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ひねくれ少女は自分の生きる意味を真剣に考えたい  作者: 日向日向
第二章「奏音の過去と愛の物語」
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「心の解体」

割と即興で書いたから誤字脱字が多いです!!!

 感覚が緩やかに壊死していく。

 そのような凡そ常人が体験することのない体験が私の身を襲ったのは何時ごろか。

 もう既に二桁以上もの、私を壊した人間を壊しかえしたけれど――そこに良心の呵責が介在することはなく、むしろ喜悦さえも覚えたのは何時ごろだろうか。

 愛を覚えたのと、同時期だった。

 私は快楽殺人者ではない。

 私に仇なした存在を滅ぼしただけ――それだけなのだから。


 そう心に留めた段階で、全ては終わっていた。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

「さてと」


 部屋は実に閑散としていた。

 野郎が八人もこの場にいれば、自ずと騒がしくなっても良いものだが、私の動向を片時も目を離さずに見守るばかりで――不意打つことも、反抗することさえもすることはなかった。辺りは既に大勢の血液が混濁しており、絨毯は深い紅に変容しつつある。

 返り血が付着したバットの表面を軽く手で拭ってぐるりと部屋中に視線を飛ばす。無言の圧というやつだ――次に来るのは誰だ、と言わんばかりに。


「う、うああ」


 どこかの誰かが、虚勢にも等しい叫びをあげると、それに釣られたか――皆が皆、一歩私の前に進んだ。これは苦し紛れの現実逃避か、或いは決死の覚悟というやつなのか……実際のところは自分でさえも知る由はなかった。

 ただ現状は、覚悟か虚勢かは不明だが、自身よりも遥かに体格が上の男たちに囲まれていることに疑いようがない。四方の内の三つの方角が支配されている私にとって、如何に獲物を有していようとも――劣勢であることに変わりはない。

 だというのに、どうしてか。

 より一層口角を釣り上げるばかりで、一度たりとも恐怖から後ずさるなんていう真似をすることはなかった。





 生理学や解剖学などを始めとした、微小な世界の真理は、強大な銀河の真理と同列に並べられるほどに深く興味深い物というのが私の漠然とした認識だった。書物で見識を深めるだけで人は心が躍るというのに、実際に実物を対面する時の高まりは他に代えがたいものだった。

 全てを終えた先の未来、研究者になるというのも悪くはないかもしれない。


 其処は屍山血河の頂上。

 不安定な死の大地に漸く一息付けたと座り込んで僅かに残された後始末は如何様に済まそうかと思案に暮れる。部屋中に充満した刺激臭にそろそろ嗅覚が麻痺しだすが――少なくともいい気分ではない。なのでさっさと処理する。

 処理、とは未だ息を残している彼奴等の始末だ。

 靭帯を始めとした歩行に必要となる筋肉を切断され、這って逃げようにも上に、既に物言わぬ亡骸が圧し掛かるものだから本当の意味で達磨に等しくなっていた。

 だけど私は決めている――生存者は残さない。

 どうせ追跡される身になるのは見えている。

 だけどせめて少しでも露見が遅れれば、猶予ができる。猶予があれば幾らでも策が練れる。

 私を凌辱した事実を知る者全てを闇に屠ればその時点で、全ては闇の中だ。


「屠殺を開始しましょう」


 もう逃げる不安はないが、始末は徹底する。

 関係の有無問わず平等に済ませれば――公平な採決を与えられるだろう。

 幾つかに分けられた死傷者の山からまだ息をしている人たちを選んで、隣の部屋に並べる。

 ざっと……三人か。


「折角だから情報を聞き出そう」


 霧谷の手記以外にも有用な情報を知る人がいるかもしれない。望み薄だけど、良い暇潰しにはなるだろう。


「さてと、質問よ?」

 

 一人目の男。

 手足の筋肉の線の切断は五人とも共通だが、彼はそれ以上に腹部や顔面を始めとした殴打痕が目立つ。確か手足を切りつけても根強く攻撃してくるものだから――つい心が躍ってバットで乱打してしまったのだった。


「貴方たちはどうして蒼薬ブルー・プリズムを民間人に配布していたの?」

「…………」

 

 口を割りませんね。

 恐怖でもう声が出ないのか、上に途轍もない権力者がいるか、くらいだろうか?


「あれ、思ったより出血していませんね」


 自分としてはしっかりと刻んだ筈なのだが、練度が低いのか中途半端な外傷だったわけだ。これ、誰も逃げ出さないのはかなりの幸運だと思う。


「では私の後学のために――実験させてもらうわね」


 私はナイフの切っ先で彼奴の服を切り裂き、それと同じ要領で地膚にも刃を通していく。そうするとピッ、と血液が噴出する。最初は少し躊躇ったが、構わずに進めると皮膚が綺麗に剥がれる。

 男はガッ、だのギッ、だのと妙な音階の喘ぎ声を上げるだけで反応だけで面白みがない。もっと派手に暴れてもいいというのに。


「へぇ、腸って案外白いのね」

 

 繊細な絵画を扱うように、丁寧な手つきで取り出し始める。七メートル以上が連続していると座学で学習した時は俄かに信じ切れなかったけれどこう見ると成程、神秘に満ち満ちている。もっと解剖をしてみたくなったけれど、既に事切れてしまっているためにやめることにした。

 流石に死んだ相手を冒涜はしない。


「次」

「やめろぉぉぉ! くるな! くるな! くるな!」


 ん? 妙に声がいいこと。

 よくよく近づくと、顔に見覚えがあった。


「貴方……天音の」


 天音の彼氏だったと思しきバンドマンのボーカルだった。

 すっかりと存在を失念していたが、確かにこいつもどうにかしないと、後々の禍根になりそうだ。

 いいや、それは建前。


「貴方はずっと何をしていたの? 天音を放っておいて」

「あ、天音……? だ、誰のことを――あがああああ!」

 

 ナイフで彼の小指を刎ねる。


「わ、あ、ああ! お、思い出した! 俺の、か、彼女だよ、今も元気に――」


 はい、嘘。

 逆の小指を切断する。


「彼女が病床に伏していることも知らないとは――女遊びにそこまでご執心かしら」

「お、俺は悪くねぇ! あの女がやたらと重苦しいから――ぐああああ!」


 脛にナイフを突きさして、何度も内部で捩じる。

 嗚呼もう、矢張り天音は駄目な男を掴んでいた。でももう安心して、貴女の窮地を無視して他の馬鹿どもと呆けているような男――私が罰するから。


「貴方、声はいいわね」

「は、はぁ?」

「貴方、声()()はいいから――せめていい声で啼いてよね」


 まずは彼奴の下腹部に線を入れて、男性器を切除してやる。

 そうするとそれはもう叫ぶこと叫ぶこと。

 男としての尊厳を完全に失っただけでも抱腹絶倒ものだが、まだまだ。次にありとあらゆる場所に深々と切り傷を刻んでは――音色を楽しむ。

 嗚呼、成程。

 人間が死に瀕するとこれ程の歌を奏でるのだから面白い。

 だけど、最高の時間というのはあっという間で――アンコール後の楽曲が遂に終了し、幕が下りてしまう。


「ごめんね、天音、勝手なことをして」


 だけど安心してほしいな。

 もう天音を傷つける人は、いないのだから。





 あっと最後の一人を忘れていた。


「あ、こいつは」


 初めて私を凌辱した時にバケツの水を用意していた男ではないか。

 よし、彼奴への対策は既に決定している。


 矢張り、豪邸の風呂場はそれだけで巨大だ。二階以上はあるだろう高さの天井を見上げて、私は躍起になった。

 そして孤軍奮闘すること数十分。

 最高の設備は完成した。


「んっっっ!」

 

 生き残った最後の一人が苦悶の声を上げる。

 彼は天井から延びた紐を足に縛り、足元から宙吊りにしてやる。頭部があるのは丁度浴槽。

 丁度、彼の鼻孔が水面に接するか否かの水深だ。全力で手を伸ばせばぎりぎり届くだろう蛇口からは最大出力の水が今なお放出されている。


「んー! んー!」

「水遊びがお好きなようだから用意した即興の遊技場なのだけど、気に障ったかしら? ならやめましょう? 貴方が蛇口を止めればいいわ」


 蛇口は頑張れば吊られた本人自身の手で止めることはできる。

 が、今の彼の腕は傷だらけ。少しでも動かせばそれだけで激痛で失神してしまいそうになってしまうだろう。ここは男の見せどころだ――生きるか死ぬかになると人間は火事場の馬鹿力を発揮するものだから、彼の奮闘に検討しよう。

 秒数が進むたびに、続々と水深は増していく。水を張りだしてから数十秒、とうとう表面張力が限界を迎えて浴槽から水が溢れ出す。さぁ、ここからが正念場、男の見せどころ。


「十秒、二十秒、三十秒……」


 私は手持ちの時計で計測を開始する。


「六十秒……まだかしら? まさか直前まで踏ん張って、最後で魅せるパターン? 見かけによらず面白い人間なのね」


 だけど三分を経過しても動きだない辺りで私の飽きが訪れて、風呂場を後にしたのだった。


「嗚呼、何も聞き出せなかった」


 少し茶目っ気を発動させすぎたみたいだ。

 これは猛省ものだろう。



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