値段と価値
百円のハンバーガーと一万円のハンバーガー。
どっちが良いのでしょうか?
放課後、クラス委員長少女、平野にサッカー部のエースの少年、下野が声をかける。
「平野、帰りにマックに行こうぜ!」
そこに金持ちの息子、高野が来た。
「馬鹿を言うな、平野さんは、僕と食事をするんだ」
敵意むき出しの顔をして下野が言う。
「平野は、今日は、ハンバーガーの日だってさっき言ってたんだよ」
それに対して余裕たっぷりな顔で前髪を掻き分けながら高野が答える。
「同じハンバーガーでも、僕だったら最高級の一万円のハンバーガーをご馳走するよ」
呆れた顔をする下野。
「お前馬鹿か、ハンバーガーに一万円も出すなんて、馬鹿のする事だぞ。マックの百円バーガーの百倍も美味しいわけでも無いだろ!」
高野は、ため息を吐いて蔑み目で言う。
「これだから、貧乏人は、嫌なんだ」
「なんだと! 一万円のハンバーガーなんて、アホ成金の壊れた口にしか合わないゲテモノだ!」
睨み合う二人を見て平野が言う。
「下野くん、言い過ぎだよ」
下野が、高野を睨みながら反論する。
「この馬鹿には、丁度良いんだよ!」
平野が静かに告げる。
「一万円のハンバーガーで商売をしている人も居るのよ、その人達の事を考えて言ってるの?」
いきなりのシリアスな展開に下野が戸惑う。
「いきなり、何だよ……」
平野が説明し始める。
「あのね、ハンバーガーだって材料や調理法しだいでは、一万円にもなるよ。そういう考えを無視して、貶すのは、駄目」
不服そうな顔をする下野。
「だからって、実際、百倍美味しい訳じゃないだろ?」
平野は、小さくため息を吐いてから言う。
「前に、凄く美味しいしゃぶしゃぶを食べたって言ってたわよね? その時は、普通の何倍もお金払ったって自慢してたけど、本当に何倍も美味しかった?」
「それは、でも何倍くらいの価値は、あると思うぞ」
下野が自信なさ気に言うと平野が断言する。
「はっきり言って、何倍も美味しいって事は、ありえない。でも、同じ金額出して、普通のしゃぶしゃぶを何度も食べた事より、記憶に残っている。金額がそのまま美味しさに比例する事は、ないけど、高くて美味しい物には、その金額だけの意味があるのよ」
理路整然とした言葉に下野が沈黙してしまうと高野が自分で説得したわけじゃないのに偉そうに言う。
「解ったかね貧乏人。それでは、百円のハンバーガーなんて下らない物でなく、僕と一万円のハンバーガーを食べよう」
平野は、大きくため息を吐いて言う。
「高野くん、その一万円ハンバーガーは、一つ食べると、どのくらい栄養があるの? 百円ハンバーガーの百個分の栄養があるって言える?」
「そんな訳ないだろう?」
困った顔をする高野に平野が言う。
「だったら、百円ハンバーガーの方が、食べ物として優秀という意味じゃないの?」
「そういう問題じゃないんだ。きみもさっき言っただろう、高くて美味しい物には、その金額分だけの意味があると」
高野の反論に平野が頷き答える。
「そうね、でも百円ハンバーガーにも安くて多い物にも意味があるわ。貴方の一万円ハンバーガーでは、百人の人と一緒に食べれてない」
答えに困る高野。
そんな二人を見ながら平野が言う。
「どっちが良いって訳じゃない。ケースバイケースって奴よ。因みにあたしは、今日は、どんなケースだと思う?」
下野が気合だけで答える。
「俺と一緒にいっぱい食べれる百円ハンバーガー」
高野は、あくまで気障に言う。
「僕と一緒に記憶に残る一万円ハンバーガー」
平野は、指でバッテンを作って言う。
「二人とも外れ、今日は、家でお母さんの手作りハンバーガーを食べる予定なのよ。買い物があるから、さようなら」
去っていく平野を呆けた顔で見送る下野と高野であった。
これは、ある漫画で高いワインは、値段ほどの価値は、無いなんてふざけた事を言っていたので思いついたネタです。
実際、値段なんてケースバイケースで、どんなに高くても買って得した気になる物もあるし、その逆もある。
様は、自分が納得できる買い物が出来るかどうかですね。




