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ひねくれ少女は自分の生きる意味を真剣に考えたい  作者: 日向日向
第一章「篠崎奏音は空想だけで生活したい」
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番外編「ポンコツ元奴隷 英雄になる その2」

今日は連続投稿をします!

先ずは一話目です。

「亜人狩りへの反抗、ですか?」

「うん……」


 謎の侵入者が去ったあと、簡単に荒らされた部屋を掃除して、腰を落ち着かせて話を聞き始めました。


 聞くところ、カノンさんが襲っている盗賊とは別の組織が最近根付いた規模の小さい組織があるようです。何やら、その組織の主張は“虐げられる亜人の解放”だそうで、その教祖さんはかなり強い術師さんらしく……反亜人差別を心より願う亜人が集って、新手の宗教のようになっている様子です。


「これは問題ですね……」


 問題なのは亜人差別撤廃を訴えかけることではありません。仮に武力行使に移そうとも、まぁ、その人達の気が済むならそれでいいです。私も亜人ですが、賛同も否定もしません。だって私はしなければいけないことがありますし。


 ですが……なんというか考えようです。


 彼の言い分では、発足して数週間余りで既に三、四十人の配下がいるようです。この増加具合は妙ですね。きっと噂を聞きつけて近辺の亜人種がやってきているようにもうかがえます。だとすると、きっとディルベルト並みに巨大な組織になる日もそう遠くありませんね。


(八聖王計画に支障が来しかねませんね)


 仮に国家を揺るがす教団にでもなってしまっては大変です……計画実行が遅延されては困りようですし……。


(それに、これは私だけの問題でもなさそうです)


 とりあえず、カノンさんに協力を仰ぐべきだろうかな。


「しかし妙ですね、どうして君が……えっと……」

「俺の名前はユウトだ」

「じゃあユウト君、どうして貴方は追われていたんですか?」

「それは、きっと僕が親書を盗んだからだ」


 親書、ですか。


「奴らは、それこそ差別する奴ら皆を倒すことを目指しているんだ。そのために……最大戦力を手に入れることに必死なんだ」

「最大戦力?」

「ああ、なんかよくわかんないけど……亜人と人間のハーフで、めちゃくちゃ強い術師がこの街の何処かにいるっていうんだ。だから、親書が届く前に俺が先に逢って、真実を話して」

「退治してもらう、ですか」


 うーむ、多分エンヌさんのことですよね、それ。

 ハーフですし、それに術師ときたら。

 しかし、その教祖さんも、まぁユウトさんもそうですがエンヌ先生をよく知らないようですね。あの人は別にそういう厄介事に与しないと思うけどなぁ。あの人は純粋に知識大好き半亜人なだけですし……。


 私は親書を改めて読み進めるも、八聖王計画を仄めかす記述は何処にもありませんでした。

 ふむ、八聖王計画を知らないようですね。となると、その教主さんとやらは純粋な意味で奴隷差別からの解放を願っているようですね。

 八聖王計画を熟知しているなら、まだその計画を潰さないように行動するか、或いは真っ先に叩き潰す極端な行動に出ると思いますね。厄介なのは何も知らないからこそ、予測できない行動に出ることです。そうされては……私だけではどうにもできません。


「まずは……カノンさんの家に行きましょう!」





 彼を家で留守番させておき、私は真っ先にカノンさんの元へと向かいました。


「カノンさん、カノンさん!」


 奴隷生活の際は不可能でしたが、今となっては自由に学舎内をうろつくことができます。当然眼鏡は着用しなきゃいけませんが……。

 そして、事前に聞いていたカノンさんとエンヌ先生が修業をしている部屋を訪れました。


「何よ」


 部屋を見回すと、なんというか普通ではありませんでした。

 空間が歪曲しているといいますか、全体的に実像と虚像が入り混じっているといいますか、まるで一部が鏡の世界と化している――そんな違和感の塊が部屋中を支配していました。

 私が飛び込むや否や、その部屋全体の異変は収縮するように元の、自然な木材の書斎に戻っていきました。直前まではまるで万華鏡の世界に立たされていたというのに、不思議な話です。きっと、これも面妖な光景も修行の一環なのでしょう――流石、カノンさんです!


「あのですねっ、カノンさんっ、エンヌ先生――それで、あのっ」


 するとそんな私を見て、カノンさんは目を閉じて溜息を吐いてしまいました。余程お疲れのようですね……。


「落ち着きなさい……何かあったの?」


 私とカノンさんのやり取りを見て、額に少し汗をかいているエンヌ先生は、


「……少し休憩しましょう、用が済むまで私は席を外すわ」

「えっ」


 それは困ります! 


「エンヌ先生にも、いいえ、エンヌ先生がいないと説明ができないんです!」

「はい?」


 そう、この親書は紛れもなくエンヌ先生充てなんですから……。



「……亜人絶対主義を掲げる新興宗教、か」


 カノンさんもしっかりとその親書を読み解き、それを片手で閉じて、


「胡散臭い団体はこの世界にもあるのね」

「貴女の世界にも宗教は?」

「あるわ、それだけで何千年も戦争できるくらいには」

「このままだと、きっと取り返しのつかないことになりそうですよ」


 落ち着いて私の主張は全て伝えました。当然八聖王計画への波及も含めてです。


「信者の増加速度はカルトのそれと見て間違いないわね。確かに、あのまま看過して肥大化してしまうとディルベルト級の組織になるのはそう遠くなさそうね」

「だったら討伐を――」

「私は忙しい」


 ばっさりと切り捨てられてしまいました。


「まだ海の物とも山の物ともつかない存在を徒に刺激したら、それこそ大変なことになる可能性だってある。それに実際、奴らの計画は既に破綻しているわ」


 確かにその通りです。

 エンヌ先生を身内に引き込むことが、奴らの拡大には必要不可欠です。しかし、


「そこに与するメリットは私にはないわ。正直な話、亜人の差別を解放したいなんて思わない――解放されたいなら、自分で権力を掴む」

「と、掴んだ人間らしいものの考え方をどうもありがとう。当然奴らとは迎合できないからあの団体はいずれにせよ尻すぼみよ」


 裏組織としてのレギュレーションさえも遵守しない彼らはじきに国家に目を付けられるでしょう。カノンさんの言葉を借りると、三日天下というやつらしいです。


「で、ですが……」

「そのユウト? とかいう子どもは自業自得よ。この人が重度な知識中毒であって、そんな昨日の今日で発足した有象無象に靡くような相手ではないことは少し調べればわかる話よ。

 それさえも怠った短絡的な行動の尻拭いなんて誰もしないわ」

「うぅ…………」


 その通り、その通りなんですが……。


「だけど」

「?」

「貴女が本当に彼を助けたいという意思は伝わったわ」

「カノンさん?」

「助けたいと思うなら、貴女の力でどうにかしてみせなさい」


 カノンさんは突き放すような素振りを最初は見せましたが、確かに道筋を示してくれているではありませんか。

 自分の手で、ユウト君を助ける……。


「……わかりました! 私がやってみます!」

「その意気よ。一応は貴女の動きを観測しといてあげるから、精々頑張りなさい」



 よし、こうなったら私なりのやり方で活路を見出してあげましょう!


続きは二時間後の21時に投稿になります!

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