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【完結】『一騎当千』を極めた孤高の天才貴族、仕様によってただ美しく光る置物になる  作者: 山原かいな


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第7章【背後に回る手、あるいはお留守番の盾】

 シンが去った学園長室で、ミネルバ王女は決意を固めていた。

「なんて不器用で、気高き人かしら。

 周囲に負担をかけまいと、全てを一人で背負って死線を潜るつもりなのね……。

 これは放っておけないわ」

 王女の責任感は、ここでも大いなる勘違いの方向へと爆走していた。

 「彼の命を削らせる訳にはいかない!

 私が彼を導かなければ………

 アランを呼びなさい」

 その日の夜。

 シンのパーティの前衛である重装騎士アランは、王女ミネルバから直々に呼び出され、極秘の部屋で王女と重鎮たちに囲まれていた。

 「アラン・グランド。

 貴方の父である騎士団長からも許可は得ています。

 次の卒業試験、彼はなんと初の第二層主(ケートス)戦に挑もうとしています。

 そこで、貴方はスメラギ君のパーティから一時的に戦線離脱(お留守番)しなさい」

 「な、なぜですか王女殿下!? 自分はスメラギさんの『静寂』の武理を特等席で――」

 「彼を死なせないためよ」

 ミネルバは真剣な目でアランを見つめた。

「シンは次の戦いでも、また皆を守るために自らノーガードでボスの猛攻を喰らい、瀕死になろうとするはず。

 貴方の盾でいくら守ろうとしても、彼はその前に出て、敵の攻撃を受け止めようとするでしょう。

 貴方では、その不器用な『背水の陣』を支えきれない。

 だから、次のボス戦では、アーモリア王家の至宝、「号令」の力を持つこの私、ミネルバが、アラン、貴方の代わりに前衛としてシンのパーティへと交代(割り込み)します。

 仲間の為に、背水の陣を行う覚悟を決めているスメラギ君を止める事は不可能でしょう。

 ですから、私のスキル「庇護の号令」でスメラギ君の体を、敵のどんな攻撃にも屈せずに、何度でも復活可能な強靭な物にするのです。」

 「お、王女殿下が直々に……!? スメラギ様のために、そこまで……っ!!」

 アランは感動のあまりその場に崩れ落ち、涙を流した。

 「わかりました! スメラギさんの命は、王女殿下に託します!」


 一方その頃、シンは自室のベッドにいた。

「フッフッフ、完璧な作戦だ!」

 シンは枕を抱きしめ、卒業生の勝利を何故か確信して高笑いしていたのだ。

 (次からの戦いでは、アランの大盾の後ろにがっちり隠れよう!

 そして、アランの後ろで『無防備に耐えている風のポーズ』を決めつつ、ボスの攻撃の衝撃に合わせて、額(ひたい)に小さな傷をつけてみよう。

 額の傷は、大したダメージがない割にド派手に血が流れて悲惨に見えるっていうからね。

 これで誰から見ても完璧な瀕死(背水状態)の完成さ!

 まあ、あの時の状況やから冷静に考えると、たぶん一騎当千の発動条件は、

   守るべき仲間がいる

   敵の攻撃を受ける

ぐらいだろうな。

 ボスの攻撃を本気でノーガードで受けたりなんかしたら、瀕死を通り越してただのミンチになっちゃうからな、どのくらいが瀕死かなんて分かる訳ないし、そんな荒唐無稽な発動条件ではないはずさ。

 まあ、瀕死からの反撃!のほうが、カッコいいから、そんな風に見せた方がいいけどね。)

 シンは徘徊魔獣との戦闘を振り返り、攻撃は受ける必要はあるだろうが、どの程度で瀕死になるのか誰にも分かるはずもないので、そんな不確定なものが、一騎当千の発動条件にはなり得ないと考えたのだ。

 そして、あの時の状況を鑑み、仲間を守って攻撃を受ける事こそがトリガーを引く重要なファクターに違いないという結論に達し、その上で、周りには瀕死のように見せた上で、大逆転を演出しようというセコイ考えに至ったのである。

 「アランという頼れる肉壁がいれば、見た目は頭部から大流血の瀕死重体の完成だな!

 そこから、前と同じように『一騎当千』で大逆転!

 フハハハ!完璧な作戦だ!」

 シンは仲間を守るように少しの攻撃を受ければ一騎当千が発動するだろうし、流血があれば、瀕死を偽装できて、なかなかカッコよく決まるはずと、真実からは程遠い自らの妄想を信じ込んだのだった。

「ハーーーッハッハッハ!

 額パッカーンの角度も完璧にシミュレーションできたぞ!」

 シンは鏡の前で、カミソリを片手に

 「どうすれば一番ド派手に流血できるか」

をノリノリで練習していた。

 「見てろよケートス、僕の完璧なビジネス背水陣でお前を刀の錆にしてくれるわ!」

 しかし、シンの意思を無視して、王女の裏工作により盾役(アラン)が消失し、代わりに

 「スメラギ様をノーガードで死なせないために、 ボスの攻撃を何度受けても復活できる身体にして しまう王女」

が前衛に居座ると決まっていたのである。

 シンは、自分がただの無防備なサンドバッグとして攻撃を顔面で受け止め続ける地獄が待っているとは、この時はまだ、知る由もなかった。


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