風の声からはじまる 02
「あそこにある、白い何か。あれは、さっきもあったか?」
ラトスは壁の一方を指差し、目をほそめる。口調が強かったためか、メリーの声がぴたりと止まった。ラトスの指が向く方へ、メリーの視線が注がれる。
二人が見る壁側に、ぽつりと白い柱が建っていた。
騒々しい風の音がする前は、無骨な石の面が連なっていただけと記憶している。あれほど目立つ柱があれば、見落としなどしないだろう。
「……うう、た、たぶん、なかったですね……」
身体をさすりながら、メリーがうめくように言った。
「それなら良かった。まったく俺はもう、頭がどうかしてきている気がするんだ。もう全部、幻覚じゃないかとな」
「でも、夢じゃ……ないですよね」
「……たぶんな」
ラトスはうなずき、現れた白い柱に向かう。
追いかけるようにして、メリーもよろめきながら歩きだした。
近付いてみると、柱は思いのほか大きかった。人の四倍ほどの高さはある。幅もあり、両手を広げても足りないほどであった。表面は磨かれたようになめらかで、顔を近付けると自身の顔が映り込んだ。顔以外にも、無骨な石室が映り込んでいる。じっと見ていると、映り込んだ石室の中に別の白い柱があることに気付いた。
ラトスは振り返り、映り込んでいた柱を探す。すると反対側の壁際に似たような白い柱が建っていた。それは目の前にある柱より低く、わずかに細かった。
「……フィノアも、ここに来たのかな」
こぼれるメリーの声。ラトスと同じように、目の前の磨かれた柱をのぞきこんでいた。
フィノアというのは、エイスの国の第一王女の名だ。呼び捨てにできるほどの関係ということは、ただの主従ではないのかもしれない。
「そうかもしれないな」
「見つけられるでしょうか」
「見つけるし、連れ帰る。どうすればいいかは分からないが、進む方向に変わりはない」
「……そうですね」
うなずくメリーを見て、ラトスは白い柱にそっと手をかけた。
すると突然、風のような声が再び聞こえだした。




