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【完結】『一騎当千』を極めた孤高の天才貴族、仕様によってただ美しく光る置物になる  作者: 山原かいな


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第三章【孤独のレベリング、あるいは神域の魔魚】

「フッ……。足りないのは、僕の肉体の強靭さ、あるいは理力の器だ。

 見ていろよ世界。

 この『一騎当千』を最高位まで鍛え上げた時、真のソロ無双が完成する!」

 決意の日からシンは学園を欠席した。

 東方貴族の御曹司であり、天才剣士であるシンには学園の教授陣も何も言えなかった。

 シンは何も気にする事なく、ひたすら第一階層を徘徊し、狂ったように家伝の二刀流による通常攻撃だけで魔物を蹂躏し尽くした。

 レベルが上がるごとに溜まる武理のポイントを、全て『一騎当千』の術理へと一直線に注ぎ込んでいく。

 そうしてソロでの1000匹を超える雑魚撲滅を重ねた結果、シンのレベルは38へと到達。

 脳内の一騎当千の術理は、ついに最高位である『マスター(Lv10)』へと叩き上げられたのである。

「極まった……。

 ついに僕の理力は、神のシステムの頂へと至った。

 フッ、刮目し給え。

 この階層の主とやらを、僕のマスター奥義の錆びにしてあげよう」

 自信を完全にみなぎらせたシンは、第一階層の最深部、広大な泥の沼が広がる玉座へと足を踏み入れ、これでもかとスタイリッシュに前髪をかき上げた。

 水面を割って姿を現したのは、この階層の絶対たる支配者――巨大なナマズの姿をした泥濘の魔魚『ナルメロン』。

 地響きのような咆哮とともに、泥水を撒き散らしてシンを威嚇する。

 通常の冒険者なら間違いなく5人の精鋭で挑むべき大物だ。

 シンは『雷切』ともう一振りの刀を抜き、究極の半身の構えから鋭い斬撃を放った。

 シュババッ! と家伝の二刀流『弐の太刀』による攻撃が、レベル38の圧倒的なステータス暴力によってボスの肉体を深く切り裂く。

 一発一発がボスの耐久力をゴリゴリと消し飛ばす核兵器。

 あまりの超火力に驚天動地し、瀕死となったナルメロンは、たまらず地面の泥の中へと深く潜り込んで姿を消した。

 (さあ、トドメだ!

 僕の神域の輝きで一瞬にしてお刺身に変えてあげよう。――スキル発動!

 『一騎当千』!!)

 ドォォォォォォン!!!

 マスターにまで成長した理力で放たれた『一騎当千』は、迷宮の天井を突き破り、白銀の光柱となって爆発的に立ち昇った。 

(さあ、出て来給え魔魚よ! 僕の神速の居合いでバラバラにして――)

……。

…………。

………………。

しかし、何も起こらなかった。

 シンの肉体は、神のシステムによってガチガチにロックされた完璧な王者の置物と化している。

 そして泥の中に潜ったナルメロンもまた、一向に泥から出てこない。

 白銀に輝く完璧な居合いポーズのままピキリとも動けないシンと、泥の中から一切出てこないボス。

 薄暗い迷宮の最深部で、哀愁漂う無言の膠着状態が数分間、静かに流れていった。

 冷や汗がシンの美しい頬を伝い、顎からポタリと泥に落ちる。

(な、なぜだぁぁぁーーーっ!!! 最高位まで極めたのに、泥から出てこない相手には何も起きないのか!?

 完全に無防備のまま、ただ泥沼の真ん中で綺麗にライトアップされてるだけじゃないか!!

 このままでは学園の門限が……!)

 しびれを切らしたシンは、涙目で『一騎当千』の維持を強制解除した。

 肉体の自由を取り戻し、二刀で泥を切り裂いた瞬間、まるでそれを待っていたかのように、ナルメロンがバシャァァンと泥から勢いよく飛び出してきた。

 「下等生物が、僕を待たせるなぁぁぁーーーっ!!」

 怒りと屈辱に震えるシンは、家伝の二刀流を狂ったように振り回した。

 放たれたのは、ただの通常攻撃。

 だがレベル38の暴力の前に、飛び出してきた魔魚は数秒と持たずにズタズタに消し去られ、完全なるお刺身(塵)となって消滅したのだった。

 足鰭が地面に転がり、戦場に本当の静寂が戻る。

 シンは、ゼェゼェと息を切らしながらも、気合で「余裕の笑み」へと顔を整形し、刀を美しく鞘へと収めた。

 「フッ……訳の分からない足鰭か…

 しかし、臆病すぎるお魚公だ。

 僕の『静寂(一騎当千)』のマスターオーラに圧倒され、恐怖のあまり泥の底へ潜って息を潜めるしかなかったようだね。

 だが、僕の神速の二刀の領域からは逃れられないのさ。

 神の技とは、あまりにも罪深いね。クク……」

  シンの中では、すでに完璧な解釈が完成していた。 

 ――僕の一騎当千のプレッシャーにより、ボスは恐怖のあまり泥に潜って息を潜めるしかなかった。

 そして僕がスキルを解除して泳がせてやったところを、我が通常二刀流でトドメを刺した、と。

 「フハハハ! やはり僕は最強だ!」

 こうして第1層ボスをソロで秒殺し、自分の強さを120%盲信したシン・スメラギは、『一騎当千』を「敵を完全に封殺する絶対の威圧スキル」と信じ込んだのであった。

 実際の1層ボスは、ある程度ダメージを与えると、沼水潜行というスキルを使い、沼潜って、6つのターゲットの内のどれか一つに身を隠します。

 6分の一を当てて、攻撃を当てると姿を表して、攻撃出来るようになるのです。

 隠れてるときは、隠れたまま沼の中を移動するか、大地震という全体攻撃しかしてきません。

 沼中移動だと、移動だけなので、ダメージ等はないのです。

 家宝の雷切がキモですね。

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