草原からはじまる 03
岩山の形や大きさは、それぞれ異なっていた。
じっと見ていると、遠くのほうでいびつな形をした岩がゆっくりと上昇しつづけていた。それは周囲の岩山より高く浮き上がり、やがて空に溶け、見えなくなった。
またしばらく見ていると、別の場所で小さな丸い岩が草原から生まれた。わずかに大地が盛り上がったかと思うと、ふわりと浮き、草原から離れていく。岩山を生んで盛り上がった大地には、小さな塔があった。他の岩山を見てみると、いずれの岩山の下にも小さな塔があり、真上の岩山はそこから離れていくことはできないようであった。
「……フィノア」
メリーの口から小さく、王女の名がこぼれでる。
無限に広がっているように思える大草原と、無数に浮かび上がる岩山の、奇妙な世界。このどこかに行方不明になっている王女がいるかもしれないのである。考えただけで途方もない。再会できないのではないかと思ったとしても不思議ではない。
「王女は必ず見つけだす。たとえメリーさんが諦めても、俺は仕事を必ず終わらせるつもりだ」
「あ、諦めてなんかいません!」
「そうか。まあ、どちらでもいいが」
「……ラトスさんはどうしてそこまで、殿下の捜索依頼を達そうとするのですか? お金のためとは思えませんが……」
「……聞かないほうがいいこともあるものだ」
メリーの言葉に、ラトスは目を伏せる。鏡を見なくとも、自身の瞳から光が消えたと分かった。様子が変わったラトスを見て、メリーがあわてる。余計なことを言ったと思ったのだろう。取り繕うようにして話題を変えようとするメリーに、ラトスは手のひらを向けてみせた。
「気にするな。さあ、この辺りを少しさぐってみよう」
「……はい」
消沈するメリーをよそに、ラトスは草原をぐるりと見回した。しかしどこを見ても緑ばかり。変わり映えがあるものといえば、岩山の下にある塔だけであった。そこへ向けて歩きだそうとした瞬間、すぐ近くで草をかきわける音が鳴った。
二人はびくりと肩を揺らし、音が鳴ったほうへ目を向ける。
風が草をなでる音ではない。小さな生き物が、膝ほどの高さしかない草葉をかきわけて近寄ってきていた。危険な獣だろうか? ラトスは息を飲み、腰の短剣に手をかけた。危ういと分かれば、姿を見せるやいなや、打ち倒さなければならない。




