↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傀儡といしの蜃気楼 ~夢の世界のものがたり~  作者: 遠野月
風が呼び

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/285

柱からはじまる 02

「ラトスさん!?」



 耳元でメリーの声がひびいた。その声は何度も鳴りひびいていたようで、目を向けると、悲痛な表情を浮かべているメリーの顔が見えた。ラトスの身体を掴み、揺さぶりつづけている。



「大丈夫だ、なんともない」


「ずいぶん長い間、身体が硬直していましたよ!?」


「そんなにか」


「さっきも倒れましたし……本当に大丈夫ですか?」


「たぶん、問題ない。それよりも柱の意味がなんとなく分かったぞ」



 騒ぐメリーに手のひらを向け、ラトスは柱の表面をじっと見た。

 風の音に植え付けられた知識に頼れば、このような柱は「扉」の働きをするものであるらしい。触れて念じれば、柱がつながる場所へ渡ることができるようだ。そのことをメリーに告げると、彼女の頭が斜めにかたむいた。



「でも、私が触れても、なにも起こりませんでしたよ?」



 メリーが不思議そうにして、柱を何度もふれる。しかしなにかを感じた様子はなく、疑うような目でラトスを見てきた。



「そんな目で見るな。俺だって分からないことばかりなんだ」


「でもさっき、分かったって」


「なんとなくだ。……そうだな、ちょっと手を借りるぞ」



 ラトスはそう言って、メリーの手をつかんだ。

 急に手をつかまれたメリーが、驚きのあまり振りほどこうとする。しかしラトスの力のほうが強く、何度手を振りほどこうとしてもラトスの手が離れることはなかった。ラトスは暴れるメリーの肩も押さえ、白い柱に手を伸ばす。



「すぐに終わる。ちょっと待ってくれ」


「あ、あの? 急になんですか!? なんですか!?」


「ガタガタ言うな。本当にちょっとでいいから、静かにしていてくれないか」


「なにがですか!? え、ちょ……!」



 騒ぐメリーをよそに、ラトスの手が柱にふれる。

 すると、風の音が鳴り、振動がラトスの手を這いまわりはじめた。同時に、メリーの声が静まっていく。



「どうだ? なにか感じるか?」


「……え、っと? これは……さっきの風みたいな音、ですか?」


「あれほど騒々しくはないが、そのようだ。メリーさんにも聞こえるのなら、成功したようだな」


「成功って……、また、えっ、ちょ……!?」



 騒がしいメリーの声が途切れる。

 気付けば周囲は、白い光に満ちていた。森の沼からこの石室へ来た時と似ている。


 全身を風のような震動が這いまわる。

 少しずつ身体の自由が奪われ、すべての感覚が消えていく。メリーの手首の感触だけ、手のひらの中にかすかに残った。それだけは離してはいけないような気がして、ラトスは強くにぎりしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。