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第七話 「初依頼」

 宿の廊下。


 雨音が静かに響いていた。


 目の前には、昼間の冒険者の男。


 軽装鎧に大剣。


 いかにも歴戦って感じだ。


「遺跡探索の件だが、返事を聞かせてくれ」


 男は腕を組みながら言った。


 俺はちらっと部屋の奥を見る。


 レティシアは眠っている。


 かなり苦しそうだった。


「……明日じゃダメか?」


「本当は今日決めてほしい」


 男は真面目な顔になる。


「最近、人手不足でな。探索中に何人か消えてる」


 嫌な単語が聞こえた。


「消えてる?」


「ああ。だから腕の立つ奴を探してる」


 レティシアを見て誘ったわけか。


「ちなみに報酬は?」


「一人銀貨十五枚」


 高いのか安いのか分からん。


 だが男の顔を見る限り、危険込みの値段っぽい。


「……考えとく」


「明日の朝までに決めてくれ」


 そう言い残して男は去っていった。


---


 部屋へ戻る。


 レティシアはまだ眠っていた。


 苦しそうな呼吸。


 額には汗。


「マジでヤバそうだな……」


 俺は椅子へ座る。


 そして思い出す。


 財布。


 中身。


 かなり少ない。


「異世界って金かかるんだな……」


 回復薬でほとんど飛んだ。


 このままじゃ普通に詰む。


 だが。


 レティシアを今の状態で遺跡へ連れて行くのは無理だ。


「……俺だけで行くか?」


 そう呟いた瞬間。


 脳内表示。


---


【単独遺跡探索生存率:18%】


---


 低っ!!


 笑えないレベルで低い。


 だが。


---


【報酬獲得率:74%】


---


 金は手に入るらしい。


 複雑だな。


---


 翌朝。


 レティシアはまだ寝ていた。


 少し熱は下がっている。


 俺は机にメモを置いた。


---


『昼までには戻る』


---


 いや絶対戻れない気がするけど。


 でも書かないよりマシだ。


---


 宿の前。


 昨日の冒険者たちが待っていた。


「お、来たか」


 リーダー格の男が笑う。


「一人か?」


「ああ。連れは体調崩してる」


「なるほどな」


 男は特に気にした様子もなかった。


「俺はガルド。こっちは仲間のジンとバーツだ」


「友田尾零」


「変わった名前だな」


 異世界基準でもそうらしい。


---


 街を出て、一時間ほど。


 山道を進む。


 途中、ガルドが口を開いた。


「お前、冒険者じゃないだろ」


「分かる?」


「歩き方でな」


 そんなの分かるのか。


 プロすげぇ。


「なんで遺跡探索なんか受けた?」


「金欠」


「正直だな!」


 ガルドが笑う。


 悪い人ではなさそうだった。


---


 やがて。


 森の奥に、巨大な石造りの遺跡が見えてきた。


「おお……」


 崩れた柱。


 蔦の絡まった壁。


 完全にファンタジーダンジョンだ。


 だが同時に。


 胸ポケットが熱くなる。


「っ……」


 魔鍵。


 昨日より明らかに反応が強い。


 ガルドが気づく。


「どうした?」


「いや……なんでもない」


 嫌な予感しかしない。


---


 遺跡内部は暗かった。


 湿った空気。


 足音が響く。


「今回の目的は地下階層だ」


 ガルドが松明を持ちながら説明する。


「最近ここで人が消えてる。原因を調べる」


「普通に危険依頼じゃん」


「だから報酬が高い」


 納得。


 すると。


 脳内表示。


---


【落石発生率:64%】


---


 え?


「止まれ!!」


 俺は反射的に叫んでいた。


「は?」


 次の瞬間。


 ドゴォォン!!


 天井が崩れた。


「うおっ!?」


 巨大な岩が通路へ落下する。


 土煙。


 轟音。


 もしあと数歩進んでたら直撃だった。


「な、なんで分かった!?」


 ジンが叫ぶ。


「か、勘」


「勘で止まるタイミングじゃねぇ!!」


 俺もそう思う。


 心臓バクバクだ。


 するとガルドが真剣な顔で俺を見る。


「……お前、何者だ?」


 まずい。


 誤魔化さないと。


 その時。


 遺跡の奥から。


 カツン。


 何かが歩く音がした。


 暗闇の向こう。


 赤い光が、ゆっくり浮かび上がる。


 目だ。


 何かいる。

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