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【第10話】 代償と告白

結斗:

ここ最近、

何か変わったこと……。


……最近!?


変わったことと言えば――

僕の、この力……?


そんなはずはない。

影響が出るなら、僕自身のはずだ。


なのに――


「どうして、お母さんなんだ。

僕じゃなくて、

なんでお母さんが、こんな目に……。」


待て。

待て待て待て……落ち着け。


法を正したあとだった。

タイミングだけを見れば……

確かに合っている。


それに――

最初に倒れたときも……。


「……偶然で、片付けていいのか?」


もしこれが本当なら、

これ以上、法を正すわけにはいかない。


「まずは確かめないと。

安全を、確実に。」


白石さんに……伝えるべきか?


いや、まだだ。

まだ“確定”じゃない。

答えが出てからでも、遅くはない。


……明日は会社を休もう。

自分の目で、確かめる。



──翌朝。


会社に事情を説明し、病院へ向かう。


病室の前で呼吸を整え

ゆっくりと扉を開いた。


結斗:

「お母さん……」


母:

「スー…… スー……」


結斗:

(顔色も悪くない……

意識がない以外は、いたって普通に見える。


お母さん、ごめん。

どうしても確かめる必要があるんだ。


……すぐに終わらせるからね。)


本を捲り、

慎重に、当たり障りのない法文を探す。


そして――


ほんの一文字だけを、

ゆっくりと、ペンで塗りつぶした。


──カンッ。


その一文字は、

いつものように青く光り、散っていった。


静かな病室に、

心電図モニターの音だけが鳴り続ける──


──ピッ ……──ピッ ……──ピッ

──ピッ …──ピッ ……──ピッ


結斗:

(……っ!

今、数値が一瞬……


「嘘だ……

なんで僕じゃなく、お母さんなんだ!


僕が今までやってきたことが、

お母さんをこんな目に……。」


社会に出て、

やっとお母さんを楽にさせてあげれる……

そのはずだったのに……


「何が守るだ!


僕が、お母さんを……

──じゃないか!


どうすれば……クソッ……」


──もう、現実を、

受け入れるしかない……。


これ以上は……

法を──。


白石さん……


ありのままを、

……伝えるしかないか。


連絡しないと!


結斗は真弓と連絡を取り、

急遽、いつもの【Second Light】で

仕事後に会うことにした。


(白石さんはまだ仕事中だし……

先に店に行っておこう。)


結斗は病室からの去り際に、

寝たきりの母を見つめる。


結斗:

「──お母さん、本当に……ごめん。

もう少し、待っててね。」


返事がこないとわかっていながら、

呟いた。



【Second Light】にて。


店長:

「ああ、いらっしゃい!

いつもありがとうね。


ん? 今日は、

いつもの女の子は一緒じゃないのかい?」


結斗:

「ここで待ち合わせをしてまして。

また、あとで来ます。」


店長:

「おお、そうかい。

それはよかった。

余計なお節介をしてしまうところだったよ。」


店長は、どこか安心したように笑った。


店長:

「いやね、

あの子は昔からよく来てくれてたんだけど、

あまり表情を出さない感じでね……。


とてもいい子ってのはわかるんだけど、

本心が読めないというか……。


でも、ここ最近、

笑顔が増えたなって思ってさ。


もしかして、君のおかげなんじゃないか?」


結斗:

「いえ、そんなことは……」


店長:

「おじさんが言うのもなんだが、

これからも、あの子と仲良くしてあげてほしい。」


結斗:

「……はい。

勿論です。」


結斗はゆっくりとメガネを押し上げた。



店内を見渡し、隅の落ち着いた席に

ゆっくりと座る。


結斗:

(法を消し出してから、

お母さんの体調が悪くなっていった……


さっきのことから考えても、

タイミング的に見て、

ほぼこれが影響している。


心拍数が一瞬、僅かに下がっただけ……

消した内容によって、

影響度が変わると考えてよさそうだ。


今までの法を元に戻すことができれば、

体調も戻る可能性はある。


でも……

白石さんといろいろ確かめたとき、

一度消したものは戻らなかった。


そして、書き足しても無反応……。


──だめだ。

そもそも、これ以上何かを変えてしまうと──。


どうすれば……)


──くん。

────光条くん!


結斗:

「あ、ごめん!

お疲れ様。


急に呼び出して悪い。」


真弓:

「何か、あったのですね?」


結斗:

「実は──」


結斗は母が倒れたこと、

そして、代償の可能性について、

ありのままを正直に話した。


真弓は、すぐに言葉を返せなかった。


真弓:

「──光条くん、ごめんなさい。

……本当に。」


真弓は視線を落とし、

震える声で言葉を押し出す。


「私が、

背中を押すようなことばかり言ったから……。」


結斗:

「いや、白石さんのせいじゃないよ。

僕がもともとしていたことだし……


一人でも、

確実に同じことをしていた。


だから――」


真弓:

「それでもっ!


私は……嬉しかった……。

喜んでしまったんです。


光条くんとなら、

どんなに手を伸ばしても

届かなかった人たちを、

やっと助けられるって……


そんな、

うまくいくはずもないのに……っ。」


結斗:

「白石さん、

僕は君を責めたいから呼んだんじゃない。


──もう、

法は消せない。


それを、伝えたかった。」


真弓:

「……。」


結斗:

「僕が法を消したことで、

助かった人がいるのはわかってる。


でも、

たった一人の、家族を守れないなんて……

僕にはできない。」



「白石さん、

ここ最近、笑顔が増えたよね。


学生の頃は、あまり見ない顔だったから、

僕としても、すごく嬉しかった。


本当は、

もっと困った人たちを助けて、

白石さんにも、もっと──。


でも……

もう無理だ。


ごめん。」


真弓:

「あやまらないでください。


悪いのは……

私もです。


そう思って頂けただけでも、

私は救われました。


──もう、十分です。

今度は、私が助ける側です。


光条くんのお母さんを助けましょう。」


(──私の全てを懸けてでも。)


結斗:

「ありがとう。 白石さん。

もう一度、僕に力を貸してほしい。


──必ず、助ける。」


真弓:

「はい。」


二人は、本を開き

助けられる可能性を探し続けた。



ブブブッ、ブブブッ。

ブブブッ、ブブブッ……


結斗の携帯電話が鳴る。



結斗・真弓:

「──っ!」


結斗:

「白石さん、ごめん。

少し席を外す。」



結斗:

「──もし……もし?」


電話口:

「──でお間違いはないでしょうか?」


結斗:

「はい。

僕で、間違いありません。」


電話口:

「実は……

ずっと、呼んで――」


結斗:

「……わかりました。

今からお伺いします。」


結斗は電話を切り、席に戻る。


結斗:

「白石さん?」


真弓:

「え、はい。

大丈夫です。


病院、からですか?」



──続く──

もし何か少しでも感じていただけたら、

リアクションを残していただけると嬉しいです。

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