表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッチングアプリでマッチした相手は異世界の第三王女でした。〜召喚された最強クラフトマンは、崖っぷち小国を立て直して無双する〜  作者: 富益 啓


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/28

第7話 召喚先は王城の地下

最初に見えたのは、青灰色の瞳だった。


画面越しに見たものよりも、ずっと生々しく、切迫している。


少女は豪奢なドレスを着ているはずなのに、裾は裂け、袖口には煤がついていた。金に近い薄い髪は乱れ、それでも背筋だけは不自然なくらい真っすぐだ。


「……本当に、来てくださった」


掠れた声でそう言った少女が、リゼリアだった。


湊は半身を起こし、周囲を見回す。


石造りの広い地下室。壁一面に刻まれた複雑な紋。部屋の中央には、さっき自分が立っていたものと似た円陣が薄く光っている。天井からは青白い照明石が吊られているが、いくつかは割れていて、室内は不安定な明るさだった。


そして、リゼリアの横にはもう一人いた。


長身の女だ。

褐色寄りの肌、燃えるような赤茶の髪、鋭い金色の目。彼女は大剣を抜き、湊の喉元へぴたりと切っ先を突きつけている。


「動くな。姫様、下がって」


低い声だった。

反射で分かる。この人は、ためらわず斬れる側の人間だ。


「いや、待って待って。来いって言われて来た側なんだけど」


「それを証明しろ」


「証明しろって言われても」


喉元の剣先が一ミリもぶれない。

湊は両手を上げかけて、片手に工具箱を握ったままだと気づいた。


リゼリアがその工具箱を見るなり、表情を変えた。


「その留め金……」


湊もつられて見下ろす。真鍮の留め具には、蔵の扉やアプリにあったものと同じ紋が刻まれていた。


「源蔵殿の工房印です」


リゼリアは、確信したようにそう言った。


大剣の女――たぶん護衛だろう――はなおも警戒を解かなかったが、切っ先だけはわずかに下がる。


「姫様、見た目はただの男です」


「ただの男でしたら、あの接続術式は通りません」


冷静に返しつつも、リゼリアの肩は小さく震えていた。

緊張が解けかけているのだと分かる。


湊はやっと立ち上がった。

足はまだ少しふらつくが、怪我はなさそうだ。


「……で、ここどこですか」


「ルーメリア王城の地下封印室です」


「王城」


「はい」


「地下」


「はい」


「ああ、うん。思ったより異世界だな」


その場にそぐわない自分の感想に、赤茶の髪の女が怪訝そうに眉をひそめた。逆にリゼリアは、ほんの少しだけ笑いそうになって、すぐ真顔に戻る。


「申し遅れました。わたくしはリゼリア・ルーメリア。ルーメリア王国第三王女です」


「……相沢湊です。たぶん、呼ばれた人です」


「ミナト」

リゼリアは確かめるようにその名を繰り返した。

「こちらでは姓で人を呼ぶことがあまりありません。そう呼ばせてください」


「私はカナン。姫様付きの護衛」


名乗りと同時に、カナンは剣を収めた。

だが、信用したわけではないと目が言っている。


そのとき、地下室全体が大きく揺れた。


天井から砂が落ちる。

壁に走る光の線の一部が、ぶつりと切れた。


カナンが舌打ちする。


「上じゃない。封印室の外周結界を割られてる」


「早すぎます……」


リゼリアの顔色が変わる。


湊は揺れる壁へ視線を向けた。

その瞬間、また見えた。


石壁の奥を走る線。

割れた導線。

そこへ故意に挟み込まれた異物。


まるで、壊れた機械の内部図が頭の中へそのまま流れ込んでくるみたいに。


「……そこ、直せば閉じる」


湊が思わず呟くと、リゼリアとカナンが同時にこちらを見た。


次の瞬間、封印室の外から金属の裂ける音が響いた。


毎日21時更新予定。お気に入り登録ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ