ホラーです
ド短いホラー三篇の二本目。
「お前は、しつこいんだよ」
男がそう言って、その少女を突き飛ばす。
「待って、お腹には、貴方との子供が居るのよ」
まだ高校生としか思えないその少女の言葉にも、男は、舌打ちするだけだった。
「自分の危険日の管理くらい、出来なかったのかよ? 知ったこっちゃねえ、勝手に降ろしやがれ」
「そんな……」
愕然とする少女を置いて、男は、立ち去る。
数ヵ月後、男は、再び少女と出会う。
しかし、男の隣には、新しい女が居て、少女は、完全にやつれ、元の面影が無くなっていた。
「しつこい女だな! もう新しい女が居るんだ、大人しく諦めやがれ!」
すると少女は、何かを男に差し出す。
「貴方との、子供の骨よ」
それは、人のそれとは、思えない小さな骨。
成長途中で、堕胎した赤ん坊の骨だった。
「気持ち悪いもの、見せてるんじゃない!」
男は、それを払い落とす。
「もう二度と、顔を見せるなよ!」
少女は、答えず、赤子の骨を拾うのであった。
男は、情事の後、ベッドで女を横に苛々しながらタバコを吸っていた。
「本気で苛立つ女に、引っかかったぜ!」
その時、女が窓の外を指差す。
「なんだ?」
男がそこを見ると、あの少女が立っていた。
男は、苛立ち、部屋に置いてあった金属バットを持って、その少女の下に向かう。
「今度、姿を見せたら殺すぞ!」
男は、金属バットで少女を叩きのめした後、そう告げて、歩き去った。
それから数日後、男が、前とは、別の女とのデートをして、部屋に戻った時、部屋には、食事の用意がされていた。
男は、合鍵を渡した前の女の一人の仕業と思って、何の感慨も覚えず、その食事を食べ始める。
男が、ハンバーグを食べていた時、何か固い物に気付き、口から取り出すと、以前見たことがある様な骨が出てきた。
「俺への食事で、骨をとり忘れるなんて、最低の女だ!」
不機嫌そうに、骨を投げ捨てる。
その時、携帯電話が鳴る。
「なんだ?」
『あたしの作った食事を、食べてくれた?』
その声は、あの少女の物だった。
男は、舌打ちをして怒鳴る。
「まだ諦めてなかったのか! こんな事をしても、お前とは、終ったんだ!」
『子供の肉は、美味しかった?』
少女の淡々とした言葉に、男が眉を顰める。
「子供の肉って、何のだよ?」
『貴方とあたしとのよ』
少女の言葉に先程の骨が、以前に見せられた骨に、似ている事を気付く男。
『美味しかった?』
男は、トイレに駆け込み、全て吐き出した。
「だから、ストーカーだって言ってるんだ!」
男の主張に、警官が冷やかな目をして言う。
「しかし、合鍵を渡したのだよね?」
男は、苛立ちながら答える。
「鍵を返してもらうのを忘れてたんだよ。とにかく、相手の住所も、名前もわかってるんだ! 直ぐに掴まえろ!」
警官は、呆れきった顔をして言う。
「残念ですが、ストーカーと明確に解る物証が無いと、警察としても動けないのですよ」
男が机を叩き、怒鳴る。
「ふざけるな、相手は、おろした子供の肉を食わせる変質者だぞ! 直ぐに逮捕して、精神病院でも入院させておけ!」
警官は、どちらかというと、相手の少女を心配して、男から聞いた電話番号に、電話を入れる。
「すいません、御宅の娘さんについて、お伺いしたいのですが?」
そうして暫く話した後、警官が男を睨みつける。
「不謹慎な悪戯は、止めなさい!」
男が怒鳴り返す。
「悪戯だと、こっちは、被害者だぞ!」
それに対して警官が苛々しながら答える。
「君が言っている少女は、数日前に暴行を受けて死んだ。死因は、金属バットでの殴打だ。今、犯人の捜索中らしい」
男の顔が引き攣る。
「冗談だろ?」
警官が怒鳴る。
「人の生き死を悪戯にする、君と一緒にするな!」
警官の剣幕より、男は、信じられない事実に、戸惑って居た。
男が部屋に戻るとそこには、再び食事の用意がされていた。
男は、それをゴミ袋に入れて、ゴミ捨て場に捨て、部屋に戻ると携帯が鳴る。
『酷いわ、何で捨てたの? 今度の肉は、新鮮な、あたしの肉なのよ』
「死んだなんて嘘だろ?」
男が縋るように言うと、少女は、優しげな口調で言う。
『ええ、貴方に叩かれて、凄く痛い思いを数日したけど、突然に痛みが消えたの。そうしたら体も、心も軽くなったのよ。今も貴方の後ろに居るんだから』
男が後ろを見るがそこには、誰も居なかった。
「誰も居ないぞ!」
しかし少女は、嬉しそうに笑う。
『もう冗談が上手なんだから。ほらちゃんと鏡に映っているわ』
少女の言葉に従い男が鏡を見た時、そこには、頭から血を流した少女が映って居た。
夜の街に、男の絶叫が広がる。




