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ひねくれ少女は自分の生きる意味を真剣に考えたい  作者: 日向日向
第二章「奏音の過去と愛の物語」
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「少女の大殺戮」

相変わらず遅筆です。

誤字脱字はお許しください。

●奏音

 凄惨な現場を前にしても私の名を口ずさむことはなかった。


「やはり覚えていない、か」


 奏音は膨れ上がった失望を十二分に込めた言霊として吐露させた。


「消費して壊してしまった玩具のことなんてとうに忘れてしまったのかしら」

「なんだぁ!? お前は――がはっ……」


 奏音は綺麗に構えて、怒声を発した茶髪男の腹部に対し渾身のスイングを食らわせた。少女の華奢な体躯から放たれるたった一度の打撃で、彼はその顔色を深い青に変えて、沈む。


「うげぇええええ!」


 その場に伏し、堪らずに唾液と吐瀉物など、雑多な分泌液を口腔からこれでもかという勢いで吐き出している。そんな彼の頭部を一瞬も躊躇せずに蹴り抜いた。それだけで茶髪男は地面を転がって、がちがちとその身を怯懦させながら、緩やかに吐瀉物の残留を咽喉元に蓄積させていく。その果てに、彼は息を詰まらせ始めたではないか。


「どうしたのかしら? 喉が苦しいのなら――治してあげるわ」


 そう言い放った奏音は、バットの先端を彼の喉上に押し当てて、それで容赦なく刺突した。


「んんんんんっ――!」


 当然、茶髪男は呼吸さえも困難にさせるどころか、舌を噛んだか遂には吐血し始める。地面を無様に転がった彼は、虫の息を漏らしながらも地を這って奏音から距離を置こうと懸命に命を結ぶが、呼吸器に重大な傷を負い、腹部から込み上げる痛痒並びに重度な脳震盪で真面に距離を置けるわけもなく――呆気なく追跡する奏音に足で静止させられてしまう。


「あらあら――お仲間が惨殺されかけようとしているのに、誰も助けないの?」


 目の前で男が既に瀕死で、次いだ茶髪男さえも風前の灯火であるというのに――残りの男衆と来たらどうか――ただ広い部屋の隅で現状を理解することさえも儘ならないでいる様子だ。


「情けないわね、無抵抗の私の前であれ程好き放題やったというのに――」


 挑発に感けて肝心な計画の手が止まるなんていう無様な真似は決して私はしようとしなかった。既に逃げる気力さえも失い、神にまで祈らんとしている茶髪男の頭部を的確に狙い、彼女はそのバットを振り下ろしている。頭蓋を叩くたびに、こきゅっ、こきゅっ、という声でもない別の音が彼から発せられ、新種のリズムゲームを満喫するかの如き軽快な音楽を奏音は脳裏に浮かべていた。

 軽快な曲調のままA、Bメロと進んでいき――ワンコーラスが終了する頃には奏音は高らかな嗤いをその口から遠慮なく漏らさせながら、完走を祝った。完走とは即ち彼奴の頭部が完全に破壊され、脳漿のその一部が流体のように頭蓋の傷の隙間から朱色を帯びながら垂れ流れていることに他ならない。彼だった物が止め処なく溢れる様を奏音は呵々大笑と声を上げるのを辞すことができないでいた。

 奏音は昂っていたのだ、これでもかという程に――絶頂を迎えていた。彼女の性的興奮は留まるところを知らず、猶の事彼女を強くさせた。


「てめっ――」


 漸く自分の為すべきことを理解した、比較的筋肉質の男は私に対し駆ける。部活でアメフトに励んでいる彼の突進は俊敏ながら鈍重――中学三年生でありながら、大人顔負けの剣呑を放っていた。その速度たるや日常的な運動を左程していない本来の自分であれば簡単に組み敷かれていただろう。だが、今日は違った。

 しかし、怒りに身を任せたその突進に正確さなどなく、横に一歩それるだけで簡単に回避し、躱し様にナイフで忘れずに刺突しておく。


「くっ――」


 的確に大男の脚部の腱を切断した。すると達磨のように地面に転がり、その巨躯には似合わない金切り声を上げて蹲る。


「すごい、身体が軽いわ!」そう言いながらもう片方の脚も、適切に潰す。


「加護のお陰ね――」


 そう言って、反撃を許さないよう手も入念に彼の筋肉を破壊した。

 その度に女のような悲鳴を上げるその様子を奏音は奇異な生物を視るような興味津々な様子で眺めていた。


「あらら……もうスポーツできないわね」


 これ以上の喜劇はないように、奏音の笑みは止まることを知らなかった。


「ゆ、赦してくれ……! 俺は、お前に、何も――」

「そうね」


 記憶を辿る。

 あの凌辱の現場に彼はいなかったということを思い出した。


「貴女はこいつらの中でも私に何かをしたわけではなかったわね」

「そ、そうだよ! だから、見逃し――そげっ!?」 


 彼の主張をしかと聞き届けた上で奏音は彼の顔面にバットを一度振り下ろした。体の調子が上がっている今の奏音であれば容易に小心者の彼を沈められたが、敢えて力を緩めたのには理由がある。


「確かに貴方はさっきまでは何もしていないわ――それこそ部屋の奥でがたがた震えていれば、これくらいで済んでいたかもね」


 私の前に立った時点で敵対したと意味することにしている。

 私にも自衛権を述べる権利はある故、彼女はそれを行使した、それだけだ。


「だけど貴方は私に攻撃をしかけた――違う?」


 すると、彼は掠れた声で口をパクパクとさせるだけで、その文章が奏音の耳に届くことはなかった。


「さようなら、名前も知らない誰かさん」


 そう言って彼女は、先と変わらずに大男も極刑に処した。





「さてと、どうするの? 一人ずつ対峙するという武士みたいな精神を持って挑むというのなら止やしないけれど、貴方達にそのような胆力があるのかしら?」


 発破をかけてあげよう。

 如実に体の変化を感じていた。全身から力が漲る、とはこのことだろうか。

 今ならばベストコンディションで後悔のない戦いを繰り広げられる自信がある。


 するとようやく、徒党を組んで挑むようになったか、動き出す。

 まず私を取り囲むように退路を断つ。


「来なさい」


 私は彼らを手招いた。

 そうすると、一人が気合いの叫びを帯びながら駆ける。それをきっかけに動きに重ならないように、一同は攻撃を仕掛けはじめた。

 私は大地を蹴って、あえてその突撃する男と距離を詰める。男は構えて私の顔面を捉えるように拳を正面に突き出す。当たるまいと二度のタップを以って小刻みに回避--当然だけどその好きに腕の筋肉の線を二分するように刃物を通す。金切り声を上げながら怯む男の足を払い、そのまま踵で腹部を踏み込んで地面に寝かして間髪入れずに胸部にナイフを突き立てる。一人目終了。

 背後から迫る小柄の男性の腹部に裏拳を食らわせる。膂力も倍増しているか、それだけで腹を抱えて非常に苦しそうな顔をする。そこまで大袈裟に痛がるものか、とも思うが遠慮する暇はない--怯んだ男の下がった頭部に大上段からバットを振り下ろす。ギャン、と音と共に動かなくなる。


 おや?


 あっさりとした同胞の最後に萎縮してしまったか。動きが全体的に鈍くなってしまっていた。

 が、だからと言って手を抜くことは絶対にない。

 比較的溜まっている集団の足元に滑り込む。その都度で全員のアキレス腱を断絶させておく、そのことにより逃亡することは愚か直立することも儘ならなくなっていく。そうなればあとは煮るなり焼くなり好きにできる。なので、放置することにした。

 そのうちの一人を掴み上げる。今までなら自分よりも数倍の大きさのある男性を片手で扱うなんて到底できなかったが、愛華のお守りのお陰でそれが可能になっていた。それを別の一団に投げつける。

 為す術もなく、受けきれずに倒れる一人に馬乗りし、先ずは耳を、次いで鼻に顎と、順々に切り裂いていく。そうするだけで、もう動かなくなるではないか。

 気絶に逃げるなんて--実に可愛いことではあるまいか。


「ハハッ、アハハハ!」


 余りにも脆すぎるその人体を目の当たりにすると笑うしかなかった。

 だってこれ程に滑稽なことはないだろう。

 可能な限りの悪逆を尽くした人間だろうが、ガクガクと震えているだけの人間だろうが、肉塊になってしまっては--全く同じなのだから。

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