17話
銃弾がスオウの胸元を貫いた。短い呻き声を発し地面に倒れる。
「──っ?!」
ユウキはスオウの安否を確認する間もなく、壁に追い込まれ胸元に銃を突きつけられた。
「…何で……何で、お前が…っ!」
スオウを撃ち、今現在ユウキに銃を向けているのは──白髪の少女…そう、それは紛れもなくシヨウだった。
「まず、こちらの問いに答えて下さい。何故兄さんがここに居るのですか?ここは私達、公安直下対策部第二課の管轄だと、あなた方には事前に告知したはずなのですが」
シヨウは何故ユウキが教会に所属している事を知っているのか…色々と疑問点があったが、シヨウの張り詰めた様子に押され、ユウキは疑問符を飲み込んだ。
「…俺達はその対策部に依頼されてここに来たんだ」
その答えを聞いたシヨウの目が、少しだけ鋭くなった気がした。
「嘘は…言っていないようですね。ですが真相が分からない以上、警戒を解く訳には──」
シヨウが言いかけた瞬間、足元の地面が溶けたような感覚がした。
床を見ると、スオウの胸元から溢れた血液がユウキとシヨウの足の周りに溜まっている。
「──っ?!これは……!」
シヨウが急いで足を上げようとするも、血がへばりついて離そうとしない。
「…あははっ、良かった!ちゃんとボク、任務遂行出来た!」
スオウ…否、スオウだった者が口を開いた。
自らの血液を身体に這わせ、みるみるうちに姿を変えていく。肉を剥ぐような不快な音がした後、スオウの姿から短髪の少年の様な姿に変わっていた。
「……してやられました…もしや、兄さんもアイツと手を組んで…?」
「お、俺は知らない!それよりこの状況、一体どうすりゃ──」
「自ら罠に飛び込んでくるとは、やはり人間は面白いですねぇ?」
廊下の奥から、少女の声が聞こえた。
こつり、こつりと音を立てながら歩いているが、闇夜に溶けて姿は見えなかったが、近くに来てようやくその姿を捉えることが出来た。
漆黒の着物の少女…先日学校を襲撃した犯人、柳百だった。
「もう大丈夫ですよ、スズ。後はわたくし達にお任せ下さい」
「はーい!それじゃあまたね、ヤナギ姉さん!」
そう言って、スズと呼ばれた少年はルリ達のいる方向へと走って行った。
「ちょっと待て、そっちは──!」
「あらあら…あなた方の相手をするのは、わたくしですよ?」
ユウキが静止すべく口を開くと、モモがユウキの顎へ扇子を当ててきた。扇子の先に付いた刃が喉元に傷をつける。
モモがユウキへ視線を向けている間に、シヨウは懐からナイフを取りだしモモへ斬りかかる。
刃先がモモの腕を掠った。だが、それと同時にシヨウの腕にも同様の傷がついた。
モモが驚いて扇子を落とした隙に、シヨウは足元の血液をナイフで切り落としその場から飛び跳ねて距離をとる。ついでにユウキの分も切っており、ユウキも壁際の方へと距離をとった。
「──っ、…なるほど、あなたは09番でしたか」
「…その様な数字で呼ぶのはやめて下さります?とても不愉快です」
そう言うとモモは、扇子の刃をシヨウへと向けた。
「しかし…あなた方はもう、王手にかかったも同然。わたくしを不愉快にした罰は…また後ほどたっぷり味あわせて差し上げましょう」
扇子を持たない方の手で、指を鳴らした。それと同時に窓から人影が飛び出すのが見えた。
「…っ?!シヨウ、避け──」
ユウキは一直線に向かってくる人影に気づいていない様子のシヨウに手を伸ばした。
それに呼応するようにシヨウは窓の方への異変を感じ、どうにか退避しようとするが──惜しくも、2人揃って謎の網に捉えられてしまった。




