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マッチングアプリでマッチした相手は異世界の第三王女でした。〜召喚された最強クラフトマンは、崖っぷち小国を立て直して無双する〜  作者: 富益 啓


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第69話 反乱未遂の鎮圧

反乱の火種は、兵より先に噂として届いた。


『辺境伯が王女派へ寝返り、食糧を独占している』

『再建の恩恵は兵だけで、村は見捨てられる』

『王都の正統は第二王子であり、従わぬ領地は切り捨てられる』


どれも半端にもっともらしい。

青鷹が流す噂は、いつも真実の隙間に差し込まれる。


実際、辺境伯が王女派に立ったのは事実だし、再建の手が最初に兵へ届いたのも事実だ。

丸ごとの嘘なら笑い飛ばせる。

半分本当の噂ほど、否定の言葉が届かない。


「南の三村が危ない」

アルヴェインが地図を叩いた。

「元兵士崩れと失業した荷役が多い」


「食糧の配布表を見せて」


湊は帳簿を受け取ると、すぐ違和感に気づいた。

配布量は足りている。

だが届く順番が悪い。

一番不満が溜まりやすい村から、意図的に一日遅れていた。


「煽る前提で遅らせたな」


「わざとか」


「わざとだ」


配布表を作った文官は、三日前に交代したばかりの男だった。

調べれば、前任者は急な病で寝込んでいる。

病そのものは本物らしい。

ただ、倒れる前夜に誰と飲んだかまでは、誰も知らなかった。


その日の夜、南の三村で鐘が鳴った。

反乱未遂。

実際には、飢えた村人たちへ青鷹の工作員が武器を配り、役所を襲わせようとしただけだ。


だが、今回はもう準備が違う。


湊は前日までに、保存食包みを別経路で先回りさせていた。

さらに連絡板で村ごとの受領時刻を共有し、嘘が入りにくい形へ変えていた。


「兵が来る前に、腹が埋まってる」

カナンが笑う。

「反乱ってのは、そこが一番効くんだな」


湊は頷く。


「暴動は腹から始まるから。逆に言えば、腹さえ埋まってれば、煽り文句は半分滑る」


「もう半分は?」


「敵と味方の線がはっきりすれば消える。だからそれは、現場で見せる」


南村へ着くと、広場は怒号と混乱でぐちゃぐちゃだった。

だが村人の中心にいる連中だけ、妙に装備が新しい。

剣も革鎧も、辺境では浮く程度に質がいい。


「あれが工作員だ」

湊が即座に言う。


カナンは返事もしなかった。

走り出し、一直線に首魁へ飛び込む。

改修大剣の一閃で、相手の剣ごと腕を弾き飛ばした。

踏み込みの戻りが明らかに速い。

反撃準備で組み直した脚部補助具が、以前なら半拍遅れていた切り返しをそのまま次の一手へ繋げていた。

続く二人目は足を払って沈め、三人目の逃走路には辺境兵の量産槍がもう並んでいる。


訓練表の通りの三人一組だった。

板を持つ二人が腰を落とし、槍が隙間から突き出る。

華はない。

だが誰も浮き足立っていない。

昨日まで農具を握っていた者まで、自分の持ち場を守っている。


「食糧を配れ!」

アルヴェインが怒鳴る。

「本当に腹を空かせた者はそちらへ来い! 武器を配った者だけを縛れ!」


この判断が効いた。

村人の大半は、怒りではなく不安で揺らいでいただけだ。

食い物が現れ、敵と味方の線が見えた瞬間、槍先を向ける相手を間違えなくなる。


一時間もかからず、騒ぎは収まった。


生け捕りにした工作員の一人は、最初こそ口を割らなかった。

だが、湊が彼の装備を机へ並べ、留め具と革の刻印を一つずつ示していくと顔色が変わる。


「その短剣、グランゼル側の軍需印だ」

湊は言った。

「この靴金具も。辺境の反乱煽りにしては、支給元が豪華すぎる」


男は唇を噛み、やがて吐き捨てるように言った。

「第二王子殿下は正しい。強い国に寄れば、こんな飢えた土地も救われる」


「救うんじゃない」

湊は低く返した。

「売るんだろ」


男は答えなかった。

だが、その沈黙だけで十分だった。


連行されていく男の背を見ながら、カナンが小さく言う。


「ああいう手合いは、本気で信じてるから厄介だぞ」


「分かってる。だから、こっちは事実で殴るしかない」


信仰に理屈は効かない。

でも、周りで見ている人間には効く。


さらに、現場からは青い羽根章の破片も見つかった。

カナンはそれを見て、目を細める。


「レイスが近い」


「次は逃がしたくないな」


「私もだ」


反乱未遂の鎮圧は、辺境伯領に二つのものを残した。

一つは、立て直した流れが人を救うという確信。

もう一つは、第二王子と国外勢力の繋がりが噂ではなくなったという事実。


敵は確実にここを潰しに来ている。

ならば逆に、ここが王都をひっくり返す起点になる。


湊はそうはっきり理解した。


その夜、南の三村から礼の使いが来た。

持ってきたのは金でも特産品でもなく、村の若者三人の名簿だった。


「講習とやらに入れてくれ。今日みたいな日に、守られるだけは嫌だ」


湊は名簿を受け取り、工房の壁の講習名簿の隣へ貼った。

敵の工作が、結果として味方を増やしていく。

焦っているのはどちらか、もう数えるまでもなかった。


毎日21時更新予定。お気に入り登録ぜひよろしくお願いします。

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