柱からはじまる 02
「ラトスさん!?」
耳元でメリーの声がひびいた。その声は何度も鳴りひびいていたようで、目を向けると、悲痛な表情を浮かべているメリーの顔が見えた。ラトスの身体を掴み、揺さぶりつづけている。
「大丈夫だ、なんともない」
「ずいぶん長い間、身体が硬直していましたよ!?」
「そんなにか」
「さっきも倒れましたし……本当に大丈夫ですか?」
「たぶん、問題ない。それよりも柱の意味がなんとなく分かったぞ」
騒ぐメリーに手のひらを向け、ラトスは柱の表面をじっと見た。
風の音に植え付けられた知識に頼れば、このような柱は「扉」の働きをするものであるらしい。触れて念じれば、柱がつながる場所へ渡ることができるようだ。そのことをメリーに告げると、彼女の頭が斜めにかたむいた。
「でも、私が触れても、なにも起こりませんでしたよ?」
メリーが不思議そうにして、柱を何度もふれる。しかしなにかを感じた様子はなく、疑うような目でラトスを見てきた。
「そんな目で見るな。俺だって分からないことばかりなんだ」
「でもさっき、分かったって」
「なんとなくだ。……そうだな、ちょっと手を借りるぞ」
ラトスはそう言って、メリーの手をつかんだ。
急に手をつかまれたメリーが、驚きのあまり振りほどこうとする。しかしラトスの力のほうが強く、何度手を振りほどこうとしてもラトスの手が離れることはなかった。ラトスは暴れるメリーの肩も押さえ、白い柱に手を伸ばす。
「すぐに終わる。ちょっと待ってくれ」
「あ、あの? 急になんですか!? なんですか!?」
「ガタガタ言うな。本当にちょっとでいいから、静かにしていてくれないか」
「なにがですか!? え、ちょ……!」
騒ぐメリーをよそに、ラトスの手が柱にふれる。
すると、風の音が鳴り、振動がラトスの手を這いまわりはじめた。同時に、メリーの声が静まっていく。
「どうだ? なにか感じるか?」
「……え、っと? これは……さっきの風みたいな音、ですか?」
「あれほど騒々しくはないが、そのようだ。メリーさんにも聞こえるのなら、成功したようだな」
「成功って……、また、えっ、ちょ……!?」
騒がしいメリーの声が途切れる。
気付けば周囲は、白い光に満ちていた。森の沼からこの石室へ来た時と似ている。
全身を風のような震動が這いまわる。
少しずつ身体の自由が奪われ、すべての感覚が消えていく。メリーの手首の感触だけ、手のひらの中にかすかに残った。それだけは離してはいけないような気がして、ラトスは強くにぎりしめた。




