登校初日!行きはよいよい帰りは怖い。⑳
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秋も近づいて寒暖差が大きくなっていますのでご自愛ください!
俺達は順調に中間地点までたどりつき配置に着く事が出来た。
一息つける場所まで来たので辺りを見渡し状況を把握することにした。
まず退路。
あたりに散らばって横たわっているハイドスパイダーの中に動きのあるものはいない。
意図せず道の様になったその死骸達の間を通るならば撤収する際に奇襲されることもないだろう。
次に、教官とラッキー。
走り抜けていったといえどここは巣の中だ。どうしても正面から受けないといけないものや巡回しているハイドスパイダーを処理しないといけないからか、最初の勢いからは少しペースダウンしていた。
とはいえ、エイエ達との距離はだいぶ近くなっている。
あの調子ならほどなくしてたどり着くだろう。
肝心のエイエ達。
打ち合わせ通り最初の位置からは動いていない。
近くにいたハイドスパイダー達も上手く処理したようで既に合流すまでに耐える為の体勢を整えていた。
ひとつ懸念点があるとしたら、場所を移動できないことで囲まれやすいという事だろうか。
教官達との間には黒い壁が出来てしまっている。
俺達はもう少し前進してその数を減らすために加勢すべきかという考えが頭によぎったが、エイエを中心に光のベールが降りたのをみて心を撫でおろした。
噂に聞く防御の魔法だろう。その光に阻まれてハイドスパイダー達も寄り付く事が出来ずにいる。
少しずつベールは小さくなっているもののあのペースならなんとか合流出来そうだ。
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「教官、左の2体はこっちでやるぜ!」
短剣を、前に飛び出て来たクモ野郎の頭へと振り払いながらそうラッキーは叫んだ。
グニャっとした感触が手から消える間もなくもう1体がすかさず飛び掛かって来たので右手に持っている盾で叩き潰す。体液が飛んで顔につくがそんな事を気にしている状況ではない。
「おう!右の奴らはまかせろ!全部は相手にするなよ!とりあえず真っ直ぐ合流する事が第一優先だ。」
(入校初日から連携を取って戦闘する事になるとは思っていなかったがなかなか筋がいい。恐らく、仲の良いあの2人と小遣い稼ぎを良くしていたのだろう。)グレイドはそんなラッキーの姿を見て心の中で関心していた。とりわけ、左利きというのが連携の取りやすさを増している。
別に右利き同士の連携が取りにくいという事ではない。
だが、利き手が一緒だとどうしても武器を振る際に距離を取って置かなければならない。
距離が近すぎれば、敵を切ろうとしたら仲間を切りましたという事が起きかねないからだ。戦闘では、特に、魔物相手の乱戦では体勢を崩されて仲間の方へと飛ばされることもあるからなおさらだ。
故に、盾を持っている手を仲間側に向けて戦えるこの状況はとても幸運だ。
「ふ。ラッキーとは名前通りだな。」
歳のせいだろう。ついしょうもない事を、思わず呟いてしまった。
「え!?ワリィ!なんて言ったんだ!」戦闘中で言葉遣いが荒くなっているが自分が聞き逃してしまったと思っているのだろう、申し訳なさそうにラッキーがこちらを見てくる。
「いや!なんでもねぇ!それよりっ!ラッキー、学校に帰ったら馴染の武器屋を紹介してやるよ。手に馴染む斧ってのはどうしても割高になるからな。使っても元が取れるくらい丈夫でいいやつをこしらえる奴がいるんだ。」
「まじか!そいつはラッキーだ。流石、俺。ついてるぜ!」
本人から不意に出た言葉で思わず笑ってしまいそうになったが気を引き締める。
目の前まで来たとはいえエイエ達との間には明確な壁があるからだ。
ここを突破しなければ合流する事すら叶わない。
「おう!こっからが正念場だ。実戦で使えるスキルの応用って奴をみせてやろう!ラッキー、俺の後ろについてこい!」
「シールド!」俺は盾を構えて叫びスキルを発動させた。盾の周りに青い結界が張り巡らされる。
「防御スキル?前進するのに使えんのか?」素朴な疑問が後ろから聞こえてくる。当然だ。
「現場の知恵ってやつよ!いくぞー!突進あるのみ!」俺はそう意気込んでエイエ達の方へと全力疾走した。
「まじかよ!シールドバッシュじゃなくても飛ばせるのかよ!」
「燃費は悪いがな。体の軽い相手なら体当たりで弾き飛ばせる。そこにシールドのスキルを使うことで硬さを増してより効率的に飛ばしていく感じだ。もちろん、重たい敵にはシールドバッシュの方が有効だぞ!」
「なるほどな!」しっかり後をついて走りながらラッキーが相槌を打つ。
「よし!もう少しでつくぞ!」
そう俺が言い終わるか終わらないかのタイミングでエイエ達を包んでいる光のベールが揺らぎ始めた。
もう限界だったのだろう。
光のベールは一瞬小さく縮み、周囲に爽やかで力強い風を巻き起こして霧散した。
エイエ達を取り囲んでいたハイドスパイダー達は、体勢が崩れたところへ予想外の力を受けて後ろへ吹き飛ばされている。
「エイエ!マモダ!メラトト!よく耐えた!」
その隙を逃さずにエイエ達の元へと滑りこみ、合流を果たした。
第一目標、達成である。
『教官!ラッキーくん!』
『ぎ、ぎりぎりだったぁ。』
『まだよ、巣から逃げ出すまでは状況は変わってないわ。』
「間に合って良かったぜ!まぁ、まだ終わりじゃないんだけどな。」
そう口々に交わす言葉には安堵の声が混じっている。
魔物達に囲まれて気が気ではなかったのだろう。仕方ない。
だが依然、危機的状況に変わっていないのだ。
気を引き締めなおそうと声を掛けようとした口を開こうとした、その瞬間。
その瞬間、空気が揺らいだ。
地獄の蓋が開いたのだ。ファーマムという名の死神が閉じこもっていた、あの蓋が。
「まぁ、そう簡単に逃してくれちゃあしねぇわな。」
いよいよ、生死を賭けた大勝負が始まろうとしていた。
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