表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッチングアプリでマッチした相手は異世界の第三王女でした。〜召喚された最強クラフトマンは、崖っぷち小国を立て直して無双する〜  作者: 富益 啓


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/77

第33話 輸送車両を作り変えろ

偽通行証を炙り出したことで、王都の門は少しまともになった。

その代わり、今度は正規物流の遅れが目立ち始めた。


「取り締まりが進めば、真っ当な流れまで細くなる」


兵站局の倉庫前で、湊は並んだ荷車を見上げた。

どれも古く、車軸は痩せ、荷台は無駄に重い。

悪路を走る前提のくせに、段差を吸う構造がほとんど入っていない。


「止めるだけじゃ駄目か」

カナンが言う。


「駄目だね。潰すのと同時に、別の流れ太くしないと」


リゼリアは兵站局の責任者と共に立っていた。

責任者の中年武官は、露骨に半信半疑の顔だ。


「荷車にまで手を入れるのですか」


「むしろ、こういうのが一番効くよ」


湊は荷車の側板を叩いた。

乾いた鈍い音が返る。


「現状は重い、揺れる、壊れる。しかも修理に部品が合わない。これじゃ荷も兵士も疲れる」


「だが、新造する予算は」


「全部新しくしない。直せる骨は残す」


湊の頭の中では、すでに線が引かれていた。

変えるべきは三つだ。

車輪の径、車軸の受け、荷台の揺れ逃がし。


その日のうちに、兵站局の片隅が即席工房になった。


木工職人、鍛冶師、兵士。

立場の違う人間が寄ってきて、湊の指示で動き始める。


「荷台の梁、一本抜いてこっちへ」

「鉄輪は太くしなくていい。締め直し優先」

「縄、もう少し太いのある?」


カナンは最初こそ見物していたが、やがて何も言わず木材を運び始めた。


「護衛の仕事は」

と湊が訊くと、

「姫様が“手伝え”と言った」

とだけ返ってくる。


当のリゼリアは兵站責任者を説き伏せるのに忙しかった。


「いま必要なのは、前例の維持ではありません」

「ですが殿下、兵站装備は軍規に」

「軍規で物資が届くなら、ミナトに頼んでいません」


きっぱりした声に、責任者が黙る。

やっぱりこの王女、押すときは強い。


夕方までに、改修一号車ができた。


見た目は劇的に変わらない。

だが、車輪は少し大きくなり、車軸の受けには交換しやすい金具が入り、荷台の下には縄を使った揺れ逃がしが組まれている。


「地味だな」

カナンが言う。


「派手な荷車とか嫌でしょ」


「速くて壊れなければ何でもいい」


「同感」


試験走行は王都外れの悪路で行われた。

従来型と改修型を並べ、同じ荷を積む。


号令とともに出した瞬間、差はすぐ出た。

従来型は最初の窪みで荷台ごと激しく跳ね、積み荷が揺れる。

改修型は沈み込みを一度逃がし、二撃目の跳ね返りが小さい。


「おお……」

と兵士の一人が漏らした。


さらに坂道へ入る。

旧型は軸受けが軋み、片輪が浮きかけた。

新型は揺れはあるが、荷重が分散して進む。


ゴール地点に着いた頃には、積み荷の崩れ方が明らかに違っていた。

旧型は樽が二つ横倒しになり、縄も一本切れている。

改修型は固定のズレがわずかで済んだ。


兵站責任者が目を見開く。


「故障が、出ていない」


「車軸の負荷逃がしてるからね。あと、壊れても部品替えやすいように寄せた」


「積載量は?」


「今の構造なら、同じ兵であと三割は積める。無理すればもっといけるけど、まずは壊れない方優先」


沈黙のあと、責任者はゆっくり頭を下げた。


「……失礼しました、ミナト殿」


兵站局の空気が変わる。

疑いではなく、使えるものを見る目だ。


リゼリアが小さく笑った。


「兵站局が素直になるのは貴重な光景です」


「そっち、普段どれだけ大変なんだよ」


「かなりです」


その日のうちに、改修型荷車を先行配備することが決まった。

門の取り締まりで細くなった流れを、王家側の手で別ルートから太くする。


潰すだけじゃない。

回すための仕組みを作る。


湊は兵站表の端へ、新しい線を書き込んだ。


王都から東街道へ。

そして地方の穀倉へ。


その線の脇に、もう一つだけ書き添える。


最初に出る荷車の側板に、例の青い鷹の焼き印がないか、念入りに確かめること。

毎日21時更新予定。お気に入り登録ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ