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18話

 ユウキが出口を探しに向かっている間、ルリとエイジュは二人で部屋の隅に隠れていた。

 心臓の鼓動の音がうるさく感じるほど静かだ。

「…ねぇ…ユウキ君、遅くない?…ちょっと辺りを見てきたらすぐに帰ってくるって言ってたのに…」

「そうですね…もう十分近く経っています、何かあったのでしょうか…もしや、幽霊に捉えられてしまったんじゃ──?!」

 そう言って肩を震わせていると、入口から足音が聞こえてきた。

 ルリが口を開こうとした瞬間、エイジュが焦るように口を抑えた。

 ユウキが離れてから、エイジュは辺り一帯に星片の薄い糸を張りユウキの気配を遠くで捉えている。そのため、確実にこの足音はユウキのものでは無い。

 現在地周辺に集中しどのような姿形か確認しようとするも…張り巡らされた糸はまるで何も無いかのように、なんの反応も示さなかった。

 確実に足音が迫ってきている。

 エイジュは短剣を片手に身を潜める。

 心臓が足音を消してしまいそうなほど波打っている。震えを抑えるように空いた片手で手首を抑えた。

「…ここに生体反応があったのですが…どなたかいらっしゃいまして?」

 凛とした女性の声が聞こえた。影から覗くと、そこには長身の美しい女性が立っていた。透き通るような白髪に着物を感じさせつつもカジュアルな戦闘服のようなものを纏っている。そして、何よりその美しい顔立ちはどこか既視感があった。

「怯えなくても大丈夫ですよ。私は保護をしに来ただけですから」

 そう言って、懐から取り出した銃を棚の後ろに隠れているエイジュに向けた。

 最初から分かっていたかのような自然な動作に、背筋を撫でられたような感覚がした。

 エイジュは両手を上げ、姿を見せる事にした。ルリは奥に隠れている。

「…」

「自己紹介、頼んでもよろしいでしょうか?私、顔と名前を覚えるの苦手なんです」

 苦笑するようにくすりと笑うと髪飾りの鈴が揺れて音を鳴らした。

「…僕はエイジュ…です。教会所属の──」

「星黎術者、ですね?廊下に張られた糸…とても見事なものでしたよ、少し耐久性に問題がありそうでしたが。そして…そちらのお嬢さんは?」

 そう言ってチラリと視線をルリの方へと動かした。 バレていない方に賭けていたが…見透かされていたようだ。ルリはエイジュ同様両手を上げながら姿を表した。

「…ルリです。私も教会所属のシスター兼星黎術者です。ただ、エイジュさんと違ってまだ見習いですが」

 二人の姿を確認したからか、その女性は銃を下ろした。

「お二人ともご協力、感謝します。…あぁ、ちなみに私は白妙(シロタエ)と申します、お気軽にタエちゃんとでも呼んでください。これからきっと…長い付き合いになりますから」

 そう言うとシロタエは、おもむろに廊下の方へ銃を向け発砲した。

 威嚇のための空撃ちかと思ったが、空気に着弾すると同時に少年の姿が虚空から現れ、カヒュッと空気の漏れたような声を発し尻もちをついた。

「あはは、ひどいですね?出会っていきなり発砲とは…驚きましたよ」

 そう言うと少年は胸に手を当て、自らの体に埋まった弾薬を取り出す。

 少年が話しかけているのを気にも止めずに、シロタエは何発も発砲を続けた。

 血が飛び散り、辺りを赤く染めている。

「……あなたは…一体……」

 あまりにも突然の出来事に、エイジュとルリは固まっていた。

「お二人は私の後ろへ。保護対象二名確認。これより、護衛任務を実行します」

 シロタエは機械的な様子で、少年から目を離さずにそう告げた。

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