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7話

「わぁ、美味しそう…それユウキ君の手作り?」

 昼休み、ユウキはヒスイと共に人の少ない屋上にいた。学校案内をある程度済まし成り行きで昼食を一緒にとることになったのだ。

 ルリが今朝届けてくれたお弁当はのり弁だった。ものすごく出来のいい弁当!…と言う訳では無いが全て手作りで栄養や見た目にも気が配られており気持ちのこもった弁当である事は感じられた。

「いや…従兄妹が作ってくれたんだ」

 ヒスイはじっと恋しそうに卵焼きを見つめている。

「…卵焼き、食べる?」

「いいの?!それじゃあ…ひとつ貰っちゃおうかな、お返しに私の唐揚げひとつあげる!はい、あーん!」

 そう言って唐揚げを口元まで運んで来た。

 どうしようか迷ったが、既に口につく直前まで唐揚げが迫ってきていた為とりあえず口を開けて頬張る。

 一口噛んだ瞬間、ひんやりとした脂と旨みが口内に広がる。醤油ベースで仄かににんにくの入ったそれはまさに絶品だった。

「…こんな美味しいの初めてかも」

「えへへ、気に入ってくれたのなら嬉しいな」

 そんな話をしていると、後方で扉が開く音がした。

 透き通るような白髪の少女がこちらに向かって歩いてくる。

「葛さん。お話があります、少しお時間よろしいでしょうか」

 淡々と抑揚の無い声で話す少女を見て、ユウキは驚きを隠せなかった。何故ならその少女は──五年程顔を合わせていなかった実の妹、紫陽(シヨウ)だった。

「…シヨウ?どうしてここに…?」

「あぁ、兄さんでしたか。お久しぶりです。安心してください、私が用があるのは兄さんではなく葛さんなので」

「…ごめんね、ユウキ君。ちょっと話してくるから先にご飯食べてて?」

 そういうとヒスイは自分の持ち物を軽くまとめてから先程来た道を引き返すシヨウの後ろに急いでつく。

 ユウキはそのまま見送ろうかとも思ったが、ルリの言葉を思い出し声をかけた。

「シヨウ!その…もしよければ、今度ちゃんと話せないか?迷惑かもしれないけど、俺は──」

「話すことなどありませんよ。私の事など気にせず、自分の人生を謳歌したらどうです?」

 歩みを止めることなく階段へ向かっていき、返事をする余地もなくバタリと扉を閉められた。

「…はぁ、やっぱり無理か……」

 ユウキはあの調子なら教室に無理に押しかけたりしなくて良かったと思いながら残りの弁当を食べた。


───


 ぼちぼち生徒が帰り出す放課後。結局あの後シヨウともヒスイとも話す事なく時間が過ぎた。

 教室後方の席を見るとヒスイの机の周りには人だかりが出来ており、とても昼の事を聞ける雰囲気ではない。

 アヤトも既に委員会に行っていた。肩を落としつつユウキは教室を出ようと扉に手をかける。

 その瞬間、遠くの誰かの悲鳴と共に教室が大きく揺れた。

 ユウキはなんとか扉にしがみつき、必死に倒れまいと何とか持ちこたえる。

 他の生徒たちは机に下に隠れたり、慌てふためきながら友人同士で手を取りあったりしているようだった。

 幸い、数十秒で揺れは収まった。だが激しい揺れだったからか窓には亀裂が入っているようだった。

「……何、あれ…」

 教室の誰かが校庭を見ながら声を漏らした。

 その視線を追うようにユウキは校庭へと目を向ける。そこには、3m程ある五体の拾惑が蹲っている少女を囲むように立っていた。

 呆然と立ち尽くしていると、ポケットに入れていたスマホの着信音が鳴った。

 ルリからだったので急いで応答ボタンを押した。

「ルリ!学校の校庭にアイツらが──!」

『分かってます!今向かってますから、そのまま少し隠れていてください!』

 拾惑が動き出した。近くで帰宅しようとしていた生徒に襲いかかろうと狙いを定めている。教師が追い払おうと近くにあった石を投げつけるも傷一つつかない。

 ユウキは先日、スオウに言われた事を思い出した。

(拾惑は割と厄介で、普通の攻撃じゃなかなか歯が立たないの。私がこの前使ってた特別な剣だったり、君がルリちゃんから授かったその力…星片の剣だったりじゃないと、とどめを刺すことは難しいのよ)

「…俺は…お前が近くに居なくても、あの星片の剣とやらは使えるんだよな?」

 その言葉を聞いて、ルリは動揺したのか焦った声色になっていた。

『に、兄様は何を考えてるんですか?!この前も言いましたけど、あくまでも私の回復能力は私が兄様の近くに居る時にしか発動出来ないので、離れている状態で死んだらあの時のように生き返れないですから──』

 電波が悪いのか、通話が途切れた。

 意を決して、ユウキは窓を割る。亀裂が入っていたからか案外簡単に割ることが出来た。

 その音を聞いてか他の生徒達と避難するために教室を出ようとしていたヒスイが振り向く。

「ユウキ君?!…っ、私と一緒に逃げ──」

 最後まで言葉を聞くことなく、ユウキは窓から飛び出して行った。

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