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ひねくれ少女は自分の生きる意味を真剣に考えたい  作者: 日向日向
第二章「奏音の過去と愛の物語」
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「彼女たちの居場所」

今回は少し短めです。



 その後、私と愛華はポリタンクを遠方の河川に投棄した上で、そこからは手を繋いで下山し、愛華の家にまで戻った。そして二人で汚れを洗い流し、今日も今日とて共に眠りについた。

 そして翌朝、私達は長らく欠席していた学園へ足を運ぶこととなった。

 私の精神がかなり安定しつつあるということももちろんのことだが、長らくの欠席をやめようと決意したことの主たる理由としては


「外敵はほぼいない」


 といったところだった。

 行きの電車で、私達は確認し合う。注意すべきこと、警戒すべき相手。


「斎藤浩二のグループはほぼほぼ行方不明。きっと学園でのパワーバランスも変化している」


 学生時代のそれらの立場の変遷は、目まぐるしいものだ。

 前日まで安全圏を維持していたとしても、容易に転覆が起こるものだ。それ程に誰もが虎視眈々と何かを画策して立ち振る舞っているのだから。


「思わぬところで、また何かをされるかもしれない」

「大丈夫」


 きっと彼女は私の不安を嗅ぎ取った。そして、その手をとって自分の胸まで抱きしめてきた。


「うん、二人だから」


 私は一人ではない。

 彼女がいればもう、恐れることはない。

 巨悪に打ち勝つことができる。

 それを昨晩、私達は身を以て証明することができた。


「だけど」


 それでも尚、要注意人物が一人いる。

 恐らく彼の存在を排除しきるまでは、私達は安堵できない。


「霧谷」


 愛華の言う通り、霧谷の動向だけは注視しなければならない。

 先の書物で、彼が白である可能性は皆無に等しくなった。故に私に向けた謝罪や説明、誠意は全て彼の演技であることが明白になった。それどころか、蒼薬ブルー・プリズムの根絶を目指す立ち位置で、悠々自適に蔓延を管理していたというマッチポンプぶり――通常の頭脳・精神をしている相手ではない。きっと彼に対する報復も一筋縄にはいかない。

 そして同時に、彼の手元から重要な書物が失われているという事実も大きい。外面に出さないとはいえ、彼もかなり焦燥を感じていることだろう。即座に奪取するといった派手な真似はしてくるような人間ではないだろうが、警戒を怠ると再び私は敗北してしまう。そして、愛華にさえもその毒牙に――。


「絶対に一人にならないように」

「うん、わかった」


 私の記憶が正しければ、別行動を余儀なくされる行事は存在していなかったはずだ。


「呼び出された際は、絶対に第三者の目があるところに」

「奏音も」

「勿論。何としても彼を止める、この手で死体を燃やすまでは――油断なんてできないよ」


 例えば職員室だ。

 霧谷が他の全教師を抱きこんでいないとも言い難いが、それ以外にも職員室には人の出入りがある。生徒や業者を始め、多岐にわたる故、人目に付きやすい。彼は狡猾な人間だ、そんな他者の眼が光る場所で行動には移さないだろう。


「奏音」

「どうしたの?」

「……もう一人、いる」

「もう一人?」

「ずっと言えなかった。どういおうか悩んでいた――奏音を傷つけるんじゃないかって、だけど今なら言える」


 すぅっと愛華は息を吸い込んだ。そうして言葉を発しようとした瞬間、


「おはよう」


 横から声がかかった。

 その声に聞き覚えがある。


「咲来、君?」

「久しぶりだね」


 愛華が――言葉を噤んでしまった。


「学校、大丈夫かい?」

「……少し、不安要素はあるけれど、逃げてはいられないから」

「そっか、無理をしてはいけないよ」


 彼は私と愛華の昨晩までの仕事を知らないでいて、且つ私が堕ちる前から同じように接してくれている相手だ。


「篠崎さん、安心してほしいことがあるんだ」

「安心?」

「ここ数日、斎藤浩二を始めとした彼らの一味が学校を休んでいるんだ」

「……そっか」


 私は内心で深く事実を噛みしめていたが、それが見えない咲来の眼には私はどう映っているのだろうか? 若干ではあるが――気になった。


「霧谷先生は?」


 彼と関係性の密接な咲来に問えば、現在の霧谷の様子を深く探れるかもしれない。


「先生は、少し前から学園を休んでいるよ」

「どういうこと?」


 だけど咲来から帰った答えは私の意に反するものだった。


「ここ最近はね、ずっと霧谷先生は篠崎さんの家に通っていたんだ。家庭訪問としてね」

「……家に?」


 私という存在が乖離してしまった、もう家族という体を維持できていないあの場所に霧谷は足繁く通ったというのか。妙な話である――彼の狙いは何だ? よもや、私の両親だった相手さえも蒼薬ブルー・プリズム或いは箱庭の対象者とは言うまい。あの書物から見るに、共通して第二期成長期を迎えた男女のみが対象だったのだから。


「君の家族が豹変してしまったことを霧谷先生は随分と気に病んでいてね。彼なりのやり方で君の居場所を取り戻そうと奔走していたんだ」


 ますますもってわからない、が、彼が何かを受けて暇を貰っているのなら――ある意味で学園は避難所には最適かもしれない。


「わかった、ありがとう――」


 これは、少し問題が発生したかもしれない。

 以前までの私の居場所に、一度足を運ぶべきかもしれない。

いつも応援ありがとうございます!

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