認された魔力活動。

 これらの情報を総合すると、通常の外傷患者とは異なる特徴が見られていた。

 しかし、それが腕の再構築に直結するかどうかは、まだ分からない。

 ハルトマンは研究医へ説明した。

「今回の検査では、まず身体の状態を正確に把握する」

「再構築の可能性については?」

「理論上の検討を続ける。ただし、安全性が確認できるまでは、実際の再構築試験を行わない」

 研究医は頷いた。

「承知しました」

 ハルトマンは記録を閉じた。

「クロウ少佐には、家族がいる」

 若い研究医は顔を上げた。

「……はい」

「我々の役割は、患者の生活を支えることだ。研究成果を優先して、危険へ晒すことではない」

「了解しました」

 ハルトマンは静かに頷いた。

 午後三時十六分。

 クロウ家別邸、庭園。

 雨上がりの庭園には、柔らかな日差しが差し込んでいた。

 レイブンはルナと一緒に、小さな池の周囲を歩いていた。

 水面には、白い雲が映っている。

 ルナは水鳥を見つけ、嬉しそうに声を上げた。

「……おにいちゃん!」

「どうしたの?」

「……とり!」

 レイブンは笑った。

「本当だね」

 水鳥は二羽並んで泳いでいた。

 ルナはしばらく見つめていたが、やがて兄へ顔を向けた。

「……おにいちゃん」

「なあに?」

「……いっしょ」

 レイブンは微笑んだ。

「……そうだね。一緒だね」

 ルナは嬉しそうに笑った。

 少し離れた場所では、セレナが長椅子に座っていた。

 その隣には、ヴァルターがいる。

「……あなた」

 セレナが声を掛けた。

「何だ?」

「来週の検査、私も同行しますね」

 ヴァルターは頷いた。

「ああ。助かる」

 セレナは夫を見つめた。

「……不安ですか?」

 ヴァルターは少し考えた。

「……正直に言えば、少しな」

「そうですか」

「腕が戻る可能性があると聞けば、期待してしまう」

 ヴァルターは失われた右肩へ視線を落とした。

「だが、まだ何も分かっていない。期待しすぎるのも良くないと思っている」

 セレナは夫の左手へ、自分の手を重ねた。

「……期待してもいいと思います」

 ヴァルターは妻を見た。

「ただし、結果がどうであっても、あなたはあなたです」

 セレナは微笑んだ。

「右腕が戻らなくても、私たちの家族であることは変わりません」

 ヴァルターはしばらく黙っていた。

 そして、静かに微笑んだ。

「……ありがとう」

 庭園では、レイブンとルナが水鳥を眺めていた。

 ヴァルターはその姿を見つめながら、少しだけ肩の力を抜いた。

 午後五時四十二分。

 帝国北部方面軍司令部。

 国境情勢に関する夕刻の報告が行われていた。

「本日、共和国側で大規模な部隊移動は確認されていません」

 情報将校が報告した。

「ただし、国境警備部隊の警戒態勢は継続しています」

 司令官は頷いた。

「発砲事件の調査は?」

「継続中です。共和国側から新たな公式発表はありません」

「分かった」

 司令官は地図を見つめた。

 国境線を挟んで、二つの軍隊が向かい合っている。

 しかし、今日も大規模な衝突は起きなかった。

「……それなら、今はそれでいい」

 司令官は静かに呟いた。

 そして、将校たちへ視線を向けた。

「警戒を続けろ。ただし、必要以上に相手を刺激するな」

「了解しました」

 将校たちは敬礼した。

 司令官は窓の外へ目を向けた。

 夕暮れの空には、薄い雲が広がっていた。

 その向こうには、帝国と共和国の国境がある。

 そして、そこには今日も兵士たちが立っていた。

 午後七時三十一分。

 クロウ家別邸、居間。

 夕食を終えたレイブンは、父の隣で本を読んでいた。

 ルナは母の膝の上で眠そうにしている。

 暖炉には小さな火が灯され、部屋には柔らかな光が広がっていた。

「……父さん」

 レイブンが尋ねた。

「何だ?」

「……腕がなくなった時、怖かった?」

 ヴァルターは少し黙った。

 そして、静かに答えた。

「……怖かったよ」

 レイブンは父を見つめた。

「……すごく?」

「ああ」

 ヴァルターは頷いた。

「何が起きたのか分からなくて、仲間のことも心配だった」

 少年は少し俯いた。

「……痛かった?」

「……痛かった」

 ヴァルターは正直に答えた。

「だが、それ以上に、もう家族に会えないかもしれないと思ったことが怖かった」

 レイブンは父の左手を握った。

「……でも、帰ってきた」

「ああ」

 ヴァルターは微笑んだ。

「帰ってきた」

 少年は少し安心したように笑った。

「……よかった」

 セレナは夫と息子の会話を聞きながら、静かに目を細めていた。

 ルナは眠そうに目を擦り、母の腕へ顔を埋めた。

 ヴァルターは娘の姿を見つめた。

 そして、息子の手を握り返した。

 午後九時五十八分。

 クロウ家別邸。

 レイブンは自室で日記帳を開いていた。

 机の上には、小さな灯りが置かれている。

 少年は万年筆を握り、ゆっくりと文字を書き始めた。

『今日は、父さんに腕を失った時のことを聞いた。

 父さんは、怖かったって言っていた。

 痛かったとも言っていた。

 でも、一番怖かったのは、家族に会えなくなることだったらしい。

 僕は、父さんが帰ってきてくれて本当に良かったと思った。

 来週、父さんは病院へ行く。

 腕が戻るかどうかは、まだ分からない。

 でも、僕は父さんが元気でいてくれたら嬉しい。

 今日はルナと庭で遊んだ。

 ルナは鳥を見て喜んでいた。

 僕も、ルナと一緒にいられて嬉しかった。

 早く、みんなで元のお家に帰りたい。』

 レイブンは万年筆を置いた。

 そして、日記帳を閉じた。

 窓の外には、雲の切れ間から月が見えていた。

 淡い光が、庭園の木々を照らしている。

 少年は小さく息を吐いた。

「……父さん、もう怖い思いをしなくていいといいな」

 そう呟き、ベッドへ向かった。

 帝政歴三三五年、六月十三日。

 帝国と連邦共和国の国境では、引き続き警戒が続いていた。

 発砲事件の調査は進められていたが、武装集団の所属は依然として不明だった。

 両国政府は外交交渉を継続し、軍当局も偶発的な衝突を避けるための対応を取っていた。

 その一方で、クロウ家では、ヴァルターの次回医療評価に向けた準備が進められていた。

 失われた右腕が戻る可能性は、まだ分からない。

 しかし、彼には家族がいた。

 妻がいた。

 息子がいた。

 娘がいた。

 その存在が、彼を支えていた。

 夜の別邸には、静かな時間が流れていた。

 レイブンは眠りにつき、ルナは母の隣で小さな寝息を立てている。

 ヴァルターは書斎の灯りを消し、廊下へ出た。

 彼は、家族のいる部屋へ向かった。

 遠くの国境では、監視所の灯りが消えることなく輝いていた。

 帝国と連邦共和国の緊張は、まだ解けていない。

 それでも、この夜、兵士たちは任務を続け、医師たちは負傷者の治療を続けていた。

 それぞれが、自分にできることを行っていた。

 傷跡は、過去の出来事を消すことができない。

 しかし、その傷を抱えながら、未来へ進むことはできる。

 七歳のレイブンは、まだその意味を十分には理解していなかった。

 けれど、父と母、そして妹と過ごす日々の中で、少しずつ学び始めていた。

 夜風が、帝国と共和国の双方の大地を静かに吹き抜けていった。

 戦争は、まだ始まっていない。

 しかし、平和を守るための努力は、今日も続いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。