Ex.壁から生えた髑髏 『その肆』 生徒会長としての役割
今回も燈華の視点です。
楽しんで頂ければ幸です。
※Exエピソードになります。
時系列をある程度無視しておりますので、本編と関わりなく楽しめるようになっております。
加筆と修正を行いました(2025/1/10)
時間は過ぎて放課後。とは言うモノの、壁にかけられた時計が示す時刻はまだ正午を過ぎた辺り。
明日に迫った入学式に備えて、生徒会の役員は居残りで準備をしなくてはならない。
放課後の校舎にはまだ生徒も多く残っていて、その中体育館で拡声器を手にステージの上から冬城燈華は指揮をとる。
「右列の左から三番目と五番目、列からズレているから修正して」
「「ハイ!」」
男子の役員をメインに椅子の配置を指示する。
女子の役員には飾りつけや、当日の進行の確認を頼み、片手間に当日読み上げる祝辞を頭に叩き込む。
「カイチョ―。飾りつけと椅子の配置終わったよ」
「ご苦労様……うん、列のズレもないし、良いよ。
みんなを集めてきてちょうだい」
「リョーカイ」
話しかけてきた二年の役員の女生徒にオーケーを出し、散らばっている役員を集めてもらう。
そこへ丁度作業を終えた大津秋姫が入れ替わりで近づいてくる。
「ヒメ、お疲れ様。歓迎会用の映像編集任せちゃってゴメンね」
「良いよ。燈華ちゃんがこういうのが苦手なこと知っているから」
秋姫には新入生の歓迎会用の映像の編集をすべて任せてしまっているので、今回の準備には特別に不参加にとなっている。
他にも手伝える人がいれば良かったけど、他の役員だと秋姫の足手まといになっていた。
新入生の歓迎会のことは秋姫に全てを任せる事にして、入学式の準備は他の役員で行うことを、三月の内に決めていた。
「終わったから入学式の準備を手伝おうと思ったけど、こっちも終わったみたいだね」
「私は指示を出していただけだから……みんな頑張ってくれていたから、私もやるべきことをやらないとね」
秋姫との会話の最中も祝辞の文を頭に叩き込むことを止めない。
やるべきことは全うしなくてはならない。
燈華が燈華であるために。
「カイチョ―。みんな集まったよ」
視線を上げると、ステージの下には役員のみんなが集まっていた。
祝辞の文を最後まで頭に入れ終わるのが同時だったことは偶然にしてはできすぎだけど。
「みんな、入学式の準備ご苦労様。明日もこの調子でいきましょう。
三年生の皆さんだけは、明日の参加は自主参加になりますので、各自の予定を優先してください。
くれぐれも、受験勉強や就職活動に尽力していただく為であることを忘れないでください」
一部の三年生の役員からは乾いた笑いがこぼれていた。
大方、サボろうとしていたか、それとも心当たりのある友人でもいるのか。
役員を束ねる立場の燈華としては、後者の方であることを願う。
「それでは、各自明日も頑張ってください
私と冬城さんは明日の打ち合わせもあるので残りますが、皆さんは帰っていただいて大丈夫です。
もちろん、残って手伝ってくださっても良いですので」
「私たちが残ってもカイチョーと副チョーの手伝いなんてできないから、帰るねー」
「燈華、秋姫。私も今日は帰るね」
珍しく名前を呼ぶ役員がいたから、声がした方を見ると、一年の頃に同じクラスだった子が帰ると言っていた。
「えっ。みっちゃんも帰っちゃうの?」
いつも最後まで残って作業を手伝ってくれる燈華が信頼を置く数少ない役員の一人にして友人、大和田美都子が手伝いを申し出るのではなく、帰宅すると言っていることに驚いた。
「美都子さんは本日予定が?」
「今日は妹たちだけで留守番をしているから早く帰ってあげたいの」
「みっちゃんと妹って確か十歳離れているんだっけ?」
「一番下のチビとね。
チビの世話を他の妹たちに任せっぱなしにはできないよ」
「お姉ちゃんだね、みっちゃんは」
「そういう訳。だから今日はゴメン」
美都子が寮の掌を合わせて、顔を可愛らしく傾けている。
「良いよ。みっちゃんにはいつもお世話になっているから」
「大丈夫ですよ、美都子さん。後は燈華ちゃんと私で何とかしますから」
美都子は申し訳なさそうにしていたが、そう思わせてしまった燈華自身がまだまだだと痛感した。
美都子と話している間に他の役員は全員帰ってしまった。
本当に、いい性格をしている役員たちだ。
燈華の視点、どうでしたか。
楽しんでいただけたら幸いです。
ここ最近は一話辺りの文字数が少なくて、少し申し訳ないです。
お読み頂き、ありがとうございます。
「面白かった」「続きが気になる」等、思って頂けましたら、ブクマ・評価頂けると大変励みになります。
評価は下の方にあります、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』へと押して頂ければできますので、どうぞよろしくお願い致します。
今後ともよろしくお願いします。