草原からはじまる 02
「うわあ!」
先に洞窟から飛びだしたメリーの声がひびく。
遅れてラトスも、洞窟から顔を出した。
「夢でも見ているのか」
広がる景色を見て、ラトスは声をこぼす。
視界には、緑一色。広大な草原が地平線まで延びていた。
ゆるやかに吹き下りる風が草原を撫で、幾重もの緑の波を立たせている。波に合わせて七色の光が踊り、宙ではじけて空に還っていく。それらはあまりに幻想的で美しい光景であった。しかし同時に、ラトスは大きく目を見開き、首を傾げた。
今の今まで、ラトスは色の識別がほとんどできない状態であった。
しかし今ははっきりと色が分かる。妹の死によって色褪せていたはずの視界に、草原の緑と、七色の光が映り込んでいる。
これは一体どういうことなのだ。
ラトスは首を傾げたまま、先に洞窟を出たメリーに目を向けた。すると奇妙なことに、メリーの姿だけは色褪せていた。自身の身体を見ても、やはり色褪せている。周囲の景色だけが、無理やりに発色させているようであった。
「ラトスさん、あれって……」
ラトスの思考を遮るように、メリーの声が鳴った。
メリーに目を向けると、彼女の腕が空に向かって伸びていた。目を見開き、口を開け、呆けたような表情をしている。どうしたのだと、ラトスもまたメリーの指が向く方へ視線を送った。するとラトスもメリーと同じように、大きく目を見開くこととなった。色の変化に悩んでいたことなどすっかり忘れるほどの、圧倒的な存在が目に映る。
「まさか、浮いているのか……? 山が……?」
「……浮いていますよね? 見間違いじゃないですよね?」
「……信じられん」
二人は空を見上げながら、目を見開く。
巨大な岩山が、空に浮いていた。ひとつやふたつではなく、数え尽くせないほどの岩が草原の上にあった。それぞれは互いにぶつかり合うことがないよう距離を保ち、ゆっくりと上下している。
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