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ひねくれ少女は自分の生きる意味を真剣に考えたい  作者: 日向日向
第一章「篠崎奏音は空想だけで生活したい」
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第15話「その女教師には気をつけろ 前編」

今日も読んでいただき、ありがとうございます!


奴隷ちゃんの次は、天才魔法使いのお話です。

 罪なき人に対して迷惑行為を働くことだけはしたくない。


 自身の仇とならない限り、絶対にだ。

 だけど、市民に害なす存在から奪取するのはどうかという思考が、エーデルワイズに難癖をつけていた下衆どもを懲らしめた段階で浮かび上がった。

 

 天秤にかけてみるまでもなく、私は即決した。

 

 私が狙うは、所有者不明の金貨だ。強盗のことだ、富豪の家を手当たり次第に襲っていると考えるべきだ。なら、きっとその富豪の一族特有の宝とかも保管されているはずだ。流石に馬鹿正直に財宝に油性ペンで名前を書いているとかではなく、家紋や残された権利書とかだろうけど……一見してそういった類のものがありそうな代物はスルー&返却だ。

 別に恩を売りたいわけではない。

 単に所有者がはっきりとしているものまでも懐に収めようものなら、横領や着服など面倒な嫌疑をかけられかねないからだ。そういう輩は、法と正義をものとも思わない奴らだ――嫌疑をかけられた時点で高確率で私は詰みとなってしまう。それこそ、下手に裁判にでもかけられようものなら、獄死だってあり得るし、下手すれば極刑ものだ。単に路銀を稼ぐためだけに、そのようなリスクを冒すのは割に合わない。

 その反面、どこにでも存在して、しっかりと流通している通貨であれば足がつきにくい。なにぶん、記名された通貨なんてないからだ。そこで純銀貨や金貨が手に入れば儲けものだし、強盗も滅せられるのだからしめたものだ。

 

 さて、まずはこの世界に強盗なるものが存在するかどうかだ。まぁ、いないことはないと思うが……とりあえずエーデルワイスに聞いてみようと思う。





「エーデルワイス」


 やはり彼女は学校から街に繋がる通路の辺りでせっせと働いていた。


「あわわ、カノンさん、どうしたんですか?」

「少し貴女に聞きたいことがあるの」

「聞きたいこと?」

「そう、この近隣で辺りを賑わせている盗賊とかって、いない?」


 そう聞くと、彼女は箒を動かすのをやめて熟考に耽り出す。

 彼女の記憶が頼りであるのだし、気長に待つつもりだ。

 だが、横槍が入る。


「こら! 貴様!」


 うるさいわね……。

 至近距離で耳障りに喚く男に視線を向ける。

 第一印象だけを見ると、人間種に見えるが?


「ひえぇ、ごめんなさい……!」

「貴様はただでさえ腕が遅いというのに白昼堂々サボりおってからに!」


 そう蒸し、男は腰元の鞭を取り出す。

 これは面倒ね。


「待ちなさい」


 私がそう待ったをかけると、男は私を見る。


「お前は……学園の生徒か。わかっているはずだ、これは正当な行為であるし、たとえ学生であろうともそれに意を唱えるなら……」

「唱えるつもりなんてないわよ、主人が奴隷を使役して、正当な理由で罰を与えているのならね」


 私は万人の笑顔の為に戦う英雄では決してない。

 その構造に欠陥がなく、此方に被害がなければ、如何に旧時代的とも文句は言うまい。


「わかっているなら口を挟むんじゃ——」

「でももう貴方達の奴隷じゃないじゃない、彼女」

「お前は何を……」


 素っ頓狂な声を上げ、理解が追いついていない男にさらにヒントを与える。


「調べられるのでしょう、誰がこの子の主人かを」

「当然だ、こいつの主人は学園長で……あれ?」


 取り出した石版みたいなものを確認している彼の自信が揺らぎ出したのか、顔を歪めはじめる。


「確認できたかしら」

「名前がない……だけどおかしい、これは……」

「こういうこと」


 そろそろ答え合わせといこう。

 徐に私は右腕の布を捲り、彫り込まれた紋章を誇示する。

 それは所有者権限の有無を示す紋章で違いなかった。


「主人は間違いなく私よ。つい先日譲渡された……話が上下で共有されてないだけの話よ」

 

 真っ赤な嘘だ。

 だけど、彼は目の前の異質さのあまりこの場で上に判断を仰ぐという行動が頭から抜け落ちているそうだ。これは幸運だ。


「ということで、理解いただけたかしら?」

「あ、ああ……悪かった、な? エ、エンヌ様に一応聞いてくるから、ここで待っているように!」


 彼は首を傾げなら、石板を何度も回しながら何処かしららに去ってしまった。

 エンヌ……ああ、あの不可解な教師か。

 彼が言うに、やはり彼女も奴隷管理に絡んでいるようだ。このまま律義に待っていては私の低級の嘘が露見してしまう。とっとと撤退しよう。


「彼が単純で助かった」

「何度も何度もありがとうございます……」

「いいわよ、こういうやり取りは監督責任者同士がやることだから、貴方が気に揉むことはないわ」


 少々脇道に逸れたが、本題に入ろう。




 

 結論から言うと、態々聞くまでもなくやたらといるそうだ。

 それも一つや二つなど、指で数えられる規模なんかではなく、大小を無視すると多数存在しているようだ。で、大きなグループに限定して考えるとして、巨大化した強盗組織らのやり方は、大きな拠点を構えるのではなく、小さな基地を各地に点々と設置しているようだ。

 そうすることで、敵対組織が派手な攻勢に出ないようにという牽制を打てるという目的も大いにあるが、それ以上に国家の介入を阻止することができるそうだ。

 そもそも、どうして国民の敵となることが必定とした盗賊達の違法的な活動を一度に根絶やしにしないのか、という問いの答えが、私の求めていた答えになるようだ。もしも国家が重い腰を上げて、盗賊を討伐する精鋭を厳選し、派遣したならば恐らく一晩で根絶させるくらいならできるだろう。

 しかし、そうするとその盗賊の賄で衣食住を支えていた貧民街の人間や治安がすこぶる悪い地域に住まう人々が比較的平和な都市部に流入する可能性があるのだ。そうなってしまうと、今度はその都市部の治安が悪化し、人は減り……という負の連鎖が始まる。

 

 その考えには私も同意できる。必要悪……と言いたくはないが、彼ら盗賊が街の平和と混沌の間の緩衝材になっていることはこれまた事実。蔑ろにすべきではないのだ。無論、行き過ぎた虐殺行動を始めようものなら国家もそれなりの処置を取るだろうが、下流貴族の屋敷を無作為に攻撃する程度は目を瞑っているようだ。いやむしろ、国側が承認・非承認の屋敷の情報を斡旋しているのではないか、とも慎ましやかにうわさされているらしい。

 ふむ、やはり抜けているエーデルワイスだが、生きている年数が純粋に長いのと、復讐を達成させるために、自身の取り巻く状況程度は正確に把握しているようだ。これはますます面白いわね。


 さて。

 エーデルワイスから、小さなアジトの場所を幾つか聞きだした。勿論、流石の彼女でもすべての場所を把握している……なんてことはないようだ。だけど、一つでも掴めれば十分だ。其処から、狩った先で聞きだせばいい。

 それに、私も強盗の必要悪性にはそれなりの賛同を示している。一気に全部滅ぼしてしまっては、肝心の平和が崩れてしまうし、今後の路銀回収先が途絶えてしまう。

 

 要は、ある程度収穫した後は、少し育てるというわけだ。少し寝かせれば、また強盗達は損失を取り戻すべく、何処かしこに泥棒に入る。そこでせしめた持ち主不明の混同した硬貨を回収、を何度か繰り返せばエーデルワイスの衣食住代や今後の蓄えに必要な資金はそろうだろう。


 残りの問題点といえば、強盗達が手堅い反抗を示してきた時だが……今の力で対抗できるか、である。


 代謝の調節なるものは試験の時に覚えたし、イメージさえできれば戦えるはずだけど、これも出たとこ勝負って感じでかしらね。

 もし到底敵いそうにないなら、撤退しよう。一応、面が割れないように仮面だけは用意しておく。

 それに、もしそれもできずに私が殺されるというのなら、それは間違いなく私の弱さだ。強盗とはいえ、畜生とはいえ意思を持った相手を攻撃するということはそれなりの覚悟が伴う。殺されたくはないけど、奪いたい……そんな我が儘は通用しない。

 

 いやはや、なんともおかしな話もあったものね。


 弱肉強食が嫌いでしょうがない私ができるそれへの反抗の術は、弱肉強食の法に則って勝利しなければならない、ときたのだから。


 決行は今週末にしよう。時は金なりだ。


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