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6話

「よ、ユウキ。先週は大丈夫だったか?」

 月曜の朝。駅から降り学校へと向かう最中アヤトに話しかけられた。周りには気だるげな生徒達がぽつぽつと登校している。

「先週?何か心配されるようなことあったっけ?」

「なんだ、知らないのか?こっから二駅先の商店街の近くで、ガソリン積んだタンク車が横転して爆発事故が起きたって…全国ニュースにもなってたぞ?」

 スオウの言葉を思い出した。拾惑の事は隠す為に教会のシスターの力で拾惑を見た者の記憶は有り得そうな現象の記憶にすり替えている…との事だったはすだ。

「…あー、うん…そういえばそんなニュースあったか…」

「最近多いよな〜、……まさか、何か秘匿された実験がされていて、その事故を隠す為のフェイクだったり…?」

 当たらずとも遠からずなその言葉に、ユウキは内心焦りを覚えた。

「そ、そんな訳あるはず──」

「兄様!忘れ物ですよ〜!!」

 虚をつかれたその少女の声に、肩が飛び跳ねる。

 後方から走るルリの姿が段々近づいてくる。

「?!…な、なんでお前がここに…」

「なぜも何も、お弁当を忘れていたので届けに来たんですよ!」

 どうだと言わんばかりに胸を張り自信満々に答える。来るのはありがたいが、普通見ることの無い物珍しい修道服のまま来ているためものすごく注目を集めている。

 ユウキはお弁当を受け取り、ルリの耳元で話す。

(お弁当はありがたいけど、学校の近くには来るなって昨日言っただろ?!後、人前で兄様とか呼ぶのやめてくれ、他の人にどう説明すりゃいいんだよ!)

(え?別に妹だって言えばいいだけじゃないですか?実際その通りですし…)

(いや、確かにあの時そう言ったけど…俺は──)

 ぽん、と肩に手を置かれた。

 振り向くと、アヤトが優しい目でユウキを見ていた。

「個人の趣味に口を出す気はないが…あんま人前でそういうのはやらない方がいいと思うぞ」

「そんな変な意味じゃねぇよ──?!」


───


「はぁ、いいな〜可愛い親戚の子が慕ってくれて、オマケにお弁当まで作ってくれるとか……羨ましい限りですわ…」

 午前8時の教室。朝のホームルームが始まる為ぞぐぞくと人が揃い始めている。ユウキはアヤトと教室の端の席で駄弁っていた。

「別に想像してる程良いもんじゃないぞ…あ、そういえばノートありがとな。おかげさまで何とかテスト乗り越えれそうだよ…多分」

 梅雨が終わり本格的に夏になってきたこの頃。他の生徒達も夏休み前の定期考査に備えている。

 早く夏休みが来ればいいのに──そんな話をしていると、担任の教師が教室へ入ってきた。それと同時に教室内は徐々に静かになる。

「おはようございます、早速ですがホームルームを始めましょう。今日から、この二年三組に転校生が来ることになりました。──さぁ、入ってどうぞ」

 担任の呼びかけに答えるように、前方のドアから少女が歩いてくる。

 不揃いの深緑色の髪を一つ結びにしたその少女の姿は、どこか見覚えがあった。

「今日からこの学校に転校してきた、(カズラ) 翡翠(ヒスイ)です。どうぞこれから、よろしくお願いしますね」

 そう言って微笑む少女の視線が少しこちらに向いた。その目を見て、ユウキは思い出した。先日、CDショップで出会った少女だ。

「それじゃあ、誰か転校初日の葛さんに学校案内を頼みたいんだけど…」

「あの…ユウキさんにお願いしたいんですけど……」

 ヒスイはそっと担任に耳打ちをしていた。

「あれ、知り合い?それじゃあ雷電さん、頼める?」

「まぁ…分かりました」

 後ろの方から恨めしそうな視線が刺さる。それもそうだろう…あの時はフードであまり見えなかったが、かなり可愛い。それも話し方から朗らかな性格であることが察することが出来る。男子も女子も、是非この機に仲良くしたいと思うものだろう。

 ヒスイは後方の席へ歩いて向かう途中、ユウキへそっと耳打ちした。

「また後で…よろしくね」

 そう言うと微笑み、自分の席へと歩いて行った。

 ルリに言われた通り、シヨウの所へ会いに行こうと思っていたのだが…今日は無理そうだ。

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