Ex.壁から生えた髑髏 『その陸』 西宮山に住む魔女
引き続き燈華の視点です。
今回のExエピソードに関しては燈華の視点だけで行こうと筆者は考えています。
楽しんで頂けたら幸いです。
※Exエピソードになります。
時系列をある程度無視しておりますので、本編と関わりなく楽しめるようになっております。
ルビふりと少々手を加えました(2024/06/03)
加筆と修正を行いました(2025/1/10)
宇深之輪駅の駅前にある老舗洋菓子店に立ち寄って、何種類かのケーキとクッキーの詰め合わせを購入し、私立宇深之輪高校があるのとは別の山を目指す。
宇深之輪町は四方を山に囲まれていて、それぞれの山には月衛山、西宮山、堺山、里見山と名付けられている。
一ヶ所だけ呼称が違うのは、あの山だけはこの町にとって特別な意味を持つ場所だから。
名づけの由来を知らない人たちにとっても、あの山が特別な場所だということは分かっているからだ。
海ヶ崎町との間にある堺山。
兎見村との間にあり、私立宇深之輪高校がある里見山。
そして、今から向かっているのは西宮山。
古くからある町の共同墓地や教会があり、山全体に不気味な雰囲気が漂い、古くからある建物も多い。
西宮地区の中で一際古く、その上存在感が最も強い洋館が今回の目的地。
この町に居ついた外国産の魔法使い、西園寺紡の住まう洋館だ。
現在、冬城燈華と大津秋姫が同居させてもらっている洋館。
「遅かったのね」
洋館の門の前で待ち構えていたのは、この館の主である紡だった。
「ただいま。
頼まれたからお茶菓子買ってきたんじゃない。
何が良いのか聞こうとしたら電話切っちゃうし……」
「おかえりなさい。それは悪かったわね」
「もしかしてお昼寝してた?」
そう聞くと紡は不満そうに口を歪ませた。
この顔は燈華の予想は見当はずれだったようだ。
「燈華は私がいつも寝ていると思っているようね。
あいにくと今日は寝ていた訳じゃないわ」
「じゃあ、どうして機嫌悪かったの?」
機嫌が悪かったのは当たっていたようで、紡はそこの部分だけはバツの悪そうな表情を浮かべていた。
燈華の人を見る目はある程度養われているようだ。
「それは……」
「それは?」
「たまたま嫌な人からの連絡があった直後だったからよ……」
「ああ……西園寺の家の方?」
「そう」
その一言だけ発して、口を閉じてしまった紡は、これ以上このことには触れてほしくないようだ。
頼みごとをしに来ている手前、これ以上藪蛇をつつくこともないだろう。
「じゃあ、お茶をしながらでいいから相談事に入ってもいい?」
「良いわよ。
お茶の用意はできているから、二人とも上がったら?」
「「ただいま」」
秋姫と一緒に紡の館に上がる。
リビングまで来ると、既にティーセットの準備がしてあった。
持ってきたケーキをそのまま紡に渡す。
「ケーキまで買ってきてくれたのね。ありがたくいただくわ。
クッキーはそこのお皿に出しておいてくれる?
ケーキはお皿に乗せて持っていくから」
ケーキの効果もあってか、機嫌が少しは良くなったみたいだ。
用意をすると言ってキッチンの方へ入って行く姿を見送る。
秋姫と一緒に用意されていた小皿に何枚かのクッキーを乗せ、三人分用意する。
用意している途中で、外国から送られてきている荷物が部屋の隅に積み重ねられている事に気づく。
「ヒメ、あの荷物だけど……」
「燈華ちゃん、気になっても中身を見ちゃだめだよ?」
「見ないよ……ただ、絶対紡のじゃなさそうだから、新しく人が増えるのかなって気になったの」
「分からないよ。
もしかしたら紡さんのかもしれないし―――」
「二人とも何をしているの?」
部屋の隅の荷物について秋姫と話していると、ケーキの用意を終えた紡が戻ってきていた。
急に声を掛けられ、秋姫と共に驚くが、気になったことは聞くのが一番と思い、聞いてみることにする。
「ねえ、あの荷物なんだけど……」
「ああ、気になったの?」
「絶対に紡のじゃないと思うし、誰かお手伝いの人でも入るのかなって思ったら気になっちゃって」
「別に秘密にすることじゃないから言うけど、新しく住人が二人増えるのよ」
「二人も住人で増えるの?」
「そうよ。この前ロンドンへ帰った時に、去年までのイタズラの責任を取れって連盟から叱られてね。
無視しても別に良いんだけど、別の魔法使いとまた事を構えるのは遠慮しておきたいから、今回はおとなしく引き受ける事にしたの」
「魔法使い同士で争いがあったことの方が驚きだよ……」
若干引き気味に言うと、『別にいいでしょう』と紡はその話しを切り上げた。
紡のこれ以上は話さないという意思表示だ。
新しくコチラ側の人間がこの町に増えるというのは……まあ、良いことを聞いたと思えばいいや。
「それよりも、燈華は私に相談したいことがあったんでしょう?」
「そうだった。
今から話すことについて、紡の見解が聞きたくてさ」
「なら、お茶を淹れるから飲みながら話しを聞きましょうか」
しっかりとお茶の準備が整うまでにそう時間はかからなかったが、いつものお茶会が始まるのは少しだけ遅くなった。
紡に今日見たモノについて、燈華は話しを始めることにした。
燈華の視点、どうでしたか。
楽しんで頂けたら幸いです。
お読み頂き、ありがとうございます。
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