9.厄介な人『その壱』 生徒会長冬城燈華の受難
今回は燈華の視点です。
楽しんで頂ければ幸いです。
加筆と修正を行いました(2025/1/4)
午後の穏やかな日差しの中、冬城燈華と大津秋姫の二人は学校へと続く坂道を歩いていた。
「本当に役にたたないんだからうちの役員どもは。
会長が居なくても何とかできてこその委員会であり生徒会でしょう」
「まあまあ、燈華ちゃん、落ち着いて。
流石に会長と副会長が二人とも居なければ機能しないわよ。
それに質の悪い教師に利用されて自主性を損なうことになったら、それこそ生徒会の意味が無くなってしまうわ」
「まあね。生徒の代表としての生徒会だし、期待されている分応えないと悪いしね」
文句は言うけれど、生徒会長としての任は全うしなくてはならないということは自覚している。
深く溜息をつくと、今朝のことを思い出す。
「あー、今朝の電話に出たのが笹山でなく“ゆきちゃん”だったら良かったのに」
「過ぎたことを言っても仕方ないよ」
「それは分かってる。分かってるんだけどさ、納得できるかは別」
「それは……そうだね」
燈華は自身の運の悪さを呪いつつ、隣を歩く秋姫に愚痴を聞いて貰いつつ正門を抜け、校舎へと向かう。
校舎に入って早々に事務員に捕まった。
どうやら職員室へ来るよう言伝を預かっていたらしい。
年老いた事務員の男性に御礼を言い、職員室へと向かう。
玄関から職員室までの距離はそう遠いものではなく、中間の廊下で最も目立つところへ校内報が張られていた。
燈華は校内報の前で少し立ち止まり、内容に目を通して行く。
「どうしたの? 燈華ちゃん。校内報なんて読み出して」
「ん? 実はまだ読んでなかったから丁度良いかって思ってね」
「まだ目を通してなかったの……って、最近は忙しかったから仕方ないわね」
「忙しかったから仕方ないで済まして良い事じゃないって分かっているんだけどね。今回は少しズルをさせてもらって、何か聞かれた時に目を通しておいたって答えられるようにするわ」
お昼過ぎ、最初の授業が終わろうとしている中、玄関と校舎を繋ぐ廊下の片隅で立ち止まり、掲示物の残りへと視線を移す。
五分程掲示板の前に居座ったが擦れ違う生徒は一人もいない。
いや、居てしまったら役職上面倒事を抱えることになるから居て欲しくはないのだけど。
学校内は静寂を保つ。時々、声の大きな先生の講義の内容が聞こえてくる意外は静かなものだ。
「ところで何の用だと思う? 遅れる旨は連絡したから大丈夫なはずだけど」
「大丈夫だよ、燈華ちゃん。呼び出したのが新山先生だったから遅れた理由の確認と今日の会議の確認くらいだと思うわ」
目的地の職員室はもう目の前だ。
掲示物も一通り目を通し終え、職員室とかかれた札を見つめる。
「待たせてゴメンね。一通り目を通したし、行こうか」
「そうだね、新山先生も戻ってくる頃だろうし」
職員室の扉をノックし、開けると、会いたくない教師がふんぞり返っていた。
地味な上、よれよれのシャツと背広。
女性を見る時はギラギラとする細い目に似合わない若者向けのプラスチックフレームの眼鏡。
ズボンの上にのっかってしまっている狸腹の四十代中盤の我が校一人気のない男性教諭。
どうやら入ってきた燈華と秋姫を視界に捉えたようだ。
「よう、冬城に大津。重役出勤とは大層な身分だな」
溜息をつき、扉を閉める。
力が入ってしまった為、大きな音を立てて閉まった扉に驚いた様子の嫌味な教師。
視線を合わせまいとしていた顔を燈華は上げた。
「どうも、笹山先生。こんな時間に居るなんて暇なんですか?」
「こんにちは、笹山先生。早く御自分の担当されるクラスに戻られてはどうですか?」
「お前達に言われなくても行くわい」
歴史の笹山。
この学校に通う女生徒で知らない者はいないであろう、ある意味で……いや、悪名での有名人。
原因は、向けてくる視線が異様にギラついており、過去に一度猥褻未遂の問題を起こしている。
そのせいか学校で一番女生徒と女教師に嫌われている。
偉そうな態度で卑猥な視線で見つめてくる。
そんな男性を一般の女性は受け入れるわけがない。もちろん、自身も女の子である燈華も慕っていない。
教師は生徒に対し真摯であるべき。
当然のルールがこの笹山教諭という男にはないのだ。
よく教師になれ、続けていられるものだと燈華は不思議で仕方がない。
自然とこの男性教師への口調は皮肉が混じり、愛想など欠片も入る余地はない。
しかし、燈華を良く知る人たちは言う。
『彼女は基本、他人に厳しく、優しくない。それが男性ならより顕著である』と。
不本意な噂のため、いつか訂正してやろうと思う。
そこまで厳しいことを言った記憶が燈華にはない。
「それで、いつまで油を売っている気ですか?
早く行かないと次の授業がはじまりますよ。これは次の会議で話題に上げる必要があるかもしれませんね」
「相変わらず口が減らないな、冬城。そろそろ出るところだったんだよ」
皮肉を言われ、立場のない笹山はいそいそと準備をしている。
たかだか女子高生と侮るから痛い目を見るってことをいい加減学習しても良い頃だと思うけど、あの様子では学習することは未来永劫ないだろう。
小脇に名簿と授業に使うものを抱え、狸腹を揺らし、ぶつぶつと言いながら笹山は職員室を出て行った。
「あいつ、まだ新山先生にちょっかいを出そうとしているのかな?」
「まだ懲りてない様子でしたし、次は徹底的に叩く必要があるかも知れませんわね」
物騒な話し声が職員室に響く。
話している秋姫の顔は笑っているが、目は笑っていない。きっと燈華も同じような表情をしているのだろう。
クラスを受け持っていない男性教師達は今日ばかりは笹山に同情しているようだし、女教師達は軽く頬を染め、熱い視線を送ってきている。
本当にどうかしている。
こんな人達のお守までが生徒会長の仕事じゃないことを今は切に祈ろう。
燈華の視点、どうでしたか。
しばらくは燈華の視点でいくと……思います。
燈華の日常は慌ただしく書けていると良いのですが……
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