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10話

「よし、皆さん揃いましたね。それでは定例会議を始めましょう」

 教会の最奥部の会議室で、7人の修道服を着た者達が集まっている。

 長机の端に座る女性、彼女こそが星片教会の現教主カレンデュラだ。微笑みながらもどこか威圧感とも取れる雰囲気を纏っている。

「まず先日発生した拾惑人為災害…もとい、彼岸の訪れについての報告を…スオウ、お願い出来ますか?」

「えぇ、分かりました──発生場所は私立松笠学園校庭、五体の3m級の拾惑と、柳百と名乗る反星片を宿したテロ組織、彼岸(ラジアータ)幹部(執行人)が現れました。新人であるユウキや公安直下対策部協力の元、教主様が拾惑を救済(討伐)、ですが惜しくも柳百は逃亡。…これらによる負傷者は32名、いずれも軽症で教主様により完治済みです」

「報告ありがとう、スオウ。この通り、最近彼岸の活動が活発化してきています。これからはより一層気を引き締めてくださいね」

 コホン、と一段落を示すように咳払いをしてから続ける。

「そして先日、この教会に新しく準星黎術師が入る事になりました。ユウキさん、一言挨拶をお願いします」

 スオウの隣に座るユウキが立ち上がる。先程まで教主に向いていた視線が一気に集まり、少し緊張した面持ちで全体を見渡しながら話す。

「新しく星黎術師…となった、雷電 祐樹です。どうぞよろしくお願いします」

 挨拶を聞き、5人が拍手を鳴らす。1人の青年は興味が無さそうに俯いており、もう1人の少女は眠ったままだ。

 教主の隣に座る少し年老いた男性が青年に声をかけた。

「キサラギ君、初対面の相手がいると言うのにその様な態度は関心しませんね」

「……チッ…分かってますよ、じーさん」

 軽く舌打ちし、背もたれにもたれかかる。姿勢を変えてもユウキの方を向く気はないようだ。

 眠る少女の方はというと、隣に座る少年が小声で注意していた。

「…ヒナちゃん、起きて…ちゃんと挨拶ぐらいしようよ…」

 ヒナと呼ばれた少女は相変わらず眠っている。

「知っているメンバーもいるかもしれないけど、一応教会の面々を紹介しますね──まず、私は教主を務めるカレンデュラ、どうぞよろしくお願いしますね。そして私の隣に座る男性が牧師ファレノ。そして、ご存知でしょうが、ユウキさんの隣に座っている女性…スオウは修道女兼星黎統括官を務めているので、もし星片に関して困ったことがあったら彼女を頼ってくださいね。後は修道女のルリ、ヒナ。修道士のキサラギ、エイジュ。教会のメンバーはこの6人です。ぜひ皆さん、仲良くしてくださいね」

 そう言ってカレンデュラは話を切り上げ定例会議は解散となった。


「…ふぅ、疲れました…」

 スオウやキサラギと呼ばれていた少年が退出し、緊張が解かれた様子でルリはユウキだけに聞こえるぐらいの声を漏らした。

 ユウキはルリの事を何となくこういう場でも無遠慮に発言するタイプだと思っていたが、この会議では終始大人しかった。ようやく終わったと言わんばかりに椅子に溶けたようにもたれかかるルリに話しかけた。

「今日は珍しく大人しかったな」

「会議とかの格式張ったものは苦手なんです…私はお先に失礼しますね…」

 ずるずるとルリは退散して行った。

 会議中ルリはずっとチラチラとキサラギの方を怯えるように見ていた。恐らく会議が苦手というより彼が苦手なのだろう。

 一応残った人に挨拶しておくべきかと迷っていると、一人の男性が近づいてきた。

「初めまして、ユウキ君。先程教主様が紹介されたように…私はこの教会の牧師を務める、ファレノだ。もしなにか困った事があったら遠慮なく言ってもらって構わないよ」

「よろしくお願いします、ファレノさん」

 少し年老いた男性…ファレノという牧師は優しく微笑みながらユウキに握手をするよう手を差し伸べた。

 微笑む顔が教主カレンデュラと似ているな、とユウキは思いつつ差し伸べられた手を握る。

 六十代前半なのだろうか、ガッシリとしたその手の感触は衰えというよりもこれまでの人生の年季や重厚感を物語っているようだった。

「あ、あの…初めまして。僕はエイジュです。その…よろしくお願いしますね」

 気弱そうな少年もユウキの元へ挨拶に来た。色白で目の下にはクマがあり、少しユウキより背が高い。

「よろしくお願いします、エイジュ先輩」

 先輩、と呼ばれた事が嬉しかったのかエイジュは嬉しさを隠しきれないと言った様子だった。

「僕が、せ、先輩…!」

「エイジュ、行くよ」

 桃色の髪の幼げな少女…先程の会議中眠っていたヒナと呼ばれていた少女はそそくさと会議室の扉の方へ向かって行っていた。

「ちょ、ちょっと待ってよヒナちゃん!」

 エイジュはヒナの後ろを慌てて追いかけて行ってしまった。

 会議室にはカレンデュラとユウキの二人だけが残っていた。

「もう少しちゃんと歓迎したかったのだけれど…皆慌ただしくて、ごめんなさい。…そうだ、せっかく二人きりになれたことですし──これ、プレゼントです」

 そういってカレンデュラは懐から小さなアクセサリーを取り出した。そして、ユウキの元まで近づきアクセサリーをユウキの首にかける。

「これは…一体なんですか?」

 透明な四芒星が輝いている。キラキラと光が反射する度にプリズムが瞬く。

「小さな効力を失った星片です。透明な硝子になった星片は再び色を取り戻す事はありませんが──そんな彼女に変化をもたらした貴方が所持していれば、何か変わるかもしれません」

 そう言って微笑んだ。彼女…とは、一体誰のことなのだろう。

「これから、長い旅になるでしょうが…よろしくお願いしますね」

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