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断罪された悪役令嬢ですが、“嘘を一つだけ混ぜたら”全部壊れました ~正しさは、簡単に裏返る~  作者: 空乃エリシア


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第十九話 嘘の価値

 ――どうやら、こちらだけではないようですわね。


 その気配は、隠されていなかった。


 わざと。


 聞かせるように。


 重い足音が、廊下を満たす。


 止まる。


 すぐ、そこ。


 ミレイユの呼吸が浅くなる。


 目が揺れている。


 選べていない。


 まだ。


「……遅かったですわね」


 わたくしは、扉の方へ視線を向けた。


 その瞬間。


 扉が開く。


 遠慮もなく。


 躊躇もなく。


「――話の途中か?」


 入ってきたのは、二人。


 一人は騎士。


 もう一人は――


「リュシアン様からの伝言だ」


 来た。


 予想通り。


 だが。


 早い。


「ミレイユ嬢」


 騎士が彼女を見る。


 逃がさない視線。


「直ちに来るように」


 間。


「単独で」


 空気が、完全に凍る。


 アシュレイの気配が、わずかに変わる。


 鋭く。


 静かに。


 ミレイユは、動かない。


 足が止まっている。


 理解している。


 これは。


 選ばされている。


 わたくしは、何も言わない。


 視線だけを向ける。


 逃げ場はない。


「……レティシア様」


 彼女が、わたくしを見る。


 助けを求めているわけではない。


 確認。


 選択の。


「どうしますの」


 わたくしは静かに言った。


 優しくはない。


 だが。


 突き放しもしない。


「あなたが決めることですわ」


 沈黙。


 長い。


 騎士は動かない。


 急かさない。


 だが。


 待っている。


 その圧が、重い。


「……わたくしは」


 ミレイユの声が震える。


 だが。


 止まらない。


「わたくしは……」


 目を閉じる。


 一瞬だけ。


 そして。


 開く。


 覚悟が、少しだけ乗る。


「――行きます」


 その一言。


 空気が動く。


 選んだ。


 だが。


 それは。


 こちらではない。


 少なくとも。


 完全には。


 いい。


 それでいい。


 わたくしは、わずかに笑った。


「そう」


 短く。


 それだけ。


 止めない。


 止める必要がない。


 ここで引き止めれば。


 彼女は壊れる。


 それでは意味がない。


「ですが」


 ミレイユが続ける。


 わずかに。


 こちらを見て。


「……戻ってきます」


 間。


 小さい。


 だが。


 確かな言葉。


 それで十分。


「ええ」


 わたくしは頷いた。


「お待ちしていますわ」


 それが。


 今の最適解。


 騎士が頷く。


「では」


 ミレイユは、歩き出す。


 一歩。


 また一歩。


 迷いは残っている。


 だが。


 止まらない。


 扉を出る。


 閉まる。


 音が、やけに大きく響いた。


 沈黙。


 数秒。


「……逃がしましたね」


 アシュレイが言う。


 責めてはいない。


 確認。


「ええ」


 わたくしは答える。


「必要でしたもの」


「危険ですよ」

「ええ」


 当然。


 だが。


「ここで縛れば、壊れます」


 それでは。


 使えない。


 価値がない。


「……なるほど」


 彼は小さく息を吐く。


「育てる気ですか」

「選ばせるだけですわ」


 違いは大きい。


 強制ではない。


 だが。


 逃げ場もない。


 それが一番、残る。


「ですが」


 アシュレイが言う。


「あちらは容赦しません」


「でしょうね」


 わたくしは頷く。


 むしろ。


 それを期待している。


「壊すか、取り込むか」


 どちらか。


 中途半端はない。


「なら」


 わたくしは少しだけ笑った。


「こちらも動きます」


「どうやって?」


「簡単ですわ」


 視線を扉へ向ける。


 ミレイユが消えた先。


「彼女が“戻る理由”を作る」


 沈黙。


 アシュレイの目が、わずかに細くなる。


「……具体的には?」

「嘘ですわ」


 その一言。


「先ほどの続きを」


 わたくしは言う。


「彼女に、選ばせるための嘘」


 今度は。


 逃がさない。


「……なるほど」


 彼は小さく笑った。


 理解した。


「完全に引き込む気ですね」

「ええ」


 否定しない。


「中途半端は、意味がありませんもの」


 そして。


 視線を上げる。


 王宮の奥。


 見えない場所。


 だが。


 確実に、そこにいる。


「――さあ」


 静かに、呟く。


「どちらが先に壊れるか」


 楽しみですわね。

ここでミレイユが完全にはこちらに来ませんでした。


だからこそ、ここからが本当の勝負です。

「正しさ」と「選択」がぶつかり始めます。


ここまで面白いと感じていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

次はミレイユ側の地獄です。

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