猫からはじまる 01 ◇挿絵あり◇
「これは珍しいお客さんだ!」
突如、子供のような声が聞こえた。
二人は辺りを見回す。しかし人の姿など、どこにもなかった。
「ここだよ! ここ!」
子供のような声が、先ほどより近付いている。まさかと思って足元を見ると、草葉の隙間から小さな獣が姿を現していた。
獣の姿は、猫のようであった。手のひらほどの大きさで、全身真っ白な毛におおわれている。長い尻尾が三つ生えていて、くるりくるりと左右にゆれている。口は笑っているかのように開いていて、ラトスとメリーをじっと見上げていた。
まさかこの珍妙な猫がしゃべったのかと、二人は顔を見合わせる。
「あっははー! いい反応!」
猫のような獣が、子供のような声を放った。ついには小さな口を大きく開き、愉快そうに笑いだす。
「……なぜ猫がしゃべってるんだ」
「えっと……私に聞かれても」
「気味が悪いな」
「え? 可愛くないですか?」
ラトスの言葉にメリーが首をかしげる。瞳を輝かせているのを見るかぎり、本気で可愛いと思っているらしい。ラトスは首を横に振って否定したが、メリーの意見が変わることはなかった。
「可愛いって、ボクのことかい?」
猫のような獣が、翼もないのにふわりと浮きあがる。メリーの顔の傍まで来ると、笑顔を作って笑いだした。
「そうよ! あなたのこと!」
「本当かい? やったあ!」
「……ラトスさん! 見てください! 可愛いでしょう!?」
「いや、可愛くないが」
「ラトスさんの目、腐ってるんじゃないですか?」
ふわふわと浮く猫のような獣を手のひらに乗せ、メリーが眉根を寄せる。まるで異端者を見るような目である。彼女の手に乗る猫もまた、ラトスをじとりとにらんできた。出会って間もないのに、ずいぶんと意気投合したらしい。ラトスはメリーと猫に向かって両手のひらを見せ、降参の意を表してみせた。




