草原からはじまる 01
「今度は、出口があるでしょうか?」
ぼやりとした明かりが広がる洞窟を見回し、メリーが首をかしげる。
「あると思いたいな」
ラトスは短く返事して、白い柱に手をふれてみた。すると、手のひらに振動と風の音が這いはじめた。自身の目玉の裏側に、石室の景色も映しだされる。その中には光る杭もあり、二人が先ほどまでいた石室であろうことが分かった。
洞窟へ来た時と同じようにすれば、再び石室にもどることができるのだろう。
「あ、ラトスさん! あそこ! あそこに光が見えます!」
メリーの声が洞窟内に反響する。ふり返ると彼女の姿はなかった。代わりに洞窟の先でゆらめくなにかが見える。どうやら目を離した隙にずいぶん先の方まで進んでいったらしい。
「あれ? ラトスさん?」
「ここにいる」
「まだそこにいたんですか? 早く行きましょうよ!」
「……そうだな」
明るくひびいてくるメリーの声に、ラトスは小さく息を吐く。虚勢を張っているのか、怖いもの知らずなのか。どちらにせよ、見知らぬ場所で一人先行されるのはいただけない。
「あまり先には行かないでくれよ」
「どうしてです?」
「こんな異常な場所なんだぞ。もしなにかが起こっても、すぐに対処してやれる自信がないからな」
「確かに! 変わった場所ですね!」
能天気な声をはずませるメリーの後ろ姿が見える。彼女の先に、小さな光も見えた。洞窟内の水気にちらちらと反射し、空気をゆらしている。その光を目指して、メリーが駆けだした。なめらかですべりやすい岩面を蹴り、飛んでいく。
追うように、ラトスも光に足を向けた。強い勾配や凸凹もないので、足さえとられなければ歩きやすい。
――歩きやすい?
自身の思考に、ラトスは違和感を覚えた。しかしその違和感がどこからきているのか、ラトスには分からなかった。それどころか考えれば考えるほどに思考がゆるくなり、ついにはなにに対して違和感を覚えたのか分からなくなった。




