16話
ルリ達の元を離れて数分が経った。
辺りを見渡しながらユウキは廃病院の探索兼脱出ルートを模索している。
廃病院の内部はかなり時間が経っているのか、至る所に植物まで生えていた。急に人だけが忽然と姿を消したかのように医療器具や私物の様なもの、文字が掻き消えてしまっているカルテなどが至る所に見受けられた。
そのため窓があっても草むらの中でとても脱出する事が出来るような有様で無かったり、そもそも医療器具が散乱して部屋に入れなかったりと中々に難航している。
先程まではルリとエイジュと共にしていたため気にならなかったが、かなり雨漏れしているようだ。天井の至る所に穴が空いている。
自身の心音と足音しか聞こえない静寂の中だと水滴の音も不気味に聞こえる。
「…ルリ達連れて脱出出来るような窓無いな…嫌がるだろうけど、来た道引き返すしかないか」
廊下の突き当たりが見えたため、ユウキは引き返す事にした。
振り返った瞬間、窓の横を何かが通り過ぎた気がした。
焦りから手汗で懐中電灯を落とさぬよう両手でしっかり握り、外から見えないように身を屈めつつルリ達の元へと引き返す。
野生動物や心霊の類ならまだいい…今ユウキが一番恐れるべきは、彼岸だ。
ルリからはかなりの距離がある。一発食らってしまったら即アウト、それにルリ達の存在が知られてしまったら不味い。ルリもエイジュも隠密偵察向きで戦闘には不向きだ。
ユウキは焦りつつも確実に1歩ずつ歩みを進める。
半分程進んだだろうか、あともう少しでルリ達の居る部屋が見える…その時だった。
背後から、足音が聞こえた。ユウキは近くの物陰へ身を隠す。どうやらここは談話室の用で、咄嗟にソファの後ろに隠れたが見つかってしまうのは時間の問題だろう。
星片の剣を顕現させ、段々近づいてくる足音に備える。
この間せいぜい数十秒だろう。だが、ユウキとってそれは数十分にも感じられた。
そしてついに、角から人影が姿を表した。
先手必勝、ユウキは剣を持ち振るいかかった。
「──え?」
「きゃっ?!」
ユウキは、その顔を見て首を切る直前で手が止まった。
目の前に現れたユウキに驚き尻もちをついた、足音の主…それは──
「スオウ…さん?な、何でここに…」
「びっくりした…。何でも何も…あなたたちと同じく調査をしに来たに決まっているでしょう?」
そう言って、服についた埃を払いながらスオウは立ち上がる。
「でも、今日は他の外せない用事があるって言ってませんでしたっけ…?調べたい事があるとか何とか……」
ユウキはスオウを見て、いつもと少し違い他に考え事をしている様な様子で何処か頼りないなと感じた。
「そんな事言ってたかしら?まぁ…ともかくこれからは私も一緒に探索するわ…他のメンバーは?」
「はぁ…ルリとエイジュさんはあっちの奥の部屋で待機してます」
少し不思議に思いつつも、ユウキはルリ達の居る部屋を指す。
「他は?」
「…?今日は他に付いてきてないですよ」
「あら、そうだったかしら…まぁいいわ。行きましょう、ユウキ」
そう言ってスオウはユウキを置いて向かっていく。
ユウキはその後ろを急いで追おうとすると、不意に背後から気配を感じた。
「──っ?!」
何となく嫌な予感がし、バッと振り向きその場でしゃがむ。
しゃがんだのと同時、乾いた銃声の音が廃病院に鳴り響いた。




